北欧家具が調和する、焼杉とそとん壁に覆われた切妻屋根の家。

ゆったりとした実家の敷地内に立つ、和の趣あふれる住まい。
田畑と家々が入り混じる一宮市の住宅街に立つS邸。左右対称の切妻屋根のファサードが印象的な建物で、手前には下屋が架けられており、軒下を通れば雨の日でも建物右手にある玄関へと濡れずに行き来できる。

外観はそとん壁をベースにした明るい色合いで、正面1階部分とポーチに張られた黒い焼杉がアクセント。

2022年4月に完成したこちらの住まいに暮らしているのは、Sさん夫婦と2人の小学生の娘さんの4人家族。
ご主人の実家の敷地の南東角を譲り受けて新築した建物で、建物左手には実家の庭が、建物奥には実家の建物があり、一つの土地を2世帯で共有するように2つの建物が前後に並んでいる。

「以前は東京で暮らしていて、地元の愛知に戻ってくるタイミングで家を建てようと決めていたんです。こっちに戻ってきてから家が完成するまでの2年間はアパートに住んでいましたが、冬は寒いし、夏は暑いしで…。冬にお風呂に入っていると、バスタブのお湯に浸かっていない部分が冷たかったり、課題だらけでしたね」とご主人。
ご主人は家づくりを始めるにあたりYouTubeのいろいろなチャンネルを見て学び、高気密高断熱住宅を得意としている会社に依頼したいと考えるようになったという。

「やがて兵庫県のクオホームさんのホームページに辿り着き、クオホームさんと交流があるエンズホームさんという会社が近くにあることを知り訪問しました。その前にもいくつかの工務店さんや設計事務所さんを回っていたんですが、エンズホームさんの見学会を訪ねると、家の雰囲気が自分たちの好きなイメージと合っていましたし、家じゅうの温度が一定だったこともいいなあと思いました。
それから小縣さんの『いろいろな住宅会社さんの家を見て決めてください』という言葉が印象的でしたね。それを聞いて信頼できる方だと感じお願いすることにしました」とご主人。

無垢の床や塗り壁などの自然素材に包まれるリビング。
ガデリウス社製の重厚な木製ドアを開けると、少し光が抑えられた玄関がある。

そこから少し進むと開放的なLDKが広がっていた。

床はなぐり加工がされたカバザクラの無垢フローリング、天井は杉の羽目板、壁は中霧島の塗り壁と、質感豊かな自然素材がふんだんに使われていて、軽やかなスチール階段の上からは春の午後の日差しが降り注いでいた。

「家づくりについて調べていく中で『外壁の仕上げと室内の壁の仕上げを統一すると一体感が出ていい』という情報を見て、家の中も塗り壁にしたんです。日が当たると陰影が出てくるのもいいですね。調湿効果がある素材なので、夏も冬も気持ちいい湿度に保たれているように感じます」(ご主人)。

「塗り壁は凸凹しているのでホコリが付きやすいのかな?と心配していましたが、静電気が起こらないせいかむしろビニルクロスよりもホコリが付きにくいみたいで、きれいな状態が保たれています」(奥様)。
窓周りの目隠しはカーテンやブラインドではなく、全開にできる引き分け障子。さらに上部だけを開けられる月見障子にしている。

「外からの視線は遮りつつ、隣の神社の桜や庭の緑を眺められたらいいなあと思い、このような障子にしています。お昼ごはんを食べる時は全開にしたり、夜は逆に全部閉めたり。いろいろな使い方ができて便利ですね」(ご主人)。

ダイニングと横並びのオープンキッチン。
S邸は1階にLDKと水回りが、2階に個室と収納が配された間取りで、寝る時間以外は1階で広々と過ごせるように計画されている。

「はじめはダイニング側を向く対面型キッチンを希望していたんですが、最終的にスペースの都合で横向きになりました。暮らしてみるとダイニングとの行き来がしやすくて、このレイアウトで良かったと思っています」(奥様)。
ちなみに希望した高さのキッチンに食洗機が入らなかったため、壁側の造作カップボードに食洗機を入れてもらったという。特に不便さはなく、むしろ洗い終わった食器を片づけやすくて便利なのだそう。

時を経ても陳腐化しない北欧ヴィンテージ家具をセレクト。
北欧のヴィンテージ家具が散りばめられているのもS邸の特徴。
「エンズホームさんの完成見学会で円形のダイニングテーブルが置かれているのを見て、同じように円形のテーブルを入れたいと思い、小縣さんに教えて頂いたリカグストアさんというお店で北欧のヴィンテージのテーブルを選びました。家具選びの時には小縣さんに付き合ってもらったりもしましたね」(ご主人)。
同様にヴィンテージであるカイ・クリスチャンセンのmodel.32など、テーブルと同じチーク材を使った椅子を組み合わせている。

テーブルの上のペンダントライトは、シドニーのオペラハウスの設計者として知られるデンマークの建築家ヨーン・ウッツォンがデザインしたSUNDOWNER。こちらは無機質な素材でありながら、優美な曲線が食卓に優しい雰囲気をつくり出すアクセントになっている。

リビングに置かれた一人掛けのイージーチェアはデンマークのデザイナー、ボーエ・モーエンセンがデザインしたmodel.2256でこちらもヴィンテージ。奥様がお店で座って、その心地よさに惹かれてすぐに購入を決めたという。肘掛けにはテーブルがわりに杉のパネルを置くカスタマイズがなされていた。

年月と共に経年変化で味わいを増していく空間に、時代を超えて受け継がれてきた北欧デザインの家具や照明が調和している。
階間エアコン1台で35坪の家じゅうを快適な暖かさに。
この家のどんなところに満足しているかを伺うと、ご夫婦ともに「冬の暖かさ」を最初に挙げてくれた。

「この冬に寒波が来た時も、外がいつもより冷え込んでいるのが分からないくらい家の中は暖かかったです。なんとなく外がいつもより明るいなあと思って障子を開けたら雪景色で驚きました。以前住んでいたアパートとは暖かさ・快適さが全然違い、幸福度が上がった感じですね」(奥様)。
「私はこの家に住んでから、寝る時は冬でもタオルケット1枚になりました。それは私だけですが、妻も娘たちも冬だからといって布団を何枚も掛けるのではなく、薄い掛け布団1枚だけで過ごしています。それから服を何枚も重ね着しなくなり、冬でも家の中ではシャツ1枚で過ごすようになりましたね」(ご主人)。
冬は2階の寝室の床に仕込まれた階間(かいかん)エアコン1台で家じゅうを暖めているという。「室温はだいたい24℃くらいにしています。夜寝る時にエアコンを止めるので朝は少し温度が下がりますが、それでも19℃くらい。天気がいい日の日中は南側の窓から入る日差しで家の中が暖まるのでエアコンを止めることもありますね」(奥様)。

一方夏は、階間エアコン1台だけだと2階が暑くなってしまうため、子ども部屋に追加した壁掛けエアコンも使って計2台で冷房をしているのだそう。
豊かな植栽が道行く人との会話のきっかけに。
「それから、いろんな窓から緑が見えるのも気に入っていて、家に居る時はダイニングチェアに座って過ごす時間が長いですね」(ご主人)。

「私は水回りがすごく気に入っています。ランドリースペースを広く取って頂いたので洗濯物を室内でゆったり干せるのがいいですね。タオル類は乾太くんで乾かして、衣類は干しています。乾いた衣類はハンガーに掛けたままクローゼットに持っていくだけなので、洗濯物を干したり片づけたりするのがとても楽になりました」(奥様)。

「それから、環境的なものもありますが、家の中に居るとすごく静かで落ち着きますね。私は在宅で事務の仕事をしているので家にいる時間が長いですが、本当にストレスなく快適に過ごせています」(奥様)。
家の前に造り込まれた植栽もSさん夫婦が満足しているところだという。

「庭はEN’S(エンズ)さんという造園屋さんに造って頂いたもので、道を歩いている人に『いい庭だね』と声を掛けられることも多いです。季節ごとにいろいろな花が咲くように植えてくださったので長く花を楽しめます。夜仕事から帰ってくる時に外から見える家の明かりや木々の雰囲気も好きですね」(ご主人)。

「外構をどのようなデザインにするかはEN’Sさんにお任せで、すごく良くして頂きました。アプローチの石も素敵ですし、家がより良く見えるなあと感じています。それから道を歩く人に『どこの工務店で建てたんですか?』と聞かれたこともあります。『その壁はどうなっているんですか?』って、外壁の焼杉について聞かれることも多いですね」(奥様)。

「私は家の全面を焼杉にしてみたかったんですが、妻は『新築の家にしては渋すぎる』というので、折衷案でそとん壁と焼杉を組み合わせました。ちなみに焼杉は触ると炭が付いてしまうので注意が必要です。何度かうっかり触れてしまう失敗をしてきました」とご主人は笑う。
経年変化が進む家と共に続いていく、心地いい日常。
住み始めてから約4年が経ち、家の経年変化についてどのように感じているか伺った。
「床はいい感じになじんできたように思います。なぐり加工された部分が、よく歩く場所は滑らかになり、足触りが気持ちよくなってきました。階段の踏板もやわらかい部分が少し削れてきて浮造りっぽくなってきています」(ご主人)。

新築時は明るい色をまとっていた木のフェンスも4年の間に退色してグレーになり、一層風景に溶け込むようになった。

昔からそこに立っていたかのような佇まいのS邸だが、高い断熱性能・気密性能を備えており、寒さや暑さというストレスを感じさせることがない。断熱・気密というシンプルで実直な基本性能が家族の幸福感を高めることに貢献している。
そんなリラックスできる住まいの窓から見えるのは、庭の落葉樹や神社の桜の木。今年の春も桜の花が咲き、爽やかな新緑、夏の万緑を経て、秋には周囲の木々が紅葉する。そして、やがて葉が落ちて冬を迎え1年が終わる。
Sさん家族の穏やかな日常は、自然の循環と共にこれからも続いていく。

〈ライター/カメラマン〉
鈴木亮平
新潟県在住の編集者・ライター・カメラマン。1983年生まれ。取材・撮影で訪れた住宅は累計1,000軒以上。











