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エアコン1台で全館空調はできる? できる家とできない家の分かれ道

見学会やSNSで、「この家はエアコン1台で家じゅうを冷暖房しています」という説明を見聞きしたことはないでしょうか。

 

家じゅうどこにいても温度が同じで、廊下も脱衣所も暑くない、寒くない。それがエアコンたった1台で、と聞くと、え〜本当に???と思われた方も多いのではないでしょうか。各部屋にエアコンを付けて育った世代からすると、にわかには信じがたい話です。

 

先に結論をお伝えすると、これは半分本当で、半分は条件つきです。高気密・高断熱の家であれば現実的に可能ですが、どんな家でもできるわけではありませんし、「1台」という言葉にも少し補足が必要です。

 

この記事では、エアコン1台(少ない台数)の全館空調がなぜ成立するのか、床下エアコン・小屋裏エアコンという方法、電気代の考え方、そして故障時のリスクなどのデメリットまで、公的な資料をもとに整理します。ぜひ最後までご覧ください。

 

◆こんな方のために書いています
⇒ 「エアコン1台で全館空調」と聞いて、本当にできるのか半信半疑の方
⇒ 専用の全館空調システムと迷っていて、違いを知りたい方

 

◆この記事を読むとわかること
⇒ エアコン1台で家じゅうを冷暖房できる家とできない家の違い
⇒ 床下エアコン・小屋裏エアコンの仕組みと、電気代・デメリットの考え方

 

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エアコン1台で全館空調はできるのか 結論と理由

結論 家の性能しだいで、現実的に可能です

最初に結論からお伝えします。高気密・高断熱の家であれば、市販の壁掛けエアコン1台(あるいは2台)で家全体を冷暖房することは、現実的に可能です。

 

理由はシンプルです。エアコンは、部屋の熱を外へ運び出したり(冷房)、外の熱を室内へ運び込んだり(暖房)する機械です。つまり、家から出入りする熱の量と、エアコンが運べる熱の量の綱引きをしています。

 

熱がどんどん出入りする家では、大きなエアコンを何台も並べても綱引きに勝てません。逆に、熱の出入りがとても小さい家なら、小さなエアコン1台でも家全体とつり合いが取れます。魔法瓶に入れたお湯が少しの保温で温かさを保てるのと、同じ理屈です。

 

一方で、この条件を欠いた家で「エアコン1台」に挑戦すると、夏は2階が暑いまま、冬は足元が寒いまま、電気代だけがかさむという結果になりかねません。できるかどうかは、設備ではなく家が決める。これがこの記事全体を貫く結論です。

 

エアコン1台の全館空調は「高気密・高断熱の家」という前提があって初めて成立します。

 

なぜ「普通の家」ではエアコンが効かないのか

では、熱はどこから出入りしているのでしょうか。いちばん大きな出入り口は、壁でも屋根でもなくです。

 

夏の冷房時には、外から室内に入ってくる熱の約7割が窓などの開口部から流入し、冬の暖房時には、室内の熱の約6割が開口部から流出するとされています(建材業界団体の資料による。確認日2026年7月)。窓は光を通すために透明でなければならず、どうしても熱の弱点になるのです。

 

窓の性能が低く、壁や天井の断熱材も薄い家では、冷やしたそばから熱が入り、暖めたそばから熱が逃げていきます。だから各部屋にエアコンを付けて、ドアを閉め切って、その部屋だけを何とか快適にする、、、という使い方になります。「部屋ごとにエアコン」という日本の常識は、家の性能が低いことを前提にした習慣だと言い換えることもできるでしょう。

 

家全体の断熱(熱の出入りを防ぐ性能)と気密(すき間をなくす性能)を高めれば、この前提そのものが変わります。廊下や脱衣所も含めた家全体が「ひとつの部屋」のようになり、少ない台数で温度を保てるようになるわけです。

 

熱の最大の出入り口は窓。開口部を含めた家全体の性能が低いと、エアコンは何台あっても追いつきません。

 

カタログの畳数表記に、ヒントが隠れています

「家の性能でエアコンの効きが変わる」というのは、実はエアコンのカタログ自体が教えてくれています。

 

カタログの適用畳数に「8〜10畳」のように幅があるのをご存じでしょうか。これは「8畳から10畳の部屋に対応」という意味ではありません。大手空調メーカーの公式FAQによれば、「木造平屋の南向き(和室)なら8畳」「鉄筋アパートの南向き(洋室)なら10畳」という意味です(確認日2026年8月)。鉄筋の建物のほうが木造より気密性が高いため、同じエアコンでも効く広さが変わる。カタログの表記そのものが、建物の性能差を織り込んでいるのです。

 

ちなみに、この畳数の目安のもとになっている規格(JIS C 9612)が最初に制定されたのは1964年です。前回の東京オリンピックの年ですね。。。当時と今の住宅では、性能がまったく違います。

 

そのため、高気密・高断熱の家で畳数表記どおりにエアコンを選ぶと、能力が大きすぎるということが起こります。畳数はあくまで目安であり、性能の高い家では「畳数より小さい能力で足りる」方向にずれていく。エアコン1台の全館空調は、このずれを突き詰めた先にある考え方だと言えます。

 

適用畳数は建物の性能で変わります。高性能な家ほど、小さな能力で広い範囲をまかなえるようになります。

 

名古屋の気候は、夏も冬も本気です

地域の気候も確認しておきましょう。気象庁の平年値(1991〜2020年)によると、名古屋の8月は日平均気温28.2℃・平均相対湿度69%、7月は26.9℃・73%。高温多湿の、冷房が欠かせない夏です。

 

一方で冬は、1月の日平均気温が4.8℃、日最低気温の平均は1.1℃。朝方は氷点下近くまで下がる、暖房も本気で必要な地域です(確認日2026年8月21日)。

 

つまり名古屋・愛知で「エアコン1台(少数台)の全館空調」を考えるなら、夏の冷房と冬の暖房の両方が計画されている必要があります。夏だけ快適でも、冬だけ暖かくても足りません。この「夏冬両方」という視点が、次の章の床下エアコン・小屋裏エアコンの話につながっていきます。

 

名古屋は夏の冷房も冬の暖房も欠かせない地域。1台方式は「夏と冬の両方の計画」がセットで必要です。

 

どうやって1台で? 床下エアコンと小屋裏エアコン

冬の主役は「床下エアコン」

冬の暖房でよく使われるのが床下エアコンです。基礎断熱(基礎の立ち上がりを断熱して、床下を室内側として扱う工法)をした家の床下に、壁掛けエアコンの温風を送り込む方法です。

 

暖められた床下の空気は、床のガラリ(通気口)から各部屋へゆっくり立ち上ってきます。暖かい空気は上へ昇る性質があるので、いちばん低い場所である床下から暖めるのは、空気の性質に沿った合理的な方法です。床そのものがほんのり暖まるため、足元の冷えを感じにくいのも特徴です。

 

大事な前提がひとつあります。床下エアコンは、床下が断熱の内側に入っている「基礎断熱」の家でないと成立しません。床のすぐ下で断熱する「床断熱」の家では、床下は外気に近い空間ですから、そこを暖めても熱は外へ逃げていくだけです。

 

床下エアコンは「基礎断熱+高気密・高断熱」が前提。床下から家全体を暖める、冬の合理的な方法です。

 

夏の主役は「小屋裏エアコン」

夏の冷房では、逆にいちばん高い場所を使います。小屋裏エアコンは、屋根断熱(屋根面で断熱して小屋裏まで室内側に取り込む方法)をした家の小屋裏にエアコンを設置し、冷たい空気を各部屋へ落とす方法です。

 

冷たい空気は下へ沈む性質があるため、上から冷やせば、吹き抜けや階段、天井の開口を通って家全体に冷気が行き渡ります。冬は下から暖め、夏は上から冷やす。どちらも空気の性質を利用しているのが、この方式の面白いところです。

 

ここにも前提があります。小屋裏が断熱の外側にある(天井断熱の)家では、夏の小屋裏は外気以上の高温になる空間です。そこにエアコンを置いても、冷やしているそばから熱が入ってきます。また、公的な住宅紛争処理の技術資料には、断熱が不十分な空調用ダクトが断熱区画の外側を通ると冷房時に表面が結露する、という事例類型が示されています。冷たい空気を扱う場所が断熱の内側にあること、結露まで考えた設計になっていることが欠かせません。

 

小屋裏エアコンは「屋根断熱で小屋裏を室内側に取り込んだ家」が前提。上から冷気を落とす、夏の合理的な方法です。

 

正確には「1台」ではなく「季節ごとに主役交代」です

ここで、正直にお伝えしておきたいことがあります。「エアコン1台で全館空調」と言われるものの多くは、厳密には「冬用の1台と夏用の1台を、季節で使い分ける」構成です。

 

前述のとおり、暖房は下から、冷房は上からが理にかなっています。1台のエアコンでその両方をこなすのは難しいため、床下(または1階)に暖房の主役、小屋裏(または2階)に冷房の主役を置いて、季節ごとに主に動く1台が交代する。「同時に動いているのはほぼ1台」という意味での「1台」です。

 

なんだ2台か、と思われるかもしれませんが、部屋ごとに5台も6台も設置するのに比べれば、購入費も、将来の更新費も、フィルター掃除の手間も大きく減ります。大切なのは台数の字面ではなく、少ない設備で家全体の温度を保てる家になっているかどうかのほうです。

 

実際には「夏用と冬用の主役交代」が多数派です。台数の字面より、少ない設備で成立する家かどうかが本質です。

 

空気の通り道まで設計されているかがカギ

性能の高い家に、ただエアコンを1〜2台付ければ全館空調になるかというと、そうではありません。もうひとつの条件が空気の通り道の設計です。

 

エアコンから遠い部屋まで冷気・暖気を届けるには、吹き抜けや階段の位置、床のガラリの配置、ドア下のすき間(アンダーカット)、必要に応じた小さなファンなど、空気が流れる道筋を間取りの段階から計画しておく必要があります。ドアを閉め切る部屋には空気は届きにくいので、通り道が計画されていない家では、部屋ごとの温度ムラという形で弱点が出ます

 

また、気密性能も空気の流れに直結します。気密はC値(家全体のすき間の大きさを表す数値。小さいほど高性能で、実測が必要です)で表されますが、すき間だらけの家では、計画した通り道ではなく、すき間から空気が出入りしてしまいます。

 

さらに、住宅には24時間換気(居室の空気を1時間に0.5回以上入れ替える換気設備)が義務づけられており、この換気の計画と空調の計画は一体で考える必要があります。エアコン1台の全館空調は、設備の話ではなく設計の話なのです。

 

成立のカギは「家の性能×空気の通り道の設計×気密・換気の計画」。エアコンはその仕上げにすぎません。

 

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電気代はどうなる? 金額より先に知っておきたいこと

電気代を決めるのは、設備よりも家の性能です

「エアコン1台なら電気代は安いの?」というのが、いちばん気になるところだと思います。

 

先にお断りしておくと、この記事では「月◯円です」という金額は書きません。電気代は、家の断熱・気密性能、広さ、家族構成、電気料金プランによって大きく変わるため、前提を示さない金額には、あまり意味がないからです。むしろ、確かな根拠のない金額をうのみにしないことのほうが大切だと考えています。

 

そのうえで、原理だけ押さえておきましょう。エアコンの電気代は「運び出す(運び込む)熱の量」に比例します。熱の出入りが小さい家ほど運ぶ熱が少なくて済むので、電気代は下がる方向に働きます。つまり、電気代を決めているのはエアコンの台数や機種よりも、家の性能そのものです。

 

性能の低い家でエアコンを1台に減らしても、電気代が安くなるわけではありません。1台が全力で運転し続けるだけです。順番はあくまで「家の性能が先、台数は結果」です。

 

電気代を決めるのは家の性能。台数を減らすから安くなるのではなく、性能が高いから少ない台数と電気で済むのです。

 

年間の目安は「カタログの数字×31円」で計算できます

金額は書けませんが、ご自身で目安を計算する方法はお伝えできます。

 

エアコンのカタログには期間消費電力量という数値が載っています。これは、決められた共通条件でそのエアコンを1年間使った場合の消費電力量(kWh)の目安です。この数値に、電気料金の目安単価を掛けると、年間の電気代の目安が出ます。

 

目安単価は、公益社団法人 全国家庭電気製品公正取引協議会が定めており、2026年8月時点では31円/kWh(税込。令和4年7月22日改定)とされています。たとえば期間消費電力量が800kWhの機種なら、800×31円=年間およそ24,800円が共通条件での目安、という計算です。

 

ただし、これはあくまで規格上の共通条件での比較用の数値です。実際の電気代は家の性能と使い方で変わりますから、検討中の住宅会社に、実際に建てた家の光熱費の実測データを見せてもらうのがいちばん確実です。単価は改定されることがありますので、最新の情報もあわせてご確認ください。

 

「期間消費電力量×31円/kWh」で年間の目安が計算できます。最終判断は実測データで確かめましょう。

 

「こまめにオンオフ」より「つけっぱなし」が基本になります

エアコン1台の全館空調では、運転のしかたも変わります。基本は、弱めの運転で長時間、家全体の温度を一定に保つ使い方です。

 

「こまめに消したほうが節約になるのでは?」と思われるかもしれませんが、高気密・高断熱の家では、いったん温度が安定すると、それを保つためのエネルギーは小さくて済みます。逆に、切って室温が大きく動いてから立ち上げ直すと、そのたびに大きな力が必要になります。魔法瓶の保温と、冷めたお湯の沸かし直しの違いのようなものです。

 

また、家の中の温度差が小さい状態を保つこと自体に価値があります。国土交通省の調査(断熱改修等による居住者の健康への影響調査・中間報告)では、部屋間の温度差が大きく、床近くの室温が低い住宅ほど、居住者の血圧が有意に高いという結果が報告されています(確認日2026年8月21日)。家全体を穏やかに空調し続けることは、ぜいたくではなく、健康への投資という側面もあるわけです。

 

1台方式の基本は「弱く・長く・家全体を一定に」。温度差の少なさは、健康面からも意味があります。

 

エアコン1台の全館空調 デメリットと注意点

故障すると、家全体に影響します

ここからはデメリットの話です。まず、冷暖房を少ない台数に集約するということは、その1台が故障したとき、家全体の冷暖房が止まるということでもあります。

 

真夏や真冬に空調が止まれば、快適さだけの問題では済みません。特に小さなお子さまやご高齢のご家族がいる場合は、復旧までの想定をしておきたいところです。

 

ただし、ここは専用の全館空調システムと違う点でもあります。使っているのは市販の壁掛けエアコンですから、量販店でも手に入り、対応できる業者も多く、最悪でも「一時しのぎのエアコンを1台足す」という逃げ道があります。設計の段階で、予備の設置場所(コンセントや配管スリーブ)を用意しておくという保険のかけ方もあります。

 

台数を絞るほど、止まったときの影響は大きくなります。復旧のしやすさと予備の計画まで確認しておきましょう。

 

部屋ごとの細かい温度調整は苦手です

家全体を同じ温度に保つのが得意ということは、裏を返せば、「寝室だけもっと涼しく」「子ども部屋だけ暖かく」といった部屋別の調整は苦手だということです。

 

家族の中に極端な暑がり・寒がりがいる場合や、部屋ごとに温度の好みがはっきり分かれている場合には、この方式が合わない可能性があります。寝室だけ補助のエアコンを付けられるようにしておく、といった折衷案もありますが、いずれにしても事前に家族で話し合っておきたいポイントです。

 

また、空気の通り道の設計しだいでは、エアコンから遠い部屋や閉め切りがちな部屋に温度ムラが出ることがあります。見学会などでは、エアコンのある部屋だけでなく、いちばん遠い部屋や脱衣所の温度を確かめてみると、その会社の設計力が見えてきます。

 

全体を一定に保つ方式は、部屋別の調整が不得意です。暮らし方に合うかどうかを先に確認しましょう。

 

床下エアコンで冷房はしないのが基本です

床下エアコンの注意点として知っておきたいのが、冷房には使わないのが基本だということです。

 

夏の床下に冷たい空気を送ると、床下の低い温度の面に、湿った空気が触れることになります。結露は、湿った空気が冷たい面に触れて水滴になる現象ですから、見えない床下で結露が起き、木材の湿りやカビにつながるリスクがあります。床下エアコンはあくまで冬の暖房用と考え、夏の冷房は小屋裏や2階の別のエアコンが受け持つ。この役割分担が基本形です。

 

床下・小屋裏のような「普段人が入らない空間」を空調に使う方式は、うまく設計されれば合理的ですが、結露まで含めた検討ができているかどうかで結果が大きく変わります。採用を検討する際は、「夏はどこで冷やすのですか」「結露はどう防ぐのですか」と質問してみてください。明確に説明できるかどうかが、経験のある会社かどうかの判断材料になります。

 

床下エアコンは冬専用が基本。冷房まで含めた計画と結露対策を説明できる会社を選びましょう。

 

容量選定は「畳数」ではなく「計算」で

もうひとつの注意点が、エアコンの能力(容量)選びです。第1章で触れたとおり、カタログの畳数表記は昔ながらの住宅を想定した目安であり、高気密・高断熱の家には当てはまりません。

 

家全体を1台でまかなう場合、「何畳だから何kW」ではなく、その家の断熱性能(UA値: 家から熱がどれくらい逃げやすいかを表す数値)や日射の入り方から、必要な熱の量を計算して選ぶ必要があります。大きすぎる機種は、こまめな入り切りをくり返して湿度が下がりにくくなったり、電気を余分に使ったりする原因になります。

 

これは、住宅会社側に計算と実績の裏づけがあるかどうかの問題です。「大は小を兼ねるので大きめにしておきましょう」という説明しか出てこない場合は、少し立ち止まったほうがよいかもしれません。

 

容量は畳数ではなく熱計算で決めるもの。根拠を示して選定してくれる会社かどうかを確認しましょう。

 

専用の全館空調システムとの違い

いちばんの違いは「ダクトの有無」です

「全館空調」と聞いて多くの方が思い浮かべるのは、大型の専用機からダクト(空気の配管)で各部屋へ送風する、専用システムのほうだと思います。エアコンを使う方式との違いを整理しておきましょう。

 

項目 専用システム エアコン方式
機器 専用の大型機 市販エアコン
空気の道 天井裏のダクト 間取り・床下等
掃除 ダクトは専門作業 本体に手が届く
交換 業者が限られる 一般ルートで可

 

快適さの方向性はどちらも同じ「家全体の温度を一定に」です。大きく違うのは空気の通り道で、専用システムは天井裏などのダクトを使います。ダクトの内部は住まい手が掃除できず、清掃は内視鏡などを使う専門業務になります。一方、エアコン方式は部屋そのものが空気の通り道なので、カビやほこりが心配になる場所に、目と手が届きやすいという違いがあります。

 

両者の分かれ目はダクトの有無。見えない経路が長いほど、点検・清掃の計画が重要になります。

 

修理・交換のしやすさに差が出ます

もうひとつの違いは、10年後・20年後に表れます。空調機器には「設計上の標準使用期間」という考え方があり、いつかは必ず修理や入れ替えの時期が来ます。

 

市販のエアコンは量販店で買えるため価格競争が働き、入れ替えも一般的な工事で済みます。一方、専用システムは対応できる業者が限られることが多く、更新の費用や段取りが読みにくい面があります。初期費用についても、専用システムは機器に加えてダクト工事や設置スペースが必要になるため、エアコン方式より大きくなりやすいのが一般的です(金額は条件による幅が大きいため、ここでは書きません。見積もりは内訳を分けて比較することをおすすめします)。

 

どちらが正解ということではなく、導入して終わりではない設備だからこそ、維持・更新まで含めた総額と体制で比べることが、後悔しない選び方につながります。

 

空調はいつか必ず入れ替えるもの。初期費用だけでなく、更新のしやすさと費用まで含めて比較しましょう。

 

Q&A|エアコン1台の全館空調でよくある質問

 

Q1. どんな家でもエアコン1台で全館空調にできますか?

できません。前提になるのは、断熱・気密性能の高い家であること、そして空気の通り道が設計されていることです。性能の足りない家で台数だけ減らすと、暑い・寒い・電気代が高いという三重苦になりかねません。「エアコン1台」は目標ではなく、家の性能を高めた結果として可能になるものです。

 

Q2. 既に建っている家でもできますか?

家の性能しだいです。断熱・気密の性能が今の水準に届いていない住宅では、エアコンを減らす前に断熱改修(窓の交換や断熱材の追加)が先になります。なお、2025年4月以降に着工する新築住宅には省エネ基準への適合が義務化されましたが、義務化された等級4はあくまで最低ラインです。制度は変わることがありますので、最新情報をご確認ください(2026年8月時点)。

 

Q3. 夏と冬で本当に1台ずつで足りるのですか?

家の性能と広さ、設計によります。実際には「冬は床下(1階)の1台、夏は小屋裏(2階)の1台が主役」という構成が多く、中間期はほぼ運転なしで過ごせる家もあります。大切なのは台数そのものではなく、その会社が実際に建てた家で、何台でどんな温度になっているかの実測データを見せてもらうことです。

 

Q4. 電気代は普通の家より安くなりますか?

家の性能が高ければ、家全体を空調しているのに電気代は抑えられる、という状態が期待できます。ただし「全館空調だから安い/高い」と一概には言えません。カタログの期間消費電力量×目安単価31円/kWh(2026年8月時点)で機種ごとの目安を比較しつつ、最終的には実測の光熱費データで確認するのが確実です。

 

Q5. 床下エアコンや小屋裏エアコンは、普通のエアコンと違う機械ですか?

機械そのものは市販の壁掛けエアコンです。特別なのは機械ではなく、基礎断熱・屋根断熱といった家の側の作り方と、空気の通り道の設計のほうです。だからこそ、同じ「床下エアコンやってます」でも、会社の設計力と実績によって結果に差が出ます機械はどこでも買えます。差がつくのは家と設計です。

 

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まとめ

「エアコン1台で全館空調」は、魔法でも誇大広告でもなく、高気密・高断熱の家という土台があって初めて成立する、理にかなった方法です。熱の出入りが小さい家なら、小さな能力1台でも家全体とつり合う。カタログの畳数表記が建物によって変わることからも分かるとおり、エアコンの効きは、もともと家の性能が決めているのです。

 

実際の形としては、冬は床下エアコン、夏は小屋裏(2階)エアコンと、季節ごとに主役が交代する構成が多くなります。床下エアコンは基礎断熱が、小屋裏エアコンは屋根断熱が前提で、空気の通り道や結露まで含めた設計が欠かせません。機械は市販品ですから、差がつくのは家と設計のほうです。

 

デメリットも確認しました。故障時には家全体に影響が及ぶこと、部屋別の温度調整は苦手なこと、床下エアコンは冷房に使わないのが基本であること、容量は畳数ではなく計算で選ぶ必要があること。どれも、事前に知っていれば対処を組み込める内容ですが、知らずに「1台でいけます」という言葉だけを信じてしまうと、後悔につながりかねません

 

家じゅうの温度差が小さい暮らしは、夏の寝苦しさや冬の朝のつらさから解放してくれるだけでなく、部屋間の温度差と血圧の関係が国の調査で報告されているように、家族の健康を守る意味も持っています。10年後・20年後も、無理のない光熱費で、家のどこにいても心地よく過ごせること。設備の台数ではなく、その先にある暮らしを物差しにして、自分たちに合った空調のかたちを選んでいただければと思います。

 

家族全員が「この家にしてよかった」と、真夏の夜にも真冬の朝にも感じられる住まいづくりを目指しましょう。

 

※本文中の制度・基準・数値は2026年8月時点で公開されている国土交通省・気象庁・業界団体等の情報にもとづいています。制度や単価は変更される場合がありますので、最新の情報をあわせてご確認ください。

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