「この図面、どこから見ればいいんでしょうか…?」
これは、打ち合わせでお施主様(おせしゅさま。家づくりを依頼してくださる方のこと)からよくいただく質問です。
実は私も、設計の仕事に就いたばかりの頃、先輩にまったく同じ質問をしました(笑)。線と記号と数字がびっしり並んだ図面は、慣れていないと「暗号…?」と思ってしまいますよね。
でも、安心してください!建築図面の見方には、ちゃんと「コツ」があります。図面の種類ごとの役割を知って、見るポイントを絞れば、専門知識がなくても打ち合わせで図面を楽しくチェックできるようになるんです。
この記事では、設計担当の私から、家づくりで渡される建築図面の見方と、お施主様に打ち合わせでチェックしてほしいポイントをお届けします。ぜひ最後まで読んでいってくださいね!
建築図面の見方の第一歩 図面の種類を知ろう
家づくりが進むと、たくさんの種類の図面をお渡しすることになります。「多すぎ!」と思うかもしれませんが、それぞれ役割が違うだけなんです。まずは代表的なものからご紹介します。
ちなみに、配置図・各階平面図・立面図(2面以上)・断面図(2面以上)などは、建築確認申請(けんちくかくにんしんせい。工事の前に、計画が建築基準法などのルールに合っているか審査してもらう手続き)に添付する図書として、建築基準法施行規則という法令にも定められています(2026年8月21日時点)。つまり、どの家づくりでも必ず登場する「基本メンバー」なんです!
平面図の見方 家を真上から見た「間取りの図」
平面図(へいめんず)は、建物を窓が入るくらいの高さで水平にスパッと切って、真上から見下ろした図です。いわゆる「間取り図」に一番近い図面で、打ち合わせで登場する回数もダントツで多いです!
平面図の見方のポイントはこちら。
✅ 部屋の広さと並び(間取り)
✅ 壁と窓・ドアの位置
✅ ドアの開き方向(4分の1の円の弧で描かれます)
✅ 窓の種類(引き違い窓は二重の平行線、など記号で描かれます)
✅ 方位(北がどちらか)
窓やドアの記号は、実はJISの「建築製図通則」という規格で決められています。だから、どの会社の図面でも記号の読み方は基本的に共通なんです。
ひとつだけ注意してほしいのは、平面図は「上から見た図」なので、高さの情報がほとんど入っていないこと。「窓の高さ」や「天井の高さ」は、この後に出てくる立面図や展開図で確認します。
平面図は家づくりの主役級の図面。まずはこの1枚と仲良くなるのが近道です!
立面図の見方 家を外から眺めた「外観の図」
立面図(りつめんず)は、建物を東西南北それぞれの方向から、真横に眺めた図です。外観がどう見えるかを確認する図面ですね。
立面図の見方のポイントはこちら。
✅ 屋根の形と勾配(傾き)
✅ 窓の位置と高さ、大きさのバランス
✅ 外から見たときの窓の並び(外観の印象を左右します)
✅ 換気扇のフードや雨どいなど、外壁に付くものの位置
平面図で「窓がある」ことは分かっても、その窓が床まである大きな窓(掃き出し窓)なのか、腰の高さから上の窓(腰窓)なのかは、立面図を見ると一目瞭然です。
「図面ではおしゃれだと思っていたのに、外から見たら窓の高さがバラバラだった…」なんてことを防げるのも立面図のおかげ。外観のイメージ合わせは立面図が頼りになります!
配置図・断面図・矩計図もざっくり知っておこう
主役級の平面図・立面図のほかにも、大事な脇役たちがいます。ざっくりで大丈夫なので、名前と役割だけ知っておいてください。
✅ 配置図(はいちず)…敷地のどこに建物を置くかを表した図。隣の家との距離、駐車場の位置、玄関までのアプローチはここでチェック!
✅ 断面図(だんめんず)…建物を縦にスパッと切った図。天井の高さや、1階と2階の関係が分かります
✅ 矩計図(かなばかりず)…断面図をさらに細かくした詳細版。断熱材や壁の中の構成まで描かれた、いわば家の「カルテ」です
✅ 展開図(てんかいず)…部屋の真ん中に立って、東西南北の壁を1面ずつ見た図。棚やスイッチの高さの確認に大活躍します
矩計図あたりになると専門的なので、お施主様が隅々まで読み込む必要はありません。「この図面は何を表しているんですか?」と聞いていただければ、私たちがその場でご説明します!
全部を読めなくても大丈夫。「どの図面が何担当か」を知っているだけで、打ち合わせがグッと分かりやすくなります!
コンセントの位置がわかる「電気図」
意外と主役級に大事なのが、電気設備図(コンセント・スイッチ・照明の位置を記した図面)です。現場では「電気図」と呼んだりします。
✅ コンセントの位置と数
✅ スイッチの位置(部屋に入ってすぐ手が届くか)
✅ 照明の位置と種類
✅ テレビやインターネットの配線の位置
住み始めてからの「ここにコンセントが欲しかった…!」は、家づくりの後悔エピソードとして本当によく聞くお話です。逆に言えば、図面の段階でしっかりチェックすれば防ぎやすいポイントでもあります。
電気図は「暮らしの快適さ」に直結する図面。打ち合わせではぜひじっくり見てください!
打ち合わせでの図面チェック 暮らしに効く5つのポイント
図面の種類が分かったところで、ここからが本題!お施主様に打ち合わせで実際にチェックしてほしいポイントを、設計担当の目線で5つに絞ってご紹介します。
コツはただひとつ。「図面の中で、自分と家族が朝起きてから夜寝るまで動き回ってみる」ことです!
コンセント・スイッチの位置と数
まずは電気図とにらめっこして、毎日の暮らしを想像してみてください。
✅ スマホはどこで充電する?(寝室の枕元にコンセントはある?)
✅ 掃除機やお掃除ロボットの充電場所は?
✅ キッチンで使う家電(炊飯器・電子レンジ・ケトル…)の数だけ差込口はある?
✅ 季節家電(扇風機・加湿器・ホットカーペット)を置く場所の近くにある?
✅ スイッチは「部屋に入ってすぐ」「ベッドから手が届く」位置にある?
家具の配置が決まっていないとイメージしづらいので、「どこに何の家具を置くか」をざっくりでも決めてから打ち合わせに来ていただけると、チェックの精度がグンと上がります!
扉の開き方向(開き勝手)
扉がどちら側に、どちら向きに開くか。専門用語で「開き勝手(ひらきがって)」と言います。平面図では扉の開く軌跡が「4分の1の円」で描かれているので、ぜひ指でなぞってみてください。
✅ 開いた扉が、隣の扉や引き出しとぶつからないか
✅ 開いた扉の裏に、スイッチやコンセントが隠れないか
✅ 冷蔵庫の扉の開く向きと、キッチンの動線が合っているか
✅ トイレや洗面所の扉は、出入りのときに人とぶつかりにくい向きか
図面の上では小さな弧ですが、実際の暮らしでは毎日何十回も開け閉めする部分。扉の弧を指でなぞるだけでできる、手軽なのに効果バツグンの図面チェックです!
窓の高さと大きさは立面図・展開図で
平面図だけを見ていると、つい忘れてしまうのが「高さ」のこと。窓の高さは、立面図や展開図とセットで確認するのがおすすめです。
✅ その窓は床まである掃き出し窓?腰窓?高い位置の窓?
✅ 窓の前にソファやベッドを置く予定はない?(家具と窓がケンカしないか)
✅ 道路や隣の家から、窓越しに室内が見えすぎないか
✅ 開け閉めしたい窓に、ちゃんと手が届くか(はめごろし窓=開かないFIX窓になっていないか)
「掃き出し窓の前にソファを置くつもりだった」というのは、打ち合わせで実際によくある発見です。高さ方向のチェックは、平面図+立面図・展開図のセットで!と覚えてください。
収納は「奥行き」と「中身」をチェック
図面の収納は、広さ(面積)だけで判断すると失敗しやすいポイントです。大事なのは「奥行き」と「何をしまうか」の組み合わせなんです。
✅ 布団をしまいたい押入れは、奥行きがしっかりあるか
✅ 洋服用のクローゼットは、ハンガーパイプが付いているか
✅ 奥行きが深すぎて「奥の物が取り出せない収納」になっていないか
✅ 掃除機・お掃除ロボットの「住所」は決まっているか
✅ 玄関収納に、靴以外(ベビーカー・アウトドア用品など)をしまう余裕はあるか
しまいたい物のリストを打ち合わせに持ってきていただくと、私たちも「それならここに可動棚を付けましょう」といったご提案がしやすくなります。収納は「広さ」より「奥行きと中身」。ここを意識するだけで使い勝手が全然違います!
手持ちの家具・家電を図面に置いてみる
最後は総仕上げ。いま使っている(またはこれから買う)家具・家電のサイズを測って、図面に書き込んでみましょう!
✅ 冷蔵庫・洗濯機は、置き場所に収まるか。搬入経路は通るか
✅ ソファ・ダイニングテーブルを置いても、人が通れる幅が残るか
✅ ベッドを置いたとき、扉や窓、コンセントと干渉しないか
✅ テレビとソファの距離はちょうどいいか
図面のコピーに家具を描き込むと、「あれ、ここ通れなくない…?」という気づきが必ず出てきます。その気づきこそが、打ち合わせで一番価値のある情報なんです!
図面チェックのゴールは、図面の中で家族の一日がスムーズに回ること。ぜひ「紙の上でお引っ越し」をしてみてください!
私の体験談
私が設計の仕事を始めたばかりの頃、初めて打ち合わせに同席したときのことです。先輩が図面を広げると、お施主様がぽつりと「…すみません、正直どこを見ればいいのか分からなくて」とおっしゃいました。
そのとき先輩は、図面をくるっとお施主様のほうに向けて、こう言ったんです。
「玄関から入って、いつもの夜ご飯までやってみましょうか」
そして「帰ってきて、靴を脱いで、買い物袋はどこに置きます?」「冷蔵庫はここ。扉はこっちに開きます」と、指で図面の上を歩きながら一緒にたどっていきました。すると、あんなに困っていたお施主様がどんどん前のめりになって、「あ、ここにコンセントほしいです!」「この扉、逆向きのほうがいいかも」と、ご自身でチェックを始めたんです。
正直、衝撃でした。図面の見方って、記号の暗記じゃなくて、「図面の中で暮らしてみること」なんだと。
それ以来、私も打ち合わせでは「まず図面の中を一緒に歩く」ことを心がけています。線と数字の向こうに暮らしが見えてきた瞬間の、お施主様の表情の変化がうれしくて、この仕事っていいなあと思う瞬間のひとつです!
Q&A
Q1. 図面が全然読めないのですが、打ち合わせは大丈夫?
大丈夫です!図面を読むのは私たち設計側の仕事です。お施主様には「自分たちの暮らしがこの図面でうまく回るか」という目線でチェックしていただくのが一番。分からない記号は、遠慮なくその場で聞いてください。
Q2. 図面チェックはどのタイミングでやればいい?
間取りの打ち合わせ中から、契約後の詳細打ち合わせまで、毎回コツコツとがおすすめです。特にコンセントや扉の向きなどの細かい部分は、詳細打ち合わせの段階が本番。工事が進んでからの変更は難しくなっていくので、「気づいたときにすぐ言う」が合言葉です!
Q3. 平面図と間取り図って違うもの?
チラシなどで見る「間取り図」は、平面図を一般の方向けに簡略化したものというイメージです。設計の平面図には、壁の位置や寸法など工事に必要な情報がぎっしり入っています。見方の基本は同じなので、間取り図に慣れていれば平面図もきっと読めますよ!
Q4. 図面に書き込みをしてもいいの?
むしろ大歓迎です!お渡しした図面はお施主様のものなので、気づいたこと・要望・疑問をどんどん書き込んでください。書き込みだらけの図面は、私たちにとって「宝の地図」みたいなものなんです。
Q5. 打ち合わせに持っていくと良いものは?
✅ いま使っている家具・家電のサイズメモ
✅ 収納したい物のリスト
✅ メジャー(その場で長さの感覚を確かめられます)
✅ 家族の一日のタイムスケジュール
この4つがあると、図面チェックの精度がグンと上がります。特にメジャーは、「図面の90cmって実際どのくらい?」を体感できる優れものです!
まとめ
今回は、建築図面の見方と、打ち合わせでチェックしてほしいポイントをご紹介しました。
✅ 図面は種類ごとに役割が違う(平面図=間取り、立面図=外観、電気図=コンセントなど)
✅ 平面図には高さの情報がない。窓の高さは立面図・展開図とセットで
✅ チェックのコツは「図面の中で家族の一日を過ごしてみる」こと
✅ コンセント・扉の向き・窓の高さ・収納の奥行きは特に暮らしに効く
✅ 分からないことは、その場で設計担当に聞けばOK!
私自身、最初は記号だらけの図面にドキドキしていましたが、「図面の中で暮らしてみる」という見方を先輩に教わってから、図面がぐっと身近になりました。
図面は、まだ建っていないお家と対話できる、たった一つの道具です。難しく考えず、ぜひ「紙の上でのお引っ越し」を楽しんでみてください。あなたの気づきのひとつひとつが、住みやすいお家への近道になります。一緒に、図面の中からいい家をつくっていきましょう!
※本文中の建築確認申請に関する内容は2026年8月21日時点の情報です。法令は改正されることがあるため、最新の情報をご確認ください。





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