「親の家を引き継いだので建て替えたい」「今の家がだいぶ古くなってきた」。そんなとき、まず気になるのが家の建て替え費用ではないでしょうか。
ところが、ネットで注文住宅の費用を調べても、出てくるのは土地を買って新しく建てる人向けの話がほとんどです。建て替えには、新築の費用に加えて「今の家を壊す」「工事の間どこかに住む」「古い家の登記を消す」といった、建て替えだけにかかる費用と手間があります。
見積もりを作る側の実感としては、この“建て替えだけの費用”を最初から見込んでいるかどうかで、資金計画の安心感がまったく違ってきます。あとから一つずつ出てくると、「え、それもかかるの?」の連続になってしまうからです。
この記事では、家の建て替え費用の全体像、建て替え特有の費用8つ、30坪でいくらになるのかを出典のある数字だけで組み立てた目安、建て替えとリフォームどっちにするかの判断軸、そして解体から引き渡しまでの流れと2026年9月時点で使える制度を、分かりやすく解説します。ぜひ最後までご覧ください。
家の建て替え費用の全体像 新築の費用に“建て替えだけの費用”が乗る
建て替え費用は「4つの箱」で考える
家の建て替え費用は、大きく4つの箱に分けると整理しやすくなります。①建物本体工事費、②付帯工事費(屋外の給排水工事や外構など建物本体以外の工事)、③諸費用(登記・ローン手数料・保険・税金など)、そして④建て替えだけにかかる費用です。
①〜③は新築と共通です。別の記事で書いたとおり、建物本体の工事費は建築費全体の7〜8割程度、付帯工事費は1.5〜2割程度が目安で、諸費用は土地と建物の総額の1割程度を見ておくと大きく外れません。建て替えでは土地代がかからない分、土地から買う方より総額は小さくなります。
一方で、建て替えにはこの3つの箱に加えて、④の箱が必ず乗ってきます。解体、仮住まい、2回の引越し、古い家の登記を消す手続き、更地になってからの地盤調査、古い配管の引き直し。ひとつひとつは数万円〜百数十万円でも、合わせると数百万円規模になることが珍しくありません。
建て替え費用は「新築の3つの箱+建て替えだけの箱」。④の箱を最初から資金計画に入れることが、後悔しない建て替えの第一歩です。
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建て替えた人は実際いくらかけている? 国の調査で見る平均と中央値
では、実際に建て替えた方はいくらかけているのでしょうか。国土交通省が毎年行っている「住宅市場動向調査」には、注文住宅を建て替えた世帯だけを集計した数字があります。
令和7年度の調査(2026年7月公表。2024年4月〜2025年3月に建て替えた世帯が対象)では、建て替え世帯の住宅建築資金は全国平均で6,135万円、中央値(金額順に並べたときの真ん中の値)で4,000万円、自己資金の比率は51.5%でした。前の年度(令和6年度調査)は平均5,214万円・中央値3,900万円ですから、平均・中央値ともに上がってきています。
以前の記事では、令和3年度の同じ調査から「建て替えの相場感は3,299万円」という数字をご紹介しました。それからわずか数年で、中央値でも4,000万円前後まで上がっている。建築費の上昇が、建て替えにもそのまま反映されていると言えるでしょう。
なお、この「住宅建築資金」に解体費や仮住まいの費用まで含まれているかは、調査の区分からは読み取れません。建て替えだけの費用は、この金額とは別に見込んでおく方が安全です。
国の最新調査では、建て替え世帯の建築資金は中央値で約4,000万円(令和7年度)。数年前より確実に上がっています。
平均より中央値を見てほしい理由
ここで注目していただきたいのが、平均6,135万円と中央値4,000万円の差です。2,000万円以上も開いています。平均という数字は、ときどき人を惑わせますね。。。
この差が生まれるのは、一部の高額な建て替えが平均を押し上げているためと読めます。建て替えをする世帯は、初めて家を建てる方より年齢が高く、自己資金の比率も5割を超えています。退職金などで予算に余裕がある方が、思い切った建て替えをされるケースが平均に効いているのでしょう。
「平均6,000万円なら、うちも6,000万円は必要なのか」と考えてしまうと、予算の物差しが一気に狂ってしまいます。ご自身の計画の目安にするなら、多くの方の実感に近い中央値の方を見ておくことをおすすめします。
建て替え費用の物差しは「平均」ではなく「中央値」。自分たちの条件で一つずつ積み上げるのが確実です。
建て替え特有の費用8つ 解体費用から仮住まいまで一つずつ
ここからが、この記事の本題です。新築の記事には出てこない「建て替えだけの費用」を、出どころの確かな数字と法律の話を交えながら、8つに分けて見ていきます。
①建て替えの解体費用 木造30坪の目安と“坪単価に入らないもの”
建て替えの解体費用は、④の箱の中でいちばん大きな項目です。大手住宅情報サイト(解体業者団体の監修記事)の目安では、木造住宅の解体は坪3〜5万円、30坪で90〜150万円程度とされています(2026年9月時点の掲載内容。公的な統計はなく、あくまで情報サイトの目安です)。
ただし、この「坪○万円」には入っていないものが多くあります。アスベスト(石綿)を含む建材の除去、家の中に残した家財(残置物)の処分、ブロック塀やカーポートなど外構の撤去、浄化槽の撤去、庭木や庭石の処分。前面道路が狭くて重機が入らず手壊しになる場合や、隣の家が近くて養生に手間がかかる場合も、費用は上がります。
法律の面でも、今の解体工事は昔より手間がかかります。床面積80㎡以上の建物の解体は建設リサイクル法の対象で、木材・コンクリート・金属などを分けながら壊す「分別解体」が義務です。工事着手の7日前までに、発注者(つまり施主さん)が都道府県に届け出る決まりもあります(実務では解体業者が代行するのが一般的です)。さらに2022年4月からは、80㎡以上の解体工事で石綿の有無を事前に調査し、その結果を報告することも義務になりました。
古い家ほど調査と分別に手間がかかる。つまり、築年数が古い家の解体は、坪単価の目安どおりには収まりにくいと考えておいた方がよいでしょう。解体工事が単に「壊す」だけの仕事ではないことは、現場の様子とあわせて別の記事に書いています。
建て替えの解体費用は「坪単価×坪数」では終わらない。付帯物・アスベスト・立地条件まで含めた見積もりを、必ず現地調査のうえでもらいましょう。
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②仮住まいと引越し2回
建て替えで見落とされやすいのが、仮住まいの費用です。解体から新しい家の引き渡しまで住む場所が必要で、大手住宅情報サイトの解説では仮住まいの期間はおおよそ8〜10か月程度が一般的とされています。
費用は「家賃×月数+入居時の初期費用(敷金・礼金・仲介手数料・保証料・火災保険)+引越し2回分」で考えます。同サイトの試算例では、4人家族が賃貸に10か月住む場合で約140万円〜(東京都の家賃水準・月10万円の例)。名古屋や小牧では家賃水準が違いますので、ご自身の条件で式に当てはめてみてください。
引越しは、今の家から仮住まいへ、仮住まいから新居へ、と必ず2回あります。通常期の引越し費用は3人家族で平均約9.7万円(2026年6月時点の情報サイト調べ)ですから、2回で約20万円が最低ラインの目安。3月の繁忙期は1回あたり約19.9万円と倍近くになるため、引き渡し時期と重なる方は注意が必要です。
ご実家に身を寄せる、短期契約の賃貸を探す、といった選択で費用は大きく変わります。とはいえ、8〜10か月は決して短くありません。お子さまの学区や通勤、荷物の置き場所まで含めて、早めに考えておくと安心です。
仮住まいは「家賃×8〜10か月+初期費用+引越し2回」。建て替え費用の中で、最も条件次第で差が出る項目です。
③滅失登記と新築の登記 登記は「消す」と「作る」の2回
登記(建物の情報を法務局に記録する手続き)も、建て替えでは新築より1回多くなります。古い家を壊したら、その建物の登記を消す「建物滅失登記」が必要だからです。
不動産登記法では、建物が滅失した日から1か月以内に滅失登記を申請することが所有者の義務とされています(2026年9月時点)。滅失登記そのものに登録免許税(登記のときに納める税金)はかかりませんが、土地家屋調査士さんに依頼すれば報酬が必要です。古い家の登記が亡くなった親御さん名義のまま、というケースでは相続の手続きが先に必要になることもあります。
新しい家が完成したら、こちらも1か月以内に「建物表題登記」を申請し、続いて所有権保存登記、住宅ローンを組む場合は抵当権設定登記を行います。保存登記の登録免許税には軽減措置があり、2027年3月31日までに登記する住宅は税率が本則0.4%から0.15%に下がります(国土交通省、2026年8月31日確認)。
もうひとつ、建て替えならではの注意点があります。今の家に住宅ローンが残っている場合です。残債があっても建て替えは可能で、残債と解体費・建築費を一本化して借りる「建て替えローン」という仕組みもあります。ただし旧ローンの抵当権を外して新しく設定し直す手続きが伴うため、計画の初期に金融機関へ相談しておくことが大切です。
建て替えの登記は「消す(滅失)」と「作る(表題・保存・抵当権)」の2回セット。名義とローン残債の確認は、解体を決める前に済ませておきましょう。
④地盤調査と地盤改良 前の家が建っていた土地でも必要
「何十年も家が建っていた土地だから、地盤は大丈夫でしょう」。そう思われる方は多いのですが、建て替えでも地盤調査は必要です。新しい家は基礎の形も位置も重さも変わりますし、今の住宅では地盤調査にもとづいて基礎を設計することが法令上求められているためです。
調査は古い家を解体して更地になってから行うのが基本で、費用は一般的なスクリューウエイト貫入試験(先端がスクリュー状の棒におもりを載せてねじ込み、地盤の硬さを調べる方法)で5〜10万円程度(地盤調査会社の公表例)。結果によっては地盤改良が必要になり、その費用は30万〜200万円程度と幅があります。
建て替えで特に気をつけたいのが、地中に残った古い基礎・杭・浄化槽・井戸などの「地中障害物」です。解体してみて初めて分かることが多く、撤去に追加費用がかかります。予備費をこの項目に厚めに残しておくのが、見積もりを作る側からの正直なおすすめです。
建て替えでも地盤調査は必須。「解体後に分かる出費」に備えて、地盤と地中障害物の予備費を確保しておきましょう。
⑤給排水・ガス・電気の引き直し
古い家の給水管は口径が細かったり、材質が今の基準と違ったりすることがあり、新しい家に合わせて引き込みからやり直す場合があります。下水道が整備される前に建った家では浄化槽を使っていることも多く、浄化槽の撤去と下水道への接続工事が必要です。
ガス管や電気の引込線も同様で、解体時にいったん撤去し、新築時に引き直します。工事中の仮設水道・仮設電気の費用も、見積書の付帯工事や諸経費の中に入ってきます。
自治体によっては、水道の口径を大きくする際に加入金(分担金)がかかることもあります。「前の家で使っていたから、そのまま使える」とは限らないのが配管まわりです。
配管・配線は「引き込みからやり直し」になることを前提に、付帯工事費の内訳を確認しておくと安心です。
⑥古い擁壁・ブロック塀・境界の処理
敷地に高低差があって古い擁壁(土留めの壁)がある場合、今の基準で安全が確認できないと、建て替えにあわせて補強ややり直しを求められることがあります。擁壁のやり直しは建物並みの費用になることもあり、建て替え費用が想定を大きく超える原因のひとつです。
古いブロック塀も、地震時の倒壊リスクから撤去や作り直しを検討したい部分です。また、隣地との境界杭が見当たらない、境界があいまい、という土地は、建て替えを機に測量して境界を確定させる必要が出ることもあります。
こうした項目は、建物の見積もりには含まれません。敷地の周囲(擁壁・塀・境界)は、計画の最初に現地で確認しておくことをおすすめします。
擁壁・塀・境界は「建物の外」の費用。古い家ほど手当てが必要になりやすい項目です。
⑦樹木・物置・残置物の処分
長く住んだ家には、庭木、物置、カーポート、そして家の中の家財がたくさんあります。解体費用の坪単価にこれらは含まれないのが一般的で、庭木の伐採・抜根、物置やカーポートの撤去、残置物(残した家財)の処分は別途費用になります。
特に残置物は、量によって費用が大きく変わります。仮住まいに持っていくもの・処分するもの・新居まで預けるものの仕分けを、解体の見積もり前に進めておくと、解体費の見積もりが正確になります。
親の家を建て替える場合は、思い出の品の整理に時間がかかることも少なくありません。費用だけでなく、時間の余裕も見ておきたいところです。
残置物・庭木・物置は「解体費の外」。仕分けを早く始めるほど、費用も気持ちも軽くなります。
⑧仮住まい中の駐車場とトランクルーム
最後は小さな項目ですが、積み重なると効いてくる費用です。車を2台お持ちのご家庭では、仮住まいに駐車場が1台分しかなく、月極駐車場を別に借りることになりがちです。8〜10か月分となると、無視できない金額になります。
また、仮住まいが今の家より狭い場合は、家財をトランクルームに預ける費用もかかります。こちらも月額×月数で積み上がる費用です。
こうした「月額の小さな費用」は資金計画から漏れやすく、仮住まいの期間が延びるとそのまま増えていきます。
駐車場・トランクルームは「月額×仮住まい月数」。工期が延びた場合も含めて、少し多めに見ておくと安心です。
建て替え費用は30坪でいくら? 出典のある数字だけで組み立てる
建物の建設費は「坪約110〜119万円」が公的データの物差し
「建て替え費用は30坪でいくら?」という検索が多いのですが、正直に言えば、一つの答えはありません。ただ、出どころの確かな物差しは示せます。
住宅金融支援機構の「フラット35利用者調査」で、土地をすでにお持ちの方が建てた注文住宅(建て替えの方も多く含まれる区分です)の建設費を見ると、2024年度は全国平均約3,932万円・約35.8坪で、単純に割ると坪約110万円。2025年度(2026年7月公表)は約4,262万円・118.4㎡(約35.8坪)で、坪約119万円まで上がっています(いずれも説明用に独自に割り算したものです)。
この坪単価を30坪に掛けると、約3,300万〜3,570万円。これが「30坪の建物にかかる建設費(本体+付帯工事)」の、公的データにもとづく物差しです。愛知県を含む東海圏の2024年度平均も約4,017万円・約36.5坪で、坪単価はほぼ全国並みでした。
ただし、あくまでフラット35を利用した方の平均であって、全員の平均ではありません。家の大きさが小さいほど坪単価は上がる傾向もあります。坪単価という数字のクセについては、坪単価と施工面積の記事で詳しく書いていますので、あわせてご覧ください。
30坪の建設費の物差しは「坪約110〜119万円×30坪=約3,300〜3,570万円」(公的調査からの単純計算・2024〜2025年度)。ここが出発点です。
そこに“建て替えだけの費用”を足してみる
出発点が決まったら、ここまで見てきた④の箱を足していきます。表にまとめると、次のようになります。
| 項目 | 目安 | 数字の性格 |
|---|---|---|
| 建設費(30坪) | 約3,300〜3,570万円 | 公的調査の単純計算 |
| 解体(木造30坪) | 90〜150万円 | 情報サイトの目安 |
| 仮住まい・引越し2回 | 家賃×月数+約20万円 | 条件で大差 |
| 滅失・新築の登記 | 報酬+税 | 軽減措置あり |
| 地盤調査 | 5〜10万円 | 改良は別途 |
| 諸費用 | 総額の1割程度 | 別記事参照 |
表を見ると、いちばん大きい建設費は公的データで物差しが作れる一方、それより上の段は「家と土地の条件で変わる」項目ばかりだと分かります。だからこそ、建て替えの見積もりは「建物」「解体」「外構・擁壁」「仮住まい」を別々の項目として出してもらうことが大切です。
合計をここで一つの数字にすることはあえてしません。解体が100万円で済む家もあれば、擁壁のやり直しで数百万円かかる家もあるからです。ネットで見た「建て替え総額○○万円」をそのまま自分の予算にしてしまうのが、いちばん危ない使い方と言えるでしょう。
諸費用の内訳(登記・ローン手数料・保険・税金)は「注文住宅の諸費用はいくら?」という記事で詳しく書いています。建て替えでもそのまま当てはまります。
30坪の建て替え費用は「建設費の物差し+自分の家の条件で決まる④の箱」。項目ごとに見積もりをもらうことが、正しい総額への近道です。
「地域と仕様で変わる」の本当の意味
「費用は地域と仕様で変わります」という一文は、どの記事にも書いてあります。建て替えでは、この一文の中身がもう少し具体的です。
仕様の面では、断熱や耐震の性能、平屋か2階建てか、水回りの数で建設費が動きます。地域の面では、建設費そのものの地域差は小さい一方で、解体費は「道路の広さ」「隣家との距離」「処分場までの距離」といった土地の条件で変わり、仮住まい費は「その地域の家賃」で変わります。つまり建て替えでは、地域差は建物ではなく④の箱に出やすいのです。
さらに、古い家の状態(アスベストの有無、地中障害物、浄化槽)という、建て替えならではの変動要因もあります。え、そんなに読めない費用が多いの?と思われたかもしれません。だからこそ予備費が大切なのです。
建て替えの「地域と仕様で変わる」は、主に解体・仮住まい・古い家の状態に出る。ここに予備費を置くのが建て替えの資金計画のコツです。
建て替えとリフォームどっち? 判断軸は“骨組み・年数・法規”
建て替えを考え始めると、必ず出てくるのが「建て替えとリフォームどっちがいいのか」という疑問です。ここでも「一概にどちらが有利」とは言えませんが、判断の軸ははっきりしています。3つに絞ってお伝えします。
判断軸1 骨組みと基礎の状態(1981年5月以前の家か)
最初に見るべきは、家の骨組み(柱・梁・土台)と基礎の状態です。ひとつの目安が、1981年(昭和56年)5月31日以前に着工した家かどうか。この日を境に建築基準法の耐震基準が大きく変わっており、それ以前の家は「旧耐震」と呼ばれます。小牧市の除却補助の条件がこの日付になっているのも、そのためです。
旧耐震の家をリフォームで住み続けるなら、耐震補強が前提になります。基礎に鉄筋が入っていない、土台が腐っている、シロアリの被害がある。こうした状態だと、直す範囲が構造・基礎にまで広がり、リフォーム費用が新築に近づいていくのが実情です。
逆に、骨組みと基礎がしっかりしていれば、リフォームで性能を上げる余地は十分にあります。まずは専門家に床下・小屋裏・基礎を見てもらうこと。判断はそこからです。
骨組みと基礎が健全かどうかが、建て替えかリフォームかの最初の分かれ道。1981年5月以前の家は特に慎重に見ましょう。
判断軸2 あと何年住むか
次に、その家にあと何年住むかです。断熱リフォームの記事にも書きましたが、10年・20年と長く住むつもりなら、断熱や耐震のリフォームは十分に意味のある投資になります。一方で、数年以内に建て替えや売却を考えているなら、大きなリフォーム費用は回収する前に手放すことになりかねません。
建て替えも同じで、あと10年住むかどうか分からない状況で数千万円をかけるのは、資金計画として重くなります。「誰が・いつまで・どう住むか」を家族で話してから、建て替えかリフォームかを決めるのが順番です。
親の家を引き継ぐ場合は、二世帯で住むのか、将来お子さまが住むのか、といった先の話も関わってきます。10年後・20年後の暮らしを想像することが、結局は費用の判断にもつながります。
「あと何年住むか」が決まると、かけてよい費用の上限が見えてきます。建て替えもリフォームも、住む年数と釣り合う金額かで考えましょう。
判断軸3 建て替えられない土地もある(接道義務・既存不適格)
意外と知られていないのが、建て替えたくてもできない土地があることです。建築基準法では、建物の敷地は幅4m以上の道路に2m以上接していなければならないと定められています(接道義務。2026年9月時点)。古い家の中には、この条件を満たさない敷地に建っているものがあり、その場合は原則として建て替えができません(いわゆる再建築不可)。
また、建てた当時と今とで建ぺい率・容積率・高さ制限などのルールが変わっていて、今の家と同じ大きさには建て替えられないケースもあります(既存不適格)。「今より狭くなるなら、リフォームで残した方がいい」という判断になることもあるわけです。
こうした法規の確認は、建て替えかリフォームかを決める前に、役所や建築会社に調べてもらうのが安全です。解体してから「建てられない」と分かるのが、いちばん避けたい事態です。
接道義務と既存不適格は、建て替えの可否と大きさを左右します。解体を決める前に、必ず法規の調査を。
断熱リフォームは「意味ない」わけではありません
建て替えの記事を読んでいると、「古い家はもうリフォームしても意味がない」という気持ちになりがちです。ですが、それは正確ではありません。
別の記事で詳しく書いたとおり、断熱リフォームは「気密を無視した部分断熱」や「期待値のズレ」があると効果を感じにくくなるだけで、窓から順番に、気密とセットで、家全体を計画して進めれば、きちんと意味があります。骨組みが健全で、長く住むつもりなら、リフォームは立派な選択肢です。
判断の軸を表に整理しておきます。
| 判断軸 | リフォーム寄り | 建て替え寄り |
|---|---|---|
| 骨組み・基礎 | 健全 | 腐朽・無筋・旧耐震 |
| 住む年数 | 長く住む前提 | 世代交代を含む |
| 法規 | 再建築不可 | 建て替え可能 |
| 直す範囲 | 部分・段階的 | 構造まで全部 |
| 仮住まい | 不要な場合も | 8〜10か月 |
建て替えありきで決めない。骨組み・年数・法規の3つの軸で、自分たちの家に合う方を選ぶことが大切です。
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建て替えの流れとスケジュール 解体から引き渡しまで
建て替えの流れ10ステップ
建て替えの流れは、新築の流れの前に「解体まわり」が、後ろに「登記まわり」が足された形です。順番に並べると次のようになります。
| 順番 | やること | ポイント |
|---|---|---|
| 1 | 計画・資金計画 | 残債・法規の確認 |
| 2 | 契約・建築確認申請 | 解体前から並行 |
| 3 | 仮住まいへ引越し | 1回目 |
| 4 | 石綿調査・届出 | 着手7日前まで |
| 5 | 解体工事 | 分別解体 |
| 6 | 滅失登記 | 1か月以内 |
| 7 | 地盤調査・改良 | 更地になってから |
| 8 | 地鎮祭・着工〜上棟 | 新築と同じ |
| 9 | 完成・表題登記 | 1か月以内 |
| 10 | 新居へ引越し | 2回目・入居 |
ポイントは、解体を始める前に、新しい家の設計と契約、建築確認申請をある程度進めておくことです。更地にしてから設計を始めると、仮住まいの期間がその分だけ延びてしまいます。
また、表の6と9のように、登記には「1か月以内」という期限があります。建築会社や土地家屋調査士さんが案内してくれるのが普通ですが、施主さん自身も頭に入れておくと安心です。
建て替えの流れは「解体まわりが前に、登記まわりが後ろに足される」。設計・契約を解体前に済ませるのが、仮住まいを延ばさないコツです。
仮住まい期間の目安と長引く要因
仮住まいの期間は、前述のとおり8〜10か月程度が一般的な目安です。解体そのものより、その前後の手続きや、更地になってからの地盤調査・改良、建築確認の手続きに日数がかかります。
長引く要因としては、アスベストが見つかって除去工事が加わる、地中障害物が出て撤去に時間がかかる、地盤改良が必要になる、天候不良で工事が止まる、といったものがあります。どれも「解体してみないと分からない」ものばかりです。
仮住まいの契約を工期ぴったりで結んでしまうと、延びたときに次の住まいを探すはめになりかねません。期間に1〜2か月の余裕を持たせるか、延長できる契約にしておくことをおすすめします。
仮住まいは「8〜10か月+余裕」で計画を。延びる要因の多くは、解体後に初めて分かるものです。
1月1日をまたぐなら固定資産税の“建て替え特例”を忘れずに
建て替えの工程が年末年始をまたぐ場合、知っておきたい税金の話があります。住宅が建っている土地は、固定資産税が軽くなる「住宅用地の特例」を受けていますが、この特例は毎年1月1日時点の状態で判定されます。1月1日に家が建っていない(解体済み・建設中)と、原則として住宅用地とは扱われず、土地の固定資産税が上がってしまう可能性があるのです。
ただし、建て替えのために建設中の土地で一定の要件を満たすと認められる場合は、申告書を提出することで住宅用地として扱われます(名古屋市の案内、2026年9月確認)。前年も住宅用地だったこと、1月1日時点で着工していること、翌年の1月1日までに完成すること、同じ敷地・同じ所有者であること、といった要件が一般に挙げられています。
ここで大事なのは「申告が必要」という点です。黙っていても適用されるわけではありません。要件や申告の期限は自治体によって案内が異なりますので、工程が1月1日をまたぎそうなら、早めに市役所の固定資産税の窓口に確認してください。
1月1日に更地・建設中なら固定資産税に注意。建て替えの特例は「要件+申告」で受けられます。
建て替えで使える制度(2026年9月時点)
最後に、2026年9月時点で確認できた、建て替えに関わる制度をご紹介します。補助制度は年度ごとに内容が変わり、予算の上限に達すると締め切られることもあります。実際に計画を進める際は、必ず最新の情報をご確認ください。
国の新築支援「みらいエコ住宅2026事業」と建て替えの除却加算
国の2026年度の新築向け支援が「みらいエコ住宅2026事業」です。省エネ性能の高い住宅を建てると補助が受けられる制度で、名古屋市・小牧市が属する6地域では、GX志向型住宅で110万円(全世帯)、長期優良住宅で75万円、ZEH水準住宅で35万円(長期優良・ZEH水準は18歳未満のお子さまがいる子育て世帯、または夫婦のどちらかが39歳以下の若者夫婦世帯が対象)とされています(公式サイト、2026年9月26日確認)。
建て替えの方に関係するのが、古い家を除却(解体)して建てる場合の加算です。長期優良住宅・ZEH水準住宅では、要件を満たす除却を伴うと20万円が加算されます(GX志向型住宅には加算はありません)。
要件として、2025年11月28日以降に基礎工事に着手していること、2027年1月31日までに一定の出来高で完了報告をすること、そして申請は登録された建築会社(みらいエコ住宅事業者)が行うことになっています。施主さんが自分で申請する制度ではないため、建築会社が登録事業者かどうかを契約前に確認しておきましょう。
2026年度の国の新築支援は、建て替え(除却あり)で長期優良・ZEH水準に20万円の加算。制度は年度で変わるので、公式サイトで最新を確認してください。
小牧市の「木造住宅への除却工事費補助制度」
小牧市には、古い木造住宅を解体する際に使える「木造住宅への除却工事費補助制度」があります。対象は、1981年(昭和56年)5月31日以前に着工した木造住宅で、市が行う無料の耐震診断で「倒壊する可能性が高い」または「倒壊する可能性がある」(判定値1.0未満)と判定されたもの。補助額は1棟あたり上限20万円です(小牧市、2026年4月1日更新・2026年9月26日確認)。
注意したいのは、解体工事の契約を結ぶ前に申請が必要な点です。交付決定の前に契約した工事は対象外になります。先着順で、申し込みが多い年度は翌年度以降の受付になることもあります。
つまり、「解体業者と契約してから補助金を探す」では間に合いません。建て替えを考え始めた段階で、まず市の耐震診断を受ける。この順番が大切です。他の市町村にも同様の制度がある場合が多いので、お住まいの自治体で確認してみてください。
旧耐震の木造住宅の解体には、自治体の除却補助が使えることがあります。ポイントは「耐震診断→申請→契約」の順番です。
登記の税金の軽減は建て替えでも使える
新築の登記にかかる登録免許税の軽減(所有権保存登記0.15%、抵当権設定登記0.1%など)は、建て替えでもそのまま使えます。適用期限は2027年3月31日です(国土交通省、2026年8月31日確認)。滅失登記には、そもそも登録免許税がかかりません。
工事請負契約書の印紙税の軽減も同じ期限で続いています。細かな内容は諸費用の記事に譲りますが、期限のある軽減措置は、引き渡し時期が期限をまたがないかを一度確認しておくと安心です。
登記・印紙の軽減措置は2027年3月末が期限(2026年9月時点)。建て替えのスケジュールと照らし合わせておきましょう。
Q&A|家の建て替え費用でよくある質問
Q1. 解体費用は建築会社の見積もりに含まれていますか?
会社によって異なります。建築会社が解体まで一括で請け負う場合もあれば、施主さんが解体業者に直接依頼する場合もあります。「解体費は見積もりに含まれていますか」「残置物や外構の撤去はどこまで入っていますか」を最初に確認してください。一括の場合も、解体・地盤・外構が別項目で示されているかを見ておくと、後からの追加を防ぎやすくなります。
Q2. 仮住まいは実家でもいいのでしょうか?
もちろん構いません。仮住まいの費用を最も抑えられる方法です。ただし、8〜10か月程度と期間が長いこと、家財の置き場所(トランクルーム)や車の駐車場が別に必要になりやすいことは考えておきましょう。費用ゼロに見えても、家財の預け先と通勤・通学の負担まで含めて判断することが大切です。
Q3. 建て替え費用は住宅ローンに組めますか?
建物の建築費は当然対象ですし、解体費や地盤改良費、諸費用まで借入対象にできる商品もあります。今の家のローンが残っている場合は、残債と一本化する「建て替えローン」という選択肢もあります。ただし借入額が増えれば返済も増えます。「借りられるか」ではなく「無理なく返せるか」を基準に、金融機関に早めに相談してください。
Q4. 建て替えとリフォーム、結局どっちが安いですか?
工事の範囲次第です。部分的なリフォームなら当然リフォームの方が安く済みますが、基礎・構造・断熱・水回りまで全部となると新築に近づいていきます。「いくらか」の前に、骨組みの状態・住む年数・法規の3つの軸で「どちらが自分たちの家に合うか」を考えることをおすすめします。
Q5. 建て替えの流れで、最初にやることは何ですか?
「今の家の状態と土地の法規を調べること」と「資金計画」の2つです。ローンの残債と名義、接道や建ぺい率などの法規、旧耐震かどうか。ここが分かってはじめて、建て替えかリフォームか、いくらまでかけられるかが見えてきます。解体業者を探すのは、その後で十分間に合います。
まとめ
家の建て替え費用は、新築と共通の「本体工事費・付帯工事費・諸費用」の3つの箱に、「建て替えだけの費用」という4つ目の箱が乗ったものです。解体、仮住まいと2回の引越し、滅失登記と新築の登記、更地になってからの地盤調査、配管の引き直し、擁壁や塀、残置物、仮住まい中の駐車場。ひとつひとつは小さくても、合わせれば数百万円規模になります。
国の最新調査では、建て替え世帯の建築資金は中央値で約4,000万円(令和7年度)。30坪の建物の建設費は、公的データの単純計算で坪約110〜119万円が物差しになりますが、その上に乗る④の箱は家と土地の条件で大きく変わります。だからこそ、「建物」「解体」「外構・擁壁」「仮住まい」を分けて見積もりをもらい、予備費を厚めに持つことが大切です。
建て替えとリフォームどっちにするかは、骨組みと基礎の状態、あと何年住むか、そして法規の3つの軸で考える。断熱リフォームは決して「意味ない」ものではなく、骨組みが健全で長く住むなら立派な選択肢です。
補助制度や税の軽減、固定資産税の建て替え特例など、この記事で触れた制度は2026年9月時点の情報です。年度で変わるものばかりですので、実際に計画を進める際は必ず最新の情報をご確認ください。
長年ご家族を守ってきた家を、感謝とともに次の家へつなぐのが建て替えです。費用の全体像を知ったうえで無理のない資金計画を立て、10年後・20年後も家族全員が「建て替えてよかった」と感じられる住まいづくりを目指しましょう。








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