「太陽光と一緒に蓄電池もどうですか」「今なら補助金が出ますよ」。家づくりの打ち合わせや、ときには突然の訪問で、そんな話を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
電気代が上がり、災害のニュースを見るたびに、蓄電池が気になってくる。とはいえ100万円を軽く超える買い物ですから、「補助金がいくら出るのか」「そもそも元は取れるのか」がはっきりしないと、なかなか踏み切れません。
ところが、ネット上の「蓄電池 補助金」の記事を読んでみると、数字は書いてあるのにその数字がどこから来たのかが書かれていないものが少なくありません。制度は年度ごとに変わりますし、予算がなくなればその年は終わりです。去年の情報がそのまま残っているだけ、ということも起こり得ます。
この記事では、2026年8月9日時点で愛知県に住む方・愛知県で家を建てる方が使える蓄電池の補助金を、すべて公式サイトの出典付きで整理します。国の制度、愛知県の制度、そして名古屋市・豊田市・岡崎市・一宮市・春日井市・小牧市の実額まで、調べた結果をそのまま書きます。後悔しない判断のために、ぜひ最後までご覧ください。
⇒ 愛知県内で新築を検討していて、蓄電池を入れるか迷っている方
⇒ 今住んでいる家に蓄電池を後付けしようか考えている方
⇒ 2026年8月時点で愛知県内の主要6市が出している蓄電池補助金の実額と受付状況
⇒ 電気代の節約だけで蓄電池の元が取れるのかどうか、という損得のざっくりした感覚
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この記事のもくじ
- 2026年8月時点、愛知県で使える蓄電池の補助金の全体像
- 愛知県内6市の蓄電池補助金を調べました
- 家庭用蓄電池の価格と容量の目安
- 愛知の気候で、蓄電池は元が取れるのか
- 新築で入れる場合と、後から付ける場合の違い
- 正直に書いておきたいデメリットと、業者選びの注意
- Q&A|蓄電池の補助金でよくある質問
- まとめ
2026年8月時点、愛知県で使える蓄電池の補助金の全体像
補助金は「国・県・市町村」の3階建て
家庭用蓄電池の補助金は、大きく分けて国の制度・都道府県の制度・市区町村の制度の3つがあります。この3つは制度ごとに財源が違うため、条件が合えば重ねて受けられることがあります。
ただし、「必ず3つとも併用できる」と決まっているわけではありません。市町村によっては「国の補助を受けた分は対象外」といった条件を付けている場合もあります。併用の可否は、申請する市町村の要綱で確認するのが確実です。
そして愛知県の場合、この3階建ての構造が少し独特です。県の補助が「市町村を通じて出る」かたちになっているため、結局のところ、住んでいる市町村の窓口がすべての入口になります。
愛知県で蓄電池の補助金を調べるときは、まず「自分の市町村のページ」を開くのが最短ルートです。
国のDR補助金は2026年5月29日で終了しました
まず、いちばん金額の大きい国の制度から。家庭用蓄電池の「本命」と言われてきたのが、DR家庭用蓄電池事業です。正式には令和7年度補正「再生可能エネルギー導入拡大・分散型エネルギーリソース導入支援等事業費補助金」のうち、家庭用蓄電システムの導入を支援する事業で、一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)が実施しています。
DRとは「ディマンド・リスポンス」の略で、電力が足りない時間帯に家庭側で使用を抑えたり、ためた電気を使ったりして、電力の需給バランスを助ける仕組みのことです。この仕組みに参加することを条件に、蓄電池の導入費を国が補助するというのがこの制度の考え方です。
補助上限は1申請あたり60万円。補助対象は蓄電システムの機器代と工事費・据付費です(SII公式サイト、2026年8月9日確認)。
そして、ここが今回いちばんお伝えしたいところです。この事業の公募期間は2026年3月24日から12月10日までの予定でしたが、2026年5月29日に交付申請額の合計が予算に達し、公募は終了しました(SII公式サイトの告知より)。え、もう終わっているの? と思われるかもしれません。実際、開始から2か月ほどで締め切られた計算になります。
2026年8月9日時点で、国のDR補助金(上限60万円)はすでに受付が終わっています。「今なら国から60万円」という説明を受けたら、その根拠を必ず確認してください。
新築なら「みらいエコ住宅2026事業」が現役
国の制度がすべて終わったわけではありません。国土交通省・環境省・経済産業省の3省が連携するみらいエコ住宅2026事業(住宅省エネ2026キャンペーン)が動いています。前年度の「子育てグリーン住宅支援事業」の後継にあたる制度です。
この事業のリフォーム部門では、補助対象工事が8つのメニューに分かれており、そのうち「エコ住宅設備の設置」の中に蓄電池が含まれています(公式サイト、2026年8月9日確認)。交付申請の予約は2026年11月16日まで、交付申請は2026年12月31日まで(いずれも予算上限まで)とされています。
ただし正直に書いておくと、蓄電池1戸あたりの具体的な補助額は、公式サイト上で数値として確認できませんでした。民間サイトにはいくつか金額が出ていますが、一次情報で裏が取れていないため、この記事では金額を書きません。申請を検討される場合は、公式サイトの補助額一覧か、登録事業者に直接ご確認ください。
新築については、GX志向型住宅(省エネ性能を大きく高めた住宅)と、子育て世帯等向けの長期優良住宅・ZEH水準住宅が対象です。新築で蓄電池を検討している方は、蓄電池単体の補助を探すより、住宅そのものの性能で受けられる補助を先に確認したほうが金額は大きくなる可能性があります。
新築は「住宅の性能に対する補助」、既存住宅は「設備ごとの補助」。入口が違うと覚えておくと迷いません。
愛知県は「市町村との協調補助」というかたち
愛知県には愛知県住宅用地球温暖化対策設備導入促進費補助金(市町村との協調補助)という制度があります。対象設備には、太陽光発電施設、HEMS(家庭のエネルギー使用量を見える化する機器)、燃料電池、定置用リチウムイオン蓄電システム、V2H等充給電設備、太陽熱利用システム、高性能外皮等、断熱窓改修工事が含まれています(愛知県公式サイト、ページ更新日2026年7月22日)。
注目したいのは申請方法です。県のページには「申請先はお住いの市町村となります」「募集期間はお住いの市町村により異なります」とはっきり書かれています。つまり、県に直接申し込む窓口はありません。
県のページには県費分の単価も書かれていません。県の補助は市町村の制度に組み込まれるかたちで、住民から見ると「市町村の補助金」として一本化されている、と理解しておくとよいでしょう。
愛知県の蓄電池補助は「県に申請するもの」ではなく「市町村に申請するもの」です。
愛知県内6市の蓄電池補助金を調べました
6市の一覧表(2026年8月9日確認)
ここからが本題です。愛知県内の主要な6市について、各市の公式サイトで蓄電池の補助額と受付状況を確認しました。すべて2026年8月9日時点の情報です。
| 市町村 | 補助内容・金額 | 受付期間 | ポイント・注意点 |
|---|---|---|---|
| 名古屋市 | 蓄電池ほか、太陽光・HEMS・V2H・断熱窓・ZEH等 | 令和8年7月1日~ 令和9年2月12日 |
蓄電池の補助枠は、令和8年8月4日17時に予算到達のため終了。 太陽光・HEMS・V2H・断熱窓・ZEH等の枠は継続しています。 また、2026年度から申請時期が「工事着工前」から「工事完了後」に変更されています。 |
| 豊田市 | 家庭用リチウムイオン蓄電池システム設置 | 令和8年4月1日~ 令和9年3月31日 |
蓄電池またはV2Hの枠は、当初予算333件のうち残230件(2026年8月7日更新)。 補助金額については、市の申請ガイド(PDF)に記載されています。 |
| 岡崎市 | ①重点対策加速化事業活用型 対象経費×1/3・上限35万円 ②岡崎産再エネ電気活用型 ③環境型 |
令和8年12月28日まで | 3つの補助類型があります。 予算がなくなり次第終了となります。 |
| 一宮市 | 既存住宅の定置用リチウムイオン蓄電システム 5万円の定額 新築の場合 |
交付申請・実績報告期限 2027年2月26日 |
既存住宅は蓄電池単体で5万円。 新築の場合は蓄電池単体の補助ではなく、GX志向型住宅30万円の定額補助に含まれるかたちになります。 |
| 春日井市 | 6万円/台 先着順 |
2026年4月1日~ 2027年2月26日 |
建設から1年以上経過した既存住宅のみ対象。 新築住宅は対象外です。 |
| 小牧市 | 蓄電池単体 15万円 太陽光+HEMS+蓄電池の一体的導入 |
令和8年4月10日~ 令和9年3月15日 |
先着順。 令和8年7月31日時点で執行率44%となっています。 |
※補助制度は予算状況や申請状況によって受付終了・内容変更となる場合があります。実際に利用する際は、各自治体の最新情報をご確認ください。
表から見えてくる3つのこと
まず、同じ愛知県内でも金額が3倍近く違います。蓄電池単体で見ると、一宮市の5万円(既存住宅)に対して小牧市は15万円。岡崎市は条件を満たせば上限35万円の枠もあります。「愛知県の相場はいくら」という言い方があまり意味を持たない、ということが分かります。
次に、名古屋市の蓄電システム枠は、2026年8月4日時点で予算に達して受付を終了しています。受付開始が7月1日でしたから、1か月あまりで締め切られたことになります。名古屋市は2026年度から申請時期を「工事着工前」から「工事完了後」に変更しており、この点も従来と違うため注意が必要です。
三つめは、新築か既存住宅かで、使える制度がまったく違うということです。春日井市は建設から1年以上経過した既存住宅のみが対象で、新築は対象外。一宮市も新築では蓄電池単体の補助は出ず、GX志向型住宅の定額枠に統合されています。「隣の市の友人がもらえたから自分ももらえる」とは限りません。
蓄電池の補助金は「愛知県でいくら」ではなく「自分の市で、新築か既存かで、今の時点でいくら」を見るものです。
家庭用蓄電池の価格と容量の目安
価格は「国が示す目標価格」で考えると分かりやすい
家庭用蓄電池の価格については、メーカーや機種、工事条件で大きく変わるため、「相場はこれです」と言い切れるものではありません。ただ、判断の物差しになる公的な数字があります。
国が補助事業のなかで示している目標価格です。先ほどのDR家庭用蓄電池事業では、2025年度の目標価格が11.9万円/kWh(設備費+工事費・据付費、税抜、蓄電容量あたり)とされています。また経済産業省の定置用蓄電システム普及拡大検討会では、家庭用蓄電システムの2030年の目標価格を7万円/kWhとしています。
この数字を使うと、たとえば10kWhの蓄電池なら、工事費込みでおおよそ120万円(税抜)が今の国の想定ラインということになります。見積書がこの水準から大きく外れて高い場合は、その理由を説明してもらったほうがよいでしょう。逆に言えば、価格は2030年に向けて下がっていくことが国の計画に織り込まれている、ということでもあります。
なお、太陽光と蓄電池をセットで導入する場合は、当然ながら太陽光の費用が別に乗ります。「セットだから割安」と言われることもありますが、セット価格で提示されると内訳が見えにくくなるという面もあります。太陽光と蓄電池は分けて金額を出してもらうことをおすすめします。
価格の妥当性は「1kWhあたりいくらか」に直して比べると、業者間の比較がしやすくなります。
蓄電池の容量の目安は何kWhか
「4人家族なら何kWhがいいですか」というのはよく聞かれる質問だと思います。ここでも、感覚ではなく公的なデータから考えてみます。
環境省の「家庭部門のCO2排出実態統計調査」(令和5年度)によると、1世帯あたりの年間電気使用量は全国平均で3,911kWhです。単純に365で割ると、1日あたりおよそ10.7kWhという計算になります。世帯人数が多ければこれより増えますが、ひとつの目安にはなります。
ここで大事なのは、蓄電池は1日分の電気をまるごとまかなうための機器ではない、ということです。太陽光がある家では、昼間は発電した電気を直接使えます。蓄電池が役に立つのは主に夕方から夜、そして早朝の時間帯です。
そのため、1日分の使用量すべてを蓄えられる容量は必ずしも必要ありません。夜間に使う分をどれだけカバーしたいか、停電時にどこまで安心したいか、この2つで決めるのが現実的です。容量が大きいほど価格も設置スペースも増えるため、「大は小を兼ねる」とは言い切れません。
容量選びは「1日分をまかなう」ではなく「夜の分+停電時の安心分」で考えると過剰投資を避けやすくなります。
停電のとき、実際どれくらい持つのか
蓄電池を検討する動機として、停電への備えを挙げる方は多いと思います。ここも数字で見てみます(計算が苦手な方は結論だけ読んでいただいて大丈夫です)。
停電時に何を動かすかで消費電力はまったく変わります。冷蔵庫・照明・スマホの充電・テレビ程度に絞れば、1日あたり2〜3kWh程度に抑えられる可能性があります。この前提なら、10kWhの蓄電池で3日前後は持つ計算になります。
一方、エアコンを動かすと話が変わります。夏場にエアコンを連続運転すれば、1日で10kWhを使い切ってしまうことも十分あり得ます。「停電しても普段どおり暮らせます」という説明は、少し楽観的かもしれません。
もうひとつ確認したいのが、全負荷型か特定負荷型かという違いです。全負荷型は停電時に家中のコンセントが使えるタイプ、特定負荷型はあらかじめ決めた回路だけが使えるタイプです。全負荷型は便利ですが価格が上がり、蓄電池の減りも早くなります。どちらが良いかは、何日間の停電を想定するかで変わります。
停電時の持ち時間は「容量」だけでは決まりません。何を動かすかを先に決めてから容量を選ぶのが順番です。
愛知の気候で、蓄電池は元が取れるのか
名古屋の日照時間は全国でも上位クラス
蓄電池は基本的に太陽光発電とセットで力を発揮します。ということは、その土地でどれだけ発電できるかが前提条件になります。
気象庁の平年値(統計期間1991〜2020年)によると、名古屋の年間日照時間は2,141.0時間です。同じ平年値で東京は1,926.7時間ですから、名古屋のほうが年間で200時間以上多いことになります。都道府県庁所在地の比較では、愛知は山梨・高知・群馬・静岡に次ぐ上位(全国平均は1,915.9時間)とされています。
月別に見ても、名古屋は1月174.5時間、12月170.3時間と、冬でも日照が確保しやすいのが特徴です。日本海側のように冬に発電量が落ち込みにくい、というのは愛知の地の利と言えるでしょう。
つまり、太陽光発電そのものについては、愛知は条件のよい地域です。ただし「日照がよい=蓄電池も得」とは、そのままはつながりません。ここは分けて考える必要があります。
愛知は太陽光の条件がよい地域。まず太陽光、次に蓄電池、という順番で検討するのが理にかなっています。
ざっくり計算してみます
では、電気代の節約だけで蓄電池の元が取れるのか。仮定を置いて計算してみます。数字が苦手な方は、この節の最後の太字だけ読んでいただければ十分です。
【前提】10kWhの蓄電池を、国の目標価格11.9万円/kWhで導入した場合、工事費込みで約119万円(税抜)。ここから市の補助金15万円が出たとして、実質負担は約104万円とします。
【効果】1日6kWh分、電力会社から買う電気を「ためた電気」に置き換えられたとします。電気料金の目安単価は全国家庭電気製品公正取引協議会が定める31円/kWh(税込)を使います。
6kWh × 31円 × 365日 = 約67,900円/年
これなら104万円 ÷ 6.8万円で、およそ15年で回収できる計算です。ただし、この計算には大きな落とし穴があります。
蓄電池にためる電気の多くは、本来なら電力会社に売れたはずの電気です。つまり節約できた金額から、減った売電収入を差し引かないと本当の効果にはなりません。この差し引き後の実質効果は、売電単価の条件によって大きく変わります。仮に年4万円の効果だとすると、104万円 ÷ 4万円で回収に26年。これは蓄電池の一般的な使用期間を超えてしまう可能性があります。
電気代の節約だけで蓄電池の元を取るのは、2026年時点ではかなり厳しいと言わざるを得ません。判断の分かれ目は「停電時の安心をいくらと見るか」です。
(調べていて、正直これは書きにくいなと思いました。ただ、ここを曖昧にしたまま100万円の判断はできませんので。。。)
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新築で入れる場合と、後から付ける場合の違い
同じ蓄電池でも、新築の設計段階から織り込む場合と、完成した家に後から付ける場合とでは、条件がかなり違います。
新築が有利な点は、まず設置場所を最初から決められることです。蓄電池は屋外設置型でエアコンの室外機より大きいものもあり、後付けだと「置ける場所が玄関横しかなかった」「隣地との距離が足りなかった」といったことが起こり得ます。設計時に決めておけば、外構や動線に合わせて無理のない位置を選べます。
次に配線です。分電盤から蓄電池までの配線は、壁の中を通せる新築のほうが仕上がりがきれいで、追加費用も抑えやすくなります。後付けの場合は露出配線になったり、外壁に配管カバーが付いたりすることがあります。
さらに、将来入れる可能性があるなら、設置スペースと空配管だけ先に用意しておくという選択肢もあります。今は予算的に難しくても、基礎まわりの土間や配管を準備しておけば、数年後の工事費を抑えられる可能性があります。これは設計段階でしかできない備えです。
一方で、後付けにも利点はあります。数年住んでから、自分たちの電気の使い方が分かった状態で容量を決められるという点です。使用量が読めないまま大きな容量を選んで後悔するより、実績を見てから決めるほうが合理的な場合もあります。
ここは意見になりますが、「新築時に必ず入れるべき」とも「後からで十分」とも言い切れません。ただ、設置スペースと配管だけは新築時に確保しておくというのは、費用がほとんどかからないわりに選択肢を残せる方法だと感じています。
新築で迷っているなら、蓄電池そのものより先に「置き場所と配線ルートを図面に描いておく」ことを検討してみてください。
正直に書いておきたいデメリットと、業者選びの注意
設置スペースと交換費用
蓄電池のデメリットとして、まず挙げたいのが設置スペースを取ることです。屋外設置型は機種によってかなりサイズが違い、通気のために周囲に空間を空ける必要もあります。敷地に余裕がない場合、駐車スペースや通路を削ることになりかねません。
次にパワーコンディショナ(直流と交流を変換する機器。パワコンと呼ばれます)の交換費用です。パワコンは蓄電池本体より先に寿命が来る場合があり、交換には追加の費用がかかります。導入時の見積もりには含まれていないことが多いので、将来の出費として頭に入れておく必要があります。
そして、これは制度上の話ですが、補助金ありきで急いで決めると、業者選びを誤りやすくなります。「今月中に契約しないと補助金が間に合わない」という言い方は、冷静な比較検討をやめさせる効果があります。予算が尽きるのは事実であっても、100万円超の設備を数日で決める理由にはなりません。
補助金は「もらえたら嬉しいもの」であって、判断を急がせる理由にはならない、と考えておくと落ち着いて選べます。
「寿命」より先に確認したい2つの保証
蓄電池の寿命については、いろいろな年数が語られています。ただ、機種ごとに条件が違いすぎるため、この記事では特定の年数を断定しません。代わりに、契約前に必ず確認していただきたい2種類の保証をお伝えします。
ひとつめは機器保証です。本体やパワコンが故障したときに、何年間、無償で修理してもらえるかという保証です。
ふたつめは容量保証です。リチウムイオン電池は使ううちに少しずつ蓄えられる量が減っていきます。「○年後に定格容量の○%以上を保証する」という別建ての保証があるかどうかを確認します。機器保証と容量保証は別物で、年数も違うことがあります。
カタログの「サイクル数」(充放電を何回繰り返せるか)も参考にはなりますが、測定条件が統一されているわけではないため、数字だけの比較には限界があります。保証書の実物を見せてもらい、免責事項まで読むのがいちばん確実です。
「寿命は何年ですか」と聞くより、「機器保証と容量保証は何年ですか」と聞くほうが、返ってくる答えが具体的になります。
訪問販売のトラブルは実際に増えています
最後に、これは数字で見ておきたい話です。
国民生活センターの公表資料によると、家庭用蓄電池の勧誘に関する相談件数は、2016年度の325件から2019年度に1,302件、2020年度は1,314件と大きく増えました(2021年6月3日公表)。
さらに近年増えているのが、太陽光発電システムの点検商法です。相談件数は2017年度の57件から、2022年度154件、2023年度304件、2024年度は613件へと急増しています(2025年6月4日公表)。
典型的な手口として紹介されているのが、「市から委託された」と名乗って無料点検に訪れ、「売電するための装置が壊れている」と説明し、約200万円の蓄電池契約を勧誘するというものです。「市から委託された」という言葉が出てきたら、その場で契約せず、市役所に電話して確認するのが確実です。
なお、訪問販売に該当する契約であれば、契約書面を受け取った日を含めて8日間はクーリング・オフが可能です。困ったときは消費者ホットライン188に相談できます。
「その場で契約しない」「必ず複数社から見積もりを取る」。この2つを守るだけで、多くのトラブルは避けられます。
Q&A|蓄電池の補助金でよくある質問
Q1. 国と市の補助金は併用できますか?
財源が違うため、条件が合えば併用できる場合があります。ただし、市町村によっては「国の補助を受けた設備は対象外」といった条件を設けていることもあります。
併用の可否は、申請する市町村の交付要綱に書かれています。窓口に電話して「国の補助と併用できますか」と直接聞くのが、いちばん早くて確実です。
「併用できるはずです」という営業担当の口頭説明ではなく、要綱の記載で確認しましょう。
なお、2026年8月9日時点では国のDR補助金がすでに終了しているため、この年度に関して言えば併用の検討自体が難しい状況です。
併用の可否は年度ごと・市町村ごとに変わるものと考えて、その都度確認するのが安全です。
Q2. 補助金はいつもらえますか?
多くの制度では、工事完了後に実績報告を提出し、審査を経てから振り込まれます。そのため、支払いは先、入金は後になるのが一般的です。
たとえば名古屋市は2026年度から、申請の時期を「工事着工前」から「工事完了後」に変更しています。制度の運用そのものが年度で変わることもあるということです。
資金計画を立てるときは、補助金が入る前提でギリギリの予算を組まないほうが安心です。
入金までの期間は制度によって異なるため、申請前に窓口で目安を確認しておくとよいでしょう。
補助金は「値引き」ではなく「後から戻ってくるお金」。この時間差を資金計画に織り込んでおくことが大切です。
Q3. 予算が終わってしまったら、来年度まで待つべきですか?
一概にそうとは言えません。補助金は制度の一部であって、家づくりや設備投資の目的そのものではないからです。
来年度に同じ制度があるとは限りませんし、金額が減る可能性も、逆に増える可能性もあります。国の制度は補正予算の内容次第で毎年変わります。
一方で、待っている間の電気代や、災害への備えが遅れることも事実です。「補助金のために1年待つ」判断が本当に得かどうかは、金額を並べて比べてみる価値があります。
大切なのは補助金の有無ではなく、その設備が自分たちの暮らしに本当に必要かどうかです。
Q4. 太陽光がなくても蓄電池だけ設置できますか?
技術的には設置できますし、深夜の安い電気をためて昼間に使うという使い方もあります。ただし、太陽光がない場合、経済的なメリットは太陽光とセットの場合よりかなり小さくなります。
また、補助金の要件として太陽光発電との同時設置や既設を求める自治体もあります。名古屋市のように、太陽光で申請する場合はHEMSと蓄電システム(またはV2H)をまとめて導入する必要がある、という条件を設けている例もあります。
「蓄電池だけ」を検討する場合は、まず自分の市の要件を確認してください。
停電対策としての価値は太陽光がなくてもありますので、目的次第だと言えるでしょう。
目的が「電気代の節約」なら太陽光とセット、「停電への備え」なら単体でも意味があります。
Q5. 見積もりが妥当かどうか、どう判断すればよいですか?
いちばん分かりやすいのは、1kWhあたりの単価に直すことです。総額を蓄電容量で割るだけです。
国が示す目標価格(2025年度で11.9万円/kWh、設備費+工事費込み・税抜)と比べてみると、大きく外れているかどうかが分かります。
そのうえで、見積書に「工事費一式」としか書かれていない場合は、内訳を出してもらいましょう。電気工事、基礎工事、設置費、諸経費がそれぞれいくらかを見れば、比較がしやすくなります。
必ず複数社から見積もりを取り、同じ容量・同じ条件で比べることが基本です。
価格の高い安いより、「なぜその金額なのか」を説明できる会社かどうかが判断材料になります。
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まとめ
2026年8月9日時点で、愛知県の蓄電池補助金の状況を整理すると、国の本命だったDR補助金(上限60万円)は5月29日に予算到達で終了しており、県の制度は市町村を通じて出るかたちになっています。県内の主要6市を見ると、名古屋市は8月4日に蓄電システム枠が終了、豊田市・岡崎市・一宮市・春日井市・小牧市は現時点で受付中でした。
金額は市によって3倍近い開きがあり、新築か既存住宅かでも使える制度が変わります。「愛知県だといくら」という平均値にはあまり意味がなく、自分の市の、自分の状況に当てはまる枠を確認することがすべてです。
損得については、正直なところ電気代の節約だけで元を取るのは2026年時点では簡単ではありません。判断の分かれ目になるのは、停電時にどれだけ安心したいか、そこにいくらまで出せるか、という価値観の部分です。愛知は年間日照時間が全国でも上位クラスですから、太陽光発電そのものの条件は恵まれています。まず太陽光、次に蓄電池、という順番で考えると整理しやすいでしょう。
そして、補助金の締め切りを理由に契約を急がせる説明には、いったん距離を置いてください。訪問販売や点検商法に関する相談は実際に増えています。その場で契約せず、複数社の見積もりを1kWhあたりの単価に直して比べる。この2つを守るだけで、防げるトラブルは多いはずです。
なお、この記事の内容はすべて2026年8月9日時点で各公式サイトを確認したものです。補助金の制度は年度ごとに変わり、予算がなくなれば途中で終了します。実際に申請される際は、必ず国・県・お住まいの市町村の公式サイトで最新の情報をご確認ください。
蓄電池は、入れれば必ず得をする設備ではありません。けれど、停電した夜に冷蔵庫と照明が生きているという安心は、金額に換算しにくい価値があります。10年後・20年後の暮らしを思い浮かべながら、無理のない資金計画のなかで、自分たちに合った答えを見つけていただければと思います。


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