「監督さん、明日の上棟、雨の予報なんですけど…大丈夫でしょうか?」
現場監督をしていて、いちばん多くいただく心配のご相談が、これです。
上棟(じょうとう。柱や梁など、家の骨組みを一日で組み上げる工程)が近づくと、みなさん本当によく天気予報を見ています。分かります。「まだ屋根も壁もない状態で雨に降られたら、うちの木材どうなっちゃうんだろう」と思いますよね。実はこれ、現場でもいちばん神経を使うところなんです。
この記事では、現場監督の僕が「上棟の雨」について、濡れた木材は大丈夫なのか、雨のとき現場で何をしているのか、延期をどう決めているのかを、できるだけ正直にお話しします。ぜひ最後まで読んでいってくださいね!
上棟の雨で木材が濡れたら、どうなるの?
先に結論です。それだけで家がダメになることは、まずありません
もったいぶらずにお伝えします。上棟の日に雨が降って構造材が濡れても、それだけで家がダメになるということは、まずありません。
理由は大きく3つ。今の構造材(こうぞうざい。柱や梁など建物を支える木材)はあらかじめ乾燥させたものが主流だから。木は濡れても乾けば元に戻る素材だから。そして上棟のあと、雨をしのげる状態になるまでが早いから、です。
「濡れた=失敗」ではないんです。まずここを知っておいてほしいです!
今の構造材は、乾かしてから現場に来ます
JAS(ジャス。日本農林規格。国が定める品質の規格)では、構造用製材の乾燥材は含水率(がんすいりつ。木に含まれる水分の割合)で区分され、25%以下ならD25、20%以下ならD20、15%以下ならD15と表示することになっています(一般財団法人 日本木材総合情報センター「製材」より。確認日2026年8月9日)。
つまり現場に届く木材は、もともと「かなり乾いた状態」。しっかり乾かした木は、雨に少し当たったくらいで芯まで一気に水を吸うわけではない、というのが僕らが現場で教わってきた考え方です。濡れるのは、基本的に表面なんです。
木は水を吸う素材だけど、思っているほど早くは吸わないんです!
木は「乾けば戻る」素材なんです
木材には、まわりの空気の湿り気に合わせて水分を吸ったり吐いたりして、釣り合ったところに落ち着く性質があります。これを平衡含水率(へいこうがんすいりつ)といって、日本の大気中ではおよそ15%(全国平均)と言われています(三重県林業研究所「木材の含水率は乾量基準です!」より。確認日2026年8月9日)。
雨で濡れた木も、風が通って日が当たれば、時間とともにこの状態へ戻っていきます。だから上棟の翌日にカラッと晴れると、現場全員の顔つきが変わるくらいうれしいんです(笑)
木は「濡れたままでいる」素材じゃなくて、「乾こうとする」素材なんです!
ただし正直に言います。「濡れっぱなし」はダメです
ここはごまかさずにお伝えします。木材の腐りやカビの原因になる木材腐朽菌(もくざいふきゅうきん)は、木材の含水率が20%以上になると発生しやすく、20%を下回ると発生しにくいとされています(一般財団法人 住宅金融普及協会「住まいの腐朽と対策」より。確認日2026年8月9日)。
つまりリスクは「濡れたこと」そのものではなく、濡れたまま乾かないこと。床に水たまりが何日も残っている、乾ききっていないのに断熱材や石膏ボードで壁をふさぐ。これがいちばんやってはいけないパターンです。
「濡らさない」より「濡れたら乾かす」。勝負どころは、雨がやんだあとなんです!
雨のとき、現場で実際にやっていること
前日までに、シートを用意しておく
上棟の日程は、1週間ほど前から天気予報を見ながら詰めていきます。この時期の僕のスマホは、天気アプリの起動回数がダントツです(笑)
前日には、降っても降らなくてもブルーシートや養生シート(ようじょうシート。材料や建物を雨・汚れから守るシート)を用意します。「使わずに済めばラッキー」くらいの気持ちで、必ず準備します。
備えたのに使わずに済んだ日ほど、気分のいい日はありません!
雨が上がったら、まずは「水を出す」
雨のあとの現場でまっ先にやるのは、シンプルに水はきです。
【雨のあと、現場でやっていること:一例】
- 2階の床にたまった水を、デッキブラシやスクイジー(水切りワイパー)で掃き出す
- 隅に残った水はスポンジや布で吸い取る
- 水が抜けるように、床へ小さな穴をあけることも
- シートの一部を開けて、建物の中に風を通す
- 金物(かなもの。柱や梁をつなぐ金属の接合部品)や釘に異常がないか見て回る
組み上がった直後の2階の床は、合板がお盆のように水をためてしまうんです。だから雨の翌朝は、たいてい誰かがもう掃き掃除を始めています。
雨対策の主役は、実はシートよりデッキブラシだと思っています!
屋根の下葺き材まで、とにかく急ぐ
上棟のあと、僕らが何より急ぐのが屋根です。野地板(のじいた。屋根の下地になる板)を張ったら、その上に下葺き材(したぶきざい)という防水シートを張ります。よく「ルーフィング」と呼ばれるものです。
仕上がると見えなくなる部分ですが、基準はしっかり決まっていて、住宅瑕疵担保責任保険の設計施工基準では、JIS A 6005に適合するアスファルトルーフィング940または同等以上の防水性能を持つものとされ、重ね合わせの寸法(上下100mm以上、左右200mm以上)まで定められています(国土交通省サイト掲載。確認日2026年8月9日)。
上棟後の合言葉は「早く屋根をかける」。スピードがそのまま品質になります!
壁を閉じる前に、乾いているか確かめる
最後の砦がここです。断熱材を入れる前、石膏ボードを張る前に、木材が乾いているかを必ず確認します。見た目だけで判断せず、含水率計(木の水分を測る道具)を当てることもあります。
乾いていないのに壁を閉じたら、あとから直せません。急ぎたい気持ちがあっても、ここだけは急ぎません。
「乾いたと確認できてから閉じる」。濡れた木材と付き合う、たったひとつのルールです!
上棟は延期する?決行する? 僕らの判断基準
決め手は、雨より「風」です
意外かもしれませんが、上棟をやるかどうかで僕らがいちばん気にしているのは、雨の量よりも風なんです。
上棟は、レッカー(移動式クレーン)で木材をつり上げながら、高いところで大工さんが作業します。風が強いと、つり荷が振られて本当に危ない。
法律でもはっきり決まっていて、移動式クレーンの作業は強風のときは中止しなければならない(クレーン等安全規則第74条の3)、高さ2m以上の箇所での作業は強風・大雨などの悪天候で危険が予想されるときは行わせてはならない(労働安全衛生規則第522条)とされています。ここでいう「強風」は10分間の平均風速が毎秒10メートル以上の風、「大雨」は1回の降雨量が50ミリメートル以上の降雨を指します(群馬労働局「悪天候時の作業中止について」より。確認日2026年8月9日。2026年8月時点の情報です)。
上棟の可否は、気分でも根性でもなく、安全のルールに沿って決めています!
小雨で風がなければ、決行することもあります
正直にお話しすると、しとしと降る程度の雨で風がなければ、予定どおり上棟することもあります。
これは「濡れてもいいや」ということではまったくありません。雨の量、風、そのあとの天気の見通し、雨があがったあとに乾かしきれるか。そこまで含めて判断した結果です。逆に、雨が上がっていても風が強ければ中止にします。
「雨だから中止」「晴れだから決行」と、そう単純には決まらないんです!
「延期してほしい」と言っていいんです
上棟の日は、大工さんが何人も集まり、レッカーが手配され、材料もその日に合わせて運ばれてきます。1日ずらすというのは、その全部を組み直すということ。だからこそ判断はできるだけ早く、前日の夕方までにはご連絡するようにしています。
そのうえで、もし「どうしても雨の日は避けたい」というお気持ちがあるなら、遠慮なく監督に伝えてください。僕らは安全と工程を優先しますが、お施主様(おせしゅさま。家を建てる依頼主の方)のお気持ちも大事な判断材料です。門前払いすることはありません。
言いにくいことこそ、早めに相談。そのほうがお互い気持ちよく進みます!
基礎工事のときの雨は大丈夫?
コンクリートは、水と反応して固まります
「基礎工事のときに雨が降ったんですが大丈夫ですか?」というご質問も、上棟と同じくらいよくいただきます。
まず知っておいていただきたいのが、コンクリートはセメントと水が反応(水和反応)して固まる材料だということ。乾いて固まるのではないんですね。ですので、固まったあとの基礎が雨に濡れること自体は、心配のいらないことがほとんどです。
基礎にとって、雨はいつでも敵というわけではないんです!
気をつけているのは「打つ日」と「打った直後」
僕らが本気で天気とにらみ合うのは、生コン(なまコン。固まる前のコンクリート)を流し込む日です。打っている最中や直後に強い雨が当たると、表面に雨水が混ざって仕上がりに影響が出ることがあるので、日程を組み直すこともあります。掘った場所や鉄筋を組んだ段階で水がたまったときは、ポンプで排水し、状態を確かめてから次に進みます。
「基礎工事の雨は大丈夫?」の答えは、今どの段階かで変わります。気になったら聞いてください!
建築中のみなさんに知っておいてほしいこと
心配なときは、監督に聞いていいんです
「濡れた木、大丈夫ですか?」という質問は、まったく失礼でも面倒でもありません。むしろ僕らからすると「ちゃんと見てくださっているんだな」とうれしくなる質問です。
【聞き方の例】
- 「雨のあと、床の水は抜けましたか?」
- 「壁をふさぐ前に、乾き具合を確認してもらえますか?」
- 「今日は基礎のどの工程ですか?」
こう聞いていただけると、僕らも状況をきちんとお伝えできます。
質問はクレームじゃなくて、安心のためのコミュニケーションです!
雨の翌日の現場は、見に行く価値があります
現場を見に行けるなら、雨の翌日はおすすめのタイミングです。床に水たまりが残っていないか、材料にシートがかかっているか、濡れて散らかったゴミが片付いているか。このあたりに、その現場の段取りの丁寧さが正直に出ます。
ただし雨のあとの合板は、スケートリンクのように本当によくすべります。行かれるときは必ず事前に監督へご一報を。ヘルメットや足元の準備をしてお待ちしています。
雨の翌日の現場ほど、その会社の仕事ぶりが出ると思っています!
僕の体験談 通り雨に降られた上棟の日
まだ僕が監督になって間もないころの話です。
その日の朝は曇りで、予報も「一日くもり」。ところが午後、棟(むね)を上げる直前に空が急に暗くなり、ばーっと通り雨。「今日じゃなくてもいいだろう!」と空に向かって叫びたい気持ちでした。。。
正直、頭が真っ白になりました。お施主様のお顔が浮かんで、その場でうろうろするばかり。そんな僕に、棟梁(とうりょう。大工さんの親方)がこう言いました。
「濡らしたことより、乾かさんことのほうが罪やぞ」
そして、もうひとこと。
「木は濡れても乾く。焦って濡れたまま塞ぐのが、いちばんあかんのや」
その言葉で我に返り、日が落ちるまでシートをかけ、翌朝は日の出前に現場へ行ってデッキブラシで床の水を掃き出しました。昼過ぎには床が白っぽく乾いてきて、あの安心感は今でも覚えています。
もうひとつ学んだことがあります。夕方、お施主様(仮にAさんとします)から「雨、大丈夫でしたか?」とお電話をいただき、水はきの様子とこれからどう乾かしていくかを写真つきでご報告しました。後日お会いしたとき、「あの連絡があったから、そのあとは安心して待てました」と言っていただいて。濡れたことより、伝えないことのほうが不安にさせてしまうんだと、しみじみ思いました。
あの日から、雨が降った現場は必ずご報告しています。段取りと同じくらい、伝えることも監督の仕事です!
Q&A
Q1. 上棟の日に雨が降ったら、家の寿命は縮みますか?
そのことだけで寿命が縮む、ということはまずありません。今の構造材は乾燥材が主流ですし、木は乾けばまた元の状態に戻っていきます。大事なのは、そのあときちんと乾かしてから次の工程に進むこと。心配なときは「壁を閉じる前に乾き具合を確認してもらえますか?」と伝えてみてください!
Q2. 上棟が雨で延期になるかどうかは、誰が決めるんですか?
現場監督が、棟梁や大工さんと相談して決めることがほとんどです。判断材料は、雨の量、風の強さ、レッカーを安全に動かせるか、そのあと乾かしきれるか。前日の夕方までにご連絡できるよう動いています。上棟日そのものの流れは、過去記事上棟日とは 当日緊張しない方法?もあわせてどうぞ!
Q3. 雨の日、木材にはどんな養生をしているんですか?
基本はブルーシートや養生シートで覆うことです。ただ、組み上がったばかりの建物は形が複雑で、完全に包むのは難しいのが正直なところ。なので「覆う」だけでなく、「たまった水をすぐ抜く」「風を通して乾かす」までをセットで考えています。材料置き場のシートがけも、上棟前からの大事な仕事です!
Q4. 基礎工事の途中で雨が降っても大丈夫ですか?
段階によります。固まったあとの基礎が濡れることは、心配のいらないことがほとんど。気をつけているのは、生コンを流し込む日とその直後です。掘った場所に水がたまったら、排水してから進めます。「今日はどの工程ですか?」と聞いていただければ、監督がお答えできますよ!
Q5. 濡れた木材、施主が自分で見て分かることはありますか?
厳密な判断には含水率計などが必要ですが、見るだけで分かることもあります。「床に水たまりが残っていないか」「木が黒っぽく変色したまま何日も戻らないか」「シートがきちんとかかっているか」あたりです。気になったら写真を撮って監督に見せてください。写真があると、僕らもすぐ確認に動けます!
まとめ
「上棟の日が雨」。家づくりをしていると、けっこうな確率で出会う場面です。大事なのはこの3つだと思っています。
- 濡れても、それだけで家がダメになることはない。今の構造材は乾燥材が主流で、木は乾けば戻っていきます
- 危ないのは「濡れっぱなし」。水を抜いて、風を通して、乾いたと確認してから壁を閉じる。ここが本当の勝負どころです
- 決行か延期かは、雨より風。安全のルールが最優先です
雨の上棟は、たしかに晴れの日ほど気持ちのいいものではありません。でも、そのあとの手当てまで含めて、僕らはちゃんと仕事をしています。天気予報を見て眠れない夜があったら、どうか一人で抱えずに、現場監督に「大丈夫でしょうか」と聞いてください。ちゃんとお答えします。
なお、この記事で触れた法令や基準は2026年8月時点の情報です。最新の内容は、厚生労働省や国土交通省などの公式情報をご確認ください。
雨の日も晴れの日も、現場は今日も動いています。ここまで読んでいただき、ありがとうございました!あなたの上棟の日が、いい一日になりますように!






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