同時給排(どうじきゅうはい)レンジフードとは、料理中の煙を外に出す「排気」と、新しい空気を取り込む「給気」を1台で同時におこなえるレンジフードのことです。正式には「同時給排気型レンジフード」と呼ばれ、エコやSDGsの観点からも注目されており、とくに高気密高断熱住宅で採用する方が増えています。
マイホームの計画中に「同時給排レンジフードって、普通の換気扇と何が違うの?」と疑問に感じている方も多いのではないでしょうか。実は、同時給排レンジフードはすべての家に合うわけではありません。向いていない家に設置してしまうとデメリットが生じる可能性があるため、設備の特徴をしっかり理解することが大切です。
この記事では、同時給排レンジフードの仕組みや一般的な排気型との違い、メリット・デメリット、高気密住宅に向いている理由をわかりやすく解説します。これから家づくりをする方は、ぜひ最後までご覧ください。
※この記事は2026年9月に内容を加筆・更新しました。
同時給排レンジフードとは?

同時給排レンジフード(同時給排気型レンジフード)は、排気と給気の2つの入口を持ち、室内の空気を外に出しながら、新しい空気を取り入れることができる設備です。
料理中に出る煙や匂いをしっかり排出しつつ、屋外から新鮮な空気も取り入れます。稼働するとフタが開閉して室内の空気を外に押し出すと同時に、給気口から外の空気が入ってくる仕組みです。この空気の流れによって室内の空気が循環し、快適な環境が保たれます。
コンロやIHを使うときには熱が発生するため、外から入る少し冷たい空気が混ざっても室内の温度が急に下がることはなく、料理中に寒く感じにくいのが特徴です。隙間の少ない高気密高断熱住宅とはとくに相性が良く、キッチンの換気計画の選択肢として押さえておきたい設備と言えるでしょう。
レンジフードの給排気の種類3つ
キッチンに採用されている換気扇(レンジフード)には、大きく分けて次の3種類があります。
- 一般排気型
- 同時給排気型
- 強制同時給排気型
それぞれの特徴と違いについて、ご紹介していきます。
一般排気型
一般排気型レンジフードは、ファンを使って室内の煙や臭いを外に排出するタイプのレンジフードです。
3つの給排気システムの中でも最も一般的で、シンプルで使いやすいのが特徴です。一般排気型は、室内の空気を外に出すだけで、外から新しい空気を取り入れることはありません。
そのため、外から新鮮な空気を入れたい場合は、キッチンの近くに給気口を設ける必要があります。
同時給排気型
同時給排気型レンジフードは、ファンを使って室内の煙や臭いを外に排出しつつ、レンジフード本体にある給気口から新しい空気を取り入れることができる設備です。この記事で紹介している「同時給排レンジフード」は、この同時給排気型を短縮した呼び方です。
換気をしっかりおこなうためには、排気と同じ量の新鮮な空気が必要です。しかし、気密性の高い住宅では自然な空気の取り入れが難しく、「吸い込みが悪い」「異音がする」「扉が開けにくくなる」といった問題が起きることがあります。
その点、同時給排気型は排気と一緒に給気口が開くため、必要な空気をしっかり確保できるのです。
強制同時給排気型
強制同時給排気型レンジフードは、排気だけでなく給気にもファンを使って、空気を強制的に入れたり出したりする設備です。
とくに、タワーマンションなどの高層住宅に適しています。高層住宅では、排気だけでは室内の空気量が不足し、負圧(室内の気圧が外より低くなる状態)が発生する可能性があるからです。
強制同時給排気型は排気と同量の外気を取り入れることで、室内の空気バランスを保ち、快適な空間を維持することができますよ。
同時給排レンジフードのメリット4つ

同時給排レンジフードを取り入れると、次の4つのメリットがあります。
- 家の中で負圧が発生しにくい
- 料理をしていても足元が冷えにくい
- 隙間風が入りにくい
- 煙の排出効率が高い
「エアコンをつけているのに、換気なんてもったいない、、、」と感じる方もいるかもしれませんが、実は換気には空気をクリーンにする重要な役割もあるのです。それぞれのメリットを順番に見ていきましょう。
家の中で負圧が発生しにくい
同時給排気型のレンジフードを使うと、家の中で負圧が起こりにくくなります。
普通のレンジフードは空気を外に出すだけなので、室内の空気が減って負圧が生じ、以下のような現象が起きてしまうのです。
- 玄関ドアが開けにくくなる
- 窓から変な音が聞こえる
- キッチンの排水溝から異音がする
- 二酸化炭素が増えて頭がぼんやりする
料理をしていても足元が冷えにくい
同時給排気型レンジフードを使用すると、料理中でも足元が冷えにくくなります。
一般的な換気計画では、外から冷たい空気が給気口を通って直接入ってくるため、とくに冬場は足元が寒く感じることがあるでしょう。しかし、同時給排気型は排気と一緒に頭上のレンジフードから新しい空気を取り入れる仕組みになっているため、足元からの冷たい風を防げます。
室内の温度が急に下がる心配も少なく、寒い季節でも快適に料理をすることができます。
隙間風が入りにくい
一般的な排気型レンジフードは、外の空気を取り入れないまま室内の空気を減らしてしまうため、隙間から外気が入り込みやすいというデメリットがあります。
しかし、同時給排気型は煙を排出しながら同時に新しい空気を取り入れる仕組みなので、室内の空気が安定し、隙間風が入りにくくなります。とくに、冬場や風の強い日に効果が実感できるでしょう。
隙間風を防ぐことで室内の温度を快適に保つことができ、エネルギーの無駄遣いも減らすことができます。
煙の排出効率が高い
同時給排気型レンジフードは、煙を効率よく外に排出できるのが大きな特徴です。
煙を外に出すだけでなく新しい空気も同時に取り入れるため、調理中に出る煙や臭いをすばやく外に逃がし、キッチンを快適に保ちます。油の匂いが部屋に残りにくく、いつでも気持ちよく料理ができるでしょう。
さらに、煙がスムーズに排出されるのでフィルターが詰まりにくくなり、掃除が楽になるのも嬉しいポイントです。
同時給排レンジフードのデメリット3つ

同時給排レンジフードには室内の空気を入れ替えてくれるメリットがある一方、デメリットも存在します。具体的には、以下のような点です。
- 設置場所によっては結露の原因になる
- 一般的なものよりコストが高い
- 稼働音が気になることもある
デメリットをしっかり理解した上で、導入を検討しましょう。
設置場所によっては結露の原因になる
同時給排気型レンジフードを壁から離れた場所に設置すると、排気や給気のダクトが長くなります。
長いダクトに冷たい空気が流れ込み、天井裏の高温多湿な空気と接触することで結露が生じる可能性があります。たとえば、1階の天井裏の温度が25℃・湿度が30%の場合、露点温度(結露が始まる温度)は6℃です。
この時、外気が6℃であれば、理論的にはダクト内で結露が発生することになります。結露を防ぐためには断熱材の施工やダクトの交換といった対策が必要で、別途費用がかかってしまいます。
また、階間エアコン(1階と2階の間の空間に設置するエアコン)を使用している場合や、長時間換気扇を使用する場合も、とくに結露に注意した方が良いでしょう。同時給排気型を設置する際には、結露対策を十分に考慮して設置場所を検討することが大切です。
一般的なものよりコストが高い
同時給排気型レンジフードは、一般的なものと比べて価格が高く、施工にかかるコストも増加します。
もしコスト面で厳しいと感じる場合は、「差圧レジスター(室内が負圧になると自動で開いて外気を取り入れる給気口)を取り付ける」という対策が有効です。ただし、差圧レジスターの取り付けも無料ではないため、事前に費用を確認しておきましょう。
稼働音が気になることもある
同時給排気型レンジフードは給気と排気をしっかりおこなうため、稼働音が気になることがあります。
「静かに過ごしたい」と考えている方には、ストレスになることもあるでしょう。しかし、実際に使ってみると「それほど気にならなかった」という声も多く、過度に心配しなくても良いかもしれません。
また、メーカーやタイプによって稼働音の大きさは異なります。一般的なレンジフードでも一定の音は発生しますので、各メーカーの公式サイトで弱運転時の騒音レベルを確認することをおすすめします。
※騒音レベルの数値: 各メーカーのサイトでは、騒音の大きさがデシベル(dB)という単位で示されています。通常、レンジフードを使っているときの一番大きな音や一番小さな音が記載されています。
上級モデルは運転音が低めに設計されていますが、その分価格が高くなることが多いです。
同時給排レンジフードを設置する際の注意点5つ

最近、高層マンションや高気密高断熱住宅の人気が高まっています。
こうした家のキッチンの換気には同時給排レンジフードがおすすめですが、設置するときにはいくつかの注意点があります。以下の内容をぜひチェックしてみてください。
1. 設置位置の確認
同時給排気型レンジフードは排気と給気を同時におこないますが、設置位置が重要です。
壁から離れた場所に設置するとダクトが長くなり、冷たい空気が流入することで結露が発生する可能性があります。
できるだけ短いダクトで設置できる位置を選ぶことがおすすめです。
2. メンテナンスの重要性
同時給排気型は、給気と排気の機能を兼ね備えています。そのため、フィルターやダクトの定期的な清掃が必要です。
定期的なメンテナンスを怠ると性能が低下し、効果的な換気ができなくなる可能性があります。
3. コストを考慮する
同時給排気型レンジフードは、一般的なものに比べて初期費用が高い傾向にあります。
施工費用も加わるため、予算に対して慎重に検討する必要があります。
また、設置後の維持管理コストも考慮しておきましょう。
4. 音の影響を理解する
給気と排気を同時におこなうため、稼働音が気になることがあります。
静かな環境を求める方にはストレスになるかもしれませんが、実際に使ってみると「それほど気にならない」と感じる方も多いです。
5. 環境に応じた設計
設置する住宅の風向きや周辺環境によって、換気の効果が変わることがあります。
とくに風の強い地域では、排気がスムーズにおこなえず、換気が不足することも。周囲の環境を考慮して、設計を検討することが大切です。
隔離距離が鍵!同時給排レンジフードを上手に活用する方法

普通のレンジフードは、排気用のダクトを通じて室内の空気を外に排出します。
一方、同時給排レンジフードは、排気と同時に新鮮な空気を取り込む給気ダクトを本体上部に備えており、足元から冷たい空気が入る心配が少なく、室内の冷えを防ぎます。火を使う調理中は熱が発生するため、暖房を使用していても過度に室内が冷えることはありません。
ただし、設置する際には、外壁に付く給気口と排気口(外部フード)同士の距離に注意が必要です。給気と排気のダクトが近すぎると、調理中の匂いや汚れた排気が再び室内に戻る可能性があるからです。
そのため、設置時には十分な隔離距離(給気口と排気口の間に確保する距離)を押さえておきましょう。
同時給排レンジフードが向いている住宅・向いていない住宅

同時給排レンジフードは給気と排気が同時にできる設備で、省エネやSDGsの観点からも注目されています。とくに向いているのは、高層マンションや高気密高断熱住宅です。
高気密な家は隙間が少ないぶん、排気だけのレンジフードでは空気の取り入れ口が足りず、負圧の影響が出やすくなります。だからこそ、給気もセットでおこなえる同時給排レンジフードとの相性が良いのです。そもそも高気密の家とはどんな家なのかは、こちらの記事で詳しく解説しています。
一方で、向いていない住宅もあります。たとえば、次のような住宅では湿度管理が難しく、効果を十分に発揮できないことがあるでしょう。
- 古い住宅や低層住宅
- 狭いキッチン
- 換気システムが整っていない住宅
古い住宅や低層住宅は、もともと隙間からの自然な給気が多く、負圧の困りごとが起きにくい場合があります。また、狭いキッチンでは、ダクトや本体のスペース確保が難しいことも。換気システムが整っていない住宅では、家全体の空気の流れが計画されていないため、レンジフードだけを高性能にしても効果を発揮しきれない可能性があります。
また、レンジフードはあくまで家全体の換気計画の一部です。住宅全体の空気を入れ替える24時間換気システムとのバランスも大切なので、換気と冬の寒さの関係はこちらの記事も参考にしてください。
同時給排レンジフードに関するよくある質問
最後に、同時給排レンジフードについてよくいただく質問を4つまとめました。
Q.同時給排レンジフードとは何ですか?
料理中の煙を外に出す「排気」と、新しい空気を取り込む「給気」を1台で同時におこなえるレンジフードのことです。正式には「同時給排気型レンジフード」と呼ばれます。負圧が起きにくいため、高気密住宅を中心に採用が増えています。
Q.普通のレンジフードとの違いは何ですか?
一般的な排気型レンジフードが室内の空気を外に出すだけなのに対し、同時給排レンジフードは本体に給気口があり、排気と同時に新しい空気を取り入れます。玄関ドアが開けにくくなるような負圧が起きにくい点が大きな違いです。
Q.高気密高断熱住宅には必須ですか?
必須ではありませんが、相性の良い組み合わせです。差圧レジスターを取り付けるなどの代替策もあるため、設計の段階で家全体の換気計画と合わせて検討するのがおすすめです。
Q.同時給排レンジフードは後付けできますか?
給気用のダクトや外壁の工事が絡むため、新築やリフォームの計画時に組み込むのが理想です。後付けできるかどうかは住宅の構造や設置場所によって変わるので、検討する場合は施工会社に相談してみてください。
まとめ
同時給排レンジフードは、排気と給気を1台でおこない、負圧や料理中の足元の冷えを防いでくれる設備です。設置にかかるコストは一般的なレンジフードより高くなりますが、長期的には快適で健康的な環境を維持するための価値ある投資と考えられます。
一方で、結露や稼働音といったデメリット、設置位置や隔離距離といった注意点もあるため、住宅の特徴をしっかり把握した上で、メリット・デメリットを理解して検討することが重要です。今回の記事を参考に、取り付けの目的や理想の家について明確にしながら、家づくりを進めてみてくださいね。
なお、愛知県小牧市のモデルハウスでは、高気密高断熱の家の換気計画を実際にご覧いただけます。同時給排の考え方も含めて、空気の流れを体感してみたい方はこちらからどうぞ。
ブログに書けない換気や設備の裏話は、普段メルマガ形式で配信しています↓


家づくりの前に知ってほしい6つのこと。
ローンを借りる8割は知らずに損してる?
不動産屋に行く前に知ってほしい5つのこと。