「監督、台風、こっちに来そうですよ」
台風シーズンの朝礼でこの一言が出た瞬間、僕の頭の中はその週の段取りのことでいっぱいになります。現場監督にとって、台風は一年でいちばん緊張するイベントのひとつなんです。
そしてこの時期、家づくりを検討中の方やお住まいの方からよく聞かれるのが、「台風のとき、窓って何をしておけばいいんですか?」という質問です。
わかります。ニュースで窓ガラスが割れた映像を見ると、「うちは大丈夫かな…」と不安になりますよね。実は台風対策の中でも「窓」は特に大事なポイントで、現場でも台風前は窓まわりの備えにいちばん気をつかっています。
この記事では、現場監督の僕が、台風前の建築現場で実際にやっている備えと、おうちでできる台風の窓対策をまとめてお届けします。ぜひ最後まで読んでいってくださいね!
台風のとき、窓はどうして危ないの?
窓ガラスは「風」より「飛んでくる物」で割れる
意外に思われるかもしれませんが、台風で窓ガラスが割れる原因として怖いのは、風の力(風圧)そのものよりも、風で飛ばされてきた物がぶつかることなんです。
気象庁の「風の強さと吹き方」という資料によると、平均風速15m/s(メートル毎秒)以上の「強い風」で看板やトタン板が外れ始め、屋根瓦がはがれるものが出てきます。そして20m/s以上の「非常に強い風」になると、屋根瓦などが飛散し、飛来物(ひらいぶつ。風で飛ばされてくる物)で人が負傷するおそれがある、とされています。
つまり台風の風は、窓を押すだけじゃなくて、いろんな物を飛ばして窓にぶつけてくるということ。窓やサッシのメーカーも、強い台風では飛来物で窓ガラスが割れる危険が高くなると注意を呼びかけています。
窓対策の本当の相手は「風」じゃなくて「飛んでくる物」。まずここが出発点です!
台風がいちばん多いのは8月・9月なんです
気象庁の統計(1991〜2020年の30年平均)によると、台風が日本に接近する数は8月が3.3個、9月が3.3個で、この2か月が一年のピーク。上陸数も8月0.9個・9月1.0個と、やっぱりこの時期に集中しています(2026年8月時点の平年値です)。
だから現場でも、8月に入ると「そろそろ来るぞ」と気を引き締めて、台風情報のチェックが毎朝の日課になります。
台風の窓対策は「来てから」ではなく「来る前」。まさに今が準備のしどきなんです!
窓が割れると、けがと「吹き込み」のダブルパンチ
もし台風の最中に窓が割れると、ガラスの破片でけがをする危険があるのはもちろん、割れた窓から雨と風が室内に吹き込んで、家具も床もびしょ濡れになってしまいます。
しかも、割れるのはたいてい風雨がいちばん強い時間帯。真っ暗な暴風の中で応急処置をするのは、はっきり言って無理ですし、絶対にやってはいけない危険な行動です。
だからこそ窓の台風対策は、「割らせない備え」と「万一割れても被害を小さくする備え」の二段構えで考えるのがおすすめです。
割れてから頑張るんじゃなくて、割れる前に終わらせる。現場も家も、これが基本です!
台風前の建築現場でやっている備え
合言葉は「飛ばさない」
台風が近づくと、現場ではまず「飛びそうな物をゼロにする」ことから始めます。
【台風前の現場でやっていること:一例】
- 木材などの材料はできるだけ屋内へ移動。動かせない物はロープなどでしっかり固定
- 梱包材やゴミは全部回収(軽い物ほどよく飛ぶんです…)
- 仮設トイレや看板の固定を確認
- 足場のメッシュシート(足場の外側を覆う網状のシート)をたたんで、風を受け流せるようにする
- 最後に現場をぐるっと一周、「飛ぶ物はないか」の目視チェック
気象庁の資料でも、平均風速25m/s以上では「養生の不十分な仮設足場が崩落する」とされています。シートを張ったままだと、足場が船の帆のように風を受けてしまう。だから台風前にたたむのは現場の鉄則なんです。
自分の現場から何かを飛ばして、ご近所の窓を割るようなことは絶対にあってはいけない。いつもそう思って見回りしています!
窓は「閉める・鍵をかける・養生する」
サッシ(窓の枠とガラスのセット)が取り付いた現場では、台風前にすべての窓を閉めて、鍵(クレセント錠。サッシに付いている締まり金具)まで必ずかけます。
気象庁も台風への備えとして「窓や雨戸を閉め、しっかりと鍵をかける」ことを呼びかけています。現場でも「窓、閉めた?」「鍵は?」の声かけ確認が台風前の合言葉です。
状況によっては、ガラス面を段ボールや養生ボードで覆って飛来物に備えることもありますし、取り付け前のサッシやガラスは風の当たらない屋内に保管します。
お引き渡し前の窓は、お施主様(おせしゅさま。家を建てる依頼主の方)の大切な財産。「閉める・鍵・養生」で守り抜きます!
「風が強くなってからは、やらない」が鉄則
もうひとつ、現場で徹底しているのが「台風対策は前日までに終わらせる」ことです。
気象庁も、屋外の点検や補強は事前に行い、風雨が強くなってからは絶対に行わないよう呼びかけています。平均風速15m/sを超えると、高所での作業はきわめて危険とされるレベル。プロの職人さんでも、荒れ始めてからの作業はやりません。
新米のころ、先輩にこう教わりました。
「台風対策はな、風が吹き始めた時点で、もう終わってないとダメなんだよ」
この言葉、おうちの台風対策にもそのまま当てはまると思います。
「直前にやろう」は「やらない」と同じ。早め早めがいちばんの対策です!
おうちでできる台風の窓対策
いちばん確実なのは、雨戸・シャッターを閉めること
おうちの窓対策で僕がいちばんおすすめしたいのは、シンプルですが雨戸やシャッターを閉めることです。
飛来物から物理的にガラスを守ってくれるので、効果としてはこれが一番。気象庁の備えの案内でも、まず「窓や雨戸を閉め、しっかりと鍵をかける」ことが挙げられています。
「うちのシャッター、しばらく閉めてないなあ…」という方は要注意。あとの点検の章でお話ししますが、いざ台風の日に動かないということが結構あるんです。
雨戸・シャッターのある窓は、迷わず閉める。窓の鍵まで閉める。まずはこれだけで大きく違います!
飛散防止フィルムは「割れたとき」のための備え
飛散防止フィルムは、窓ガラスの室内側に貼る透明のフィルムで、ガラスが割れたときに破片が飛び散りにくくするためのものです。
ここで大事なのは、フィルムは「ガラスを割れなくする物」ではない、ということ。あくまで、割れてしまったときのけがや二次被害を減らすための備えです。気象庁の台風への備えの案内でも、室内からの安全対策として飛散防止フィルムやカーテンなどの活用が挙げられています。
雨戸やシャッターのない窓には、時間のある晴れた日に貼っておくと、台風の夜の安心感が違いますよ。
フィルムの仕事は「割らせない」ではなく「飛び散らせない」。役割を知って備えるのが大事です!
養生テープの「できること」と「できないこと」
台風前になるとお店で売り切れる養生テープ(ようじょうテープ。仮止め用の、あとではがしやすいテープ)。現場では毎日のように使う、僕らにはおなじみの道具です。
ただ、正直にお伝えすると、窓に養生テープを貼っても、ガラスが割れにくくなるわけではありません。
窓・サッシメーカーが行った公開実験(2023年8月。屋根瓦の破片を想定した約2kgの木材を、秒速約12mでガラスにぶつける試験)でも、養生テープなどを貼っただけではガラスの飛散は避けにくいという結果でした。一方で、テープの本数を増やして段ボールを何枚も重ね貼りすると、ガラスの飛散が減ったとのことです。
なので、雨戸のない窓にどうしても応急対策をするなら、
- テープだけを貼って安心しない
- 室内側から、段ボールとテープを組み合わせて「面」で覆う
- ガムテープ(布・紙のもの)は糊が残りやすいので窓には使わない
という使い方をおすすめします。
そして現場からもうひとつ。テープを長い間貼りっぱなしにすると、日差しで糊が固まって、はがすのがすごく大変になります(僕は身をもって経験しました…詳しくは体験談で)。台風が過ぎたら早めにはがしてくださいね。
養生テープは「割れなくする魔法」じゃなくて「割れたときの保険」。過信せず、正しく使いましょう!
カーテンを閉めて、窓から離れて過ごす
台風の夜は、カーテンやブラインドを閉めて、できるだけ窓から離れて過ごすようにしてください。
先ほどのメーカーの実験では、カーテンを閉めるだけでは飛散を防ぐ効果は確認できず、段ボールなどの養生材と併用することで室内への飛散が減った、とされています。カーテン1枚で万全とは言えませんが、閉めないよりは閉める。そして何より、割れるかもしれない窓のそばに人がいないことがいちばんのけが予防です。
寝室の窓に雨戸がなければ、その夜だけでも窓から離れた場所で寝る。それだけでもリスクは変わります。
「窓を守る」と同時に「窓から離れる」。人が無事なのが何よりです!
台風が来る前の「窓まわり点検」のすすめ
シャッター・雨戸は「動くか」を晴れた日に確認
雨戸やシャッターは、久しぶりに閉めようとすると、動きが渋くなっていたり、途中で引っかかったりすることがあります。
台風の前日に「閉まらない!」と気づいても、業者さんはどこも大忙しで、すぐには来てもらえないことがほとんど。だからこそ、天気のいい日に一度、全部の雨戸・シャッターを閉めてみるのがおすすめです。レールの砂やゴミを掃除しておくと、動きもスムーズになりますよ。
点検のコツは「台風が来てから」じゃなく「来る前の晴れた日」。現場の段取りと同じです!
網戸とサッシのレールもチェック
意外と見落としがちなのが網戸です。がたついたままの網戸は、強風にあおられて外れてしまうことがあります。外れた網戸はそのまま「飛来物」になって、自分の家やお隣の窓を割りかねません。
それから、これは現場での経験からですが、サッシの下のレールにゴミや砂がたまっていると水はけが悪くなって、強い雨のときに雨水が室内側へ入りやすくなることがあります。お引き渡し前にレールを掃除するのは、見た目のためだけじゃないんです。
【台風前の窓まわりチェックリスト】
- 雨戸・シャッターがスムーズに動くか
- 網戸ががたついていないか
- サッシのレールにゴミや砂がたまっていないか
- 窓まわりのひび・すき間など気になる所がないか(あれば早めに専門業者へ相談)
窓は「ガラス」だけじゃなく「まわり」まで含めてワンセット。5分の点検が台風の夜の安心につながります!
ベランダと庭の「飛びそうな物」を片付ける
最後に、窓を守るうえで絶対に外せないのが、飛来物のもとを減らすことです。気象庁も、風で飛ばされそうな物は固定するか屋内へ移すよう呼びかけています。
【屋内へ入れる・固定する物の例】
- 植木鉢・プランター
- 物干し竿(意外とよく飛びます。竿を下ろして地面に置いておくだけでも違います)
- すだれ・バケツ・ほうきなどの軽い物
- 自転車(倒しておく、または固定を)
自分の家の窓を守ることと、自分の家の物でご近所の窓を割らないことは、台風対策のワンセット。現場の合言葉「飛ばさない」は、おうちでもそのまま使えるんです。
窓対策は「守り」と「飛ばさない」の両方で。ご近所みんなで無事に朝を迎えたいですね!
私の体験談
僕がまだ新米だったころの、恥ずかしい話をひとつ。
台風の前日、先輩と現場の片付けをしていた僕は、合板の端材(はざい。材料の切れ残り)を数枚、「これだけ重ければ飛ばないだろう」と外壁に立てかけたままにしてしまいました。
翌朝、台風一過の現場に行くと…端材は数メートル先まで飛ばされていました。幸い、建物にもお隣にも被害はありませんでしたが、血の気が引きました。もしあれが誰かのおうちの窓に当たっていたら、と考えると、今でもゾッとします。
そのとき先輩に言われた言葉が、これです。
「風をなめるなよ。人が持ち上げられる物は、風も持ち上げられるんだ」
それ以来、僕は台風前の見回りで「これくらいなら大丈夫」という判断をやめました。迷ったら固定する。迷ったらしまう。おかげでそれからは、飛ばし物ゼロを続けられています。
実はもうひとつ、自宅での失敗もあります。現場監督のくせに、台風前にあわてて自宅の窓に養生テープをベタベタ貼り、そのまま2週間放置。。。日差しで糊がガチガチに固まって、はがすのに休日が丸ごとつぶれました(笑)
現場では「前日までに、確実に」。家では「はがすまでが台風対策」。どちらも失敗から学びました!
Q&A
Q1. 雨戸もシャッターもない窓は、どうすればいいですか?
まずは窓をしっかり閉めて鍵をかけ、カーテンを閉めてください。時間に余裕があれば、飛散防止フィルムを貼っておくと安心です。台風直前の応急対策なら、室内側から段ボールとテープで「面」を覆う方法があります(テープだけでは効果が薄いので注意)。そして当日は、その窓のそばで過ごさないことです!
Q2. 養生テープを「米」の字に貼れば、ガラスは割れにくくなりますか?
いいえ、テープでガラス自体が割れにくくなるわけではありません。メーカーの実験でも、テープだけでは割れたガラスの飛散は避けにくいという結果でした。テープの目的は、あくまで「割れたときの飛散を少しでも減らすこと」。貼るなら段ボールと併用して、台風が過ぎたら早めにはがしてくださいね!
Q3. 窓の台風対策は、いつまでにやればいいですか?
風が強くなる前日までが目安です。気象庁も、屋外の備えは事前に済ませ、風雨が強くなってからは絶対に行わないよう呼びかけています。フィルム貼りやシャッターの点検のような「事前型」の対策は、台風情報が出る前の晴れた日にどうぞ。買い出しも、直前は売り切れが多いので早めが正解です!
Q4. 台風の間、家の中ではどう過ごせばいいですか?
雨戸とカーテンを閉めて、窓からなるべく離れた部屋で過ごしてください。寝るときも、雨戸のない大きな窓のそばは避けるのがおすすめです。外の様子が気になっても、暴風の中の見回りは絶対にNG。安全な場所で、気象庁の気象情報やお住まいの自治体の避難情報を確認しながら過ごしましょう。
Q5. 台風が過ぎたら、窓まわりで何を確認すればいいですか?
ガラスのひび、サッシまわりの雨漏りのあと、網戸やシャッターの不具合、そしてテープやフィルムのはがし忘れをチェックしてください。屋根や2階の外まわりなど高い場所の確認は、無理せず専門業者に頼んでくださいね。現場でも、台風のあとは必ず建物全体の点検から一日が始まります!
まとめ
台風の窓対策、まとめるとこの3つです。
- 守る: 雨戸・シャッターを閉めて鍵までかける。ない窓は飛散防止フィルムや「段ボール+テープ」+カーテンで備える
- 飛ばさない: ベランダや庭の飛びそうな物を片付けて、飛来物のもとを減らす
- 早めにやる: ぜんぶ、風が強くなる前日までに終わらせる
台風は、地震とちがって「来ることが前もってわかる災害」です。だからこそ、準備した分だけ確実に被害を減らせる。現場監督として毎年台風と付き合ってきて、これは本当に実感しています。
なお、この記事の気象データなどは2026年8月時点の情報です。台風が近づいたときは、気象庁の最新の気象情報と、お住まいの自治体の避難情報を必ず確認してください。
窓の外で風がうなる夜も、備えが済んでいれば少しだけ落ち着いて過ごせます。この記事が、あなたのおうちの台風対策を始めるきっかけになったらうれしいです。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!今年の台風シーズンも、現場もみなさんのおうちも、無事に乗り切りましょう!


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