「断熱材はどれを選べばいいの?」と調べ始めると、カタログや住宅会社の説明で必ず登場するのが「熱伝導率」という数値です。ところが、この熱伝導率だけを見比べて断熱材を選ぶと、思わぬ落とし穴にはまってしまう可能性があります。
というのも、熱伝導率はあくまで「材料そのものの性能」であって、実際の壁の中でどれだけ熱を通しにくいかは、断熱材の「厚み」まで含めて計算しないと分からないからです。
そこで登場するのが、この記事の主役である「熱抵抗値(ねつていこうち)」です。私共も、断熱材を選ぶときはこの熱抵抗値を基準に考えています。
この記事では、熱抵抗値とは何かという基本から、計算方法(求め方)、実際の断熱材を使った計算例、主な断熱材の数値の比較表まで、工務店の目線で分かりやすく解説します。断熱材選びで後悔しないために、ぜひ最後までご覧ください。
※この記事は2026年9月に内容を加筆・更新しました。
熱抵抗値とは?熱の通しにくさを表す数値(R値)
熱抵抗値とは、読んで字のごとく「熱」に「抵抗」する「値」のことです。「熱に抵抗する」=「熱を通しにくい」ということなので、熱抵抗値は大きいほど熱を通しにくい、つまり断熱性能が高いことを表します。
単位は「㎡・K/W」です。記号だけ見ると難しそうですが、「壁1㎡あたり、どれだけ熱の流れをせき止められるか」を表す数値、というイメージで大丈夫です。
また、熱抵抗値は「R値」と呼ばれることもあります。RはResistance(抵抗)の頭文字で、高断熱住宅の解説や海外の資料ではR値の表記がよく使われています。熱抵抗値もR値も、呼び方が違うだけで同じものと覚えておいてください。
熱伝導率との違い
熱抵抗値とセットで必ず出てくるのが「熱伝導率」です。熱伝導率は「熱の伝わりやすさ」を表す数値で、単位はW/m・K。熱抵抗値とは逆に、熱伝導率は値が小さいほど熱が伝わりにくい=断熱材として優秀、という関係になります。
2つの違いを一言でいうと、熱伝導率は「材料そのものの性質」、熱抵抗値は「厚みまで含めた実力」です。
例えるなら、熱伝導率は「服の生地の性能」、熱抵抗値は「その生地を何枚重ね着したか」まで含めた暖かさです。どれだけ高級な生地でも、ペラペラの1枚だけでは真冬は寒いですよね。断熱材も同じで、材料の性能(熱伝導率)と厚みの掛け合わせで、初めて本当の「熱の通しにくさ」が決まります。
熱伝導率は各メーカーが製品ごとに公表しているので、断熱材の名前で検索すればカタログや公式サイトで確認できます。「熱伝導率」と「厚み」の2つさえ分かれば、次の章の計算式で熱抵抗値を自分で計算できます。
熱抵抗値の計算方法(求め方)
それでは本題の、熱抵抗値の計算方法です。計算式は次の1行だけです。
熱抵抗値(㎡・K/W)=厚さ(m)÷熱伝導率(W/m・K)
割り算1回だけなので、電卓があれば誰でも計算できます。ただし、1つだけ注意点があります。
厚さの単位は「mm」ではなく「m」に直してから計算します。断熱材の厚みはカタログに「60mm」「105mm」のようにmm表記で書かれていることがほとんどなので、60mm→0.060m、120mm→0.120mと読み替えてから式に当てはめてください。ここを間違えると計算結果が1,000倍ずれてしまうので、初めて計算する方が一番つまずきやすいポイントです。
それでは、実際の断熱材の数値を使って計算例を2つ見てみましょう。
計算例①ネオマフォーム60mmの場合
1つ目の計算例は、フェノールフォーム系断熱材のネオマフォームです。メーカー公表の熱伝導率は0.020W/m・Kと、断熱材の中でもトップクラスに小さい(=熱を伝えにくい)数値です(2026年9月時点)。
このネオマフォームを厚さ60mm(=0.060m)使った場合の熱抵抗値を計算すると、次のようになります。
0.060÷0.020=3.0㎡・K/W
計算例②高性能グラスウール16K・120mmの場合
2つ目の計算例は、多くの木造住宅で使われている高性能グラスウール16Kです。「16K」は密度を表す表記で、熱伝導率0.038W/m・Kの製品が広く使われています(2026年9月時点)。
熱伝導率だけを比べると、0.020のネオマフォームに対して0.038ですから、高性能グラスウール16Kの方が「熱を伝えやすい」材料ということになります。では、これを厚さ120mm(=0.120m)使った場合の熱抵抗値を計算してみます。
0.120÷0.038≒3.16㎡・K/W
2つの計算例を比較してわかること
2つの計算結果を並べてみましょう。
・ネオマフォーム60mm → 熱抵抗値3.0㎡・K/W
・高性能グラスウール16K 120mm → 熱抵抗値約3.16㎡・K/W
熱伝導率では負けていたはずの高性能グラスウール16Kが、厚みのおかげで熱抵抗値では逆転しました。え、逆転しちゃうの?と思いません?

上の図は、ネオマフォーム60mmと高性能グラスウール16K・120mmを使った壁構成のイメージです。同じ壁でも、断熱材の種類や工法によって入れられる厚みは変わります。もちろん、ネオマフォームの厚みを増やせばこの結果は簡単に覆りますので、どちらの製品が優れているという話ではありません。
ここでお伝えしたいのは、断熱材は「熱伝導率×厚み」、つまり熱抵抗値で計算して比較しないと、本当の実力は分からないということです。
「熱伝導率の小さい高性能な断熱材です」という説明だけで安心してしまうと、実は厚みが薄くて、熱抵抗値で見るとそれほどでもなかった、というケースを見逃してしまう可能性があります。断熱材の説明を聞くときは、「その断熱材を何mm入れるのですか?」までセットで確認することをおすすめします。
断熱材を重ねた場合は足し算で計算できる
実際の壁は、柱の間に入れる断熱材(充填断熱)の外側にもう1枚断熱材を張る(付加断熱)など、複数の層で作られることもあります。
このように材料を重ねた場合は、各層の熱抵抗値を計算して足し算するだけです。例えば、熱抵抗値2.0の断熱材と1.0の断熱材を重ねれば、壁全体では2.0+1.0=3.0となります。
厳密には、壁の中の空気の層や石こうボードなども熱の通しにくさに少し関係しますが、家づくりの検討段階では「断熱材の熱抵抗値は足し算できる」と覚えておけば十分役に立ちます。
主な断熱材の熱伝導率と熱抵抗値の目安(比較表)
ここで、住宅でよく使われる断熱材の熱伝導率と、仮に同じ厚さ100mmで使った場合の熱抵抗値の計算結果を表で比較してみます。
| 断熱材 | 種類 | 熱伝導率 | 100mm時の熱抵抗値 |
|---|---|---|---|
| ネオマフォーム | フェノールフォーム | 0.020 | 5.00 |
| カネライトフォームスーパーEⅢ | 押出法ポリスチレン | 0.028 | 3.57 |
| アクアフォーム | 吹付け硬質ウレタン | 0.033 | 3.03 |
| アイシネン | 吹付け硬質ウレタン | 0.035 | 2.86 |
| 高性能グラスウール16K | グラスウール | 0.038 | 2.63 |
| セルロースファイバー | 木質繊維系 | 0.040 | 2.50 |
※熱伝導率の単位はW/m・K、熱抵抗値の単位は㎡・K/W。各メーカー・業界団体の公表値をもとにした目安です(2026年9月時点)。同じ名前の断熱材でも、製品の種類・密度によって数値は異なります。100mm時の熱抵抗値は0.1÷熱伝導率の計算値(小数第3位を四捨五入)です。
同じ厚さ100mmで比べれば、熱伝導率の小さい断熱材ほど熱抵抗値が大きくなります。ただし、実際の家では断熱材ごとに施工できる厚みも価格も違うため、100mmでの比較はあくまで目安です。大切なのは、「実際にその家に入る厚み」で計算した熱抵抗値で比較することです。
また、高性能グラスウールには熱伝導率0.032W/m・K程度のさらに高性能な品種も登場しています(2026年9月時点)。同じ名前の断熱材でも製品によって数値が変わるので、検討中の家に使われる製品名と厚みまで確認できると安心です。
表に出てきた断熱材の仲間では、押出法ポリスチレンフォームの代表格スタイロフォームと、木質繊維系のセルロースファイバーについて、それぞれ詳しく解説した記事があります。
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熱抵抗値はどれくらい必要?
「計算方法は分かったけれど、結局、熱抵抗値はいくつあれば十分なの?」という疑問が出てくるのではないでしょうか。実はこれ、一言で答えるのが難しい質問です。
なぜなら、必要な断熱の量は条件によって変わるからです。国の省エネ基準では、全国を気候に応じて1〜8の「地域区分」に分けて基準を定めており、名古屋・愛知の平野部の多くは5〜6地域に当たります(2026年9月時点)。同じ家でも北海道と名古屋では必要な断熱の量が違いますし、屋根・壁・床といった部位や、断熱材の入れ方(工法)によっても変わってきます。
さらに今の家づくりでは、部位ごとの熱抵抗値そのものよりも、UA値(外皮平均熱貫流率=家全体からどれだけ熱が逃げるかを平均した数値)で断熱性能を評価するのが主流です。断熱等級などの制度も、このUA値をもとに定められています。
※省エネ基準や地域区分は見直されることがあります。最新の情報は国土交通省など公的機関の発表をご確認ください。
そのため現実的なおすすめは、検討している住宅会社に「壁・天井・床には、どの断熱材を何mmの厚みで入れていますか?」と聞いてみることです。熱伝導率と厚みさえ分かれば、この記事の計算式で熱抵抗値を計算して、会社ごとの断熱仕様を同じ土俵で比較できます。
私共が高性能グラスウールを使っている理由
ちなみに私共は、壁の断熱材として高性能グラスウールを使っています。熱伝導率だけを見ればもっと優秀な断熱材もありますが、厚みをしっかり確保して熱抵抗値を積み上げられること、そして気密や施工の品質を安定させやすいことが大きな理由です。
断熱材は「何を使うか」と同じくらい「どう施工するか」が大切で、隙間だらけの施工では、計算上の熱抵抗値どおりの性能は出ません。あとは正直に言うと、大人の事情も少々あります。(このあたりの本音は、見学会などでこっそりお話ししています)
断熱材の性能を活かすも殺すも気密しだい、という話はこちらの記事で詳しく解説しています。
熱抵抗値に関するよくある質問
最後に、熱抵抗値についてよくいただく質問にお答えします。
Q.熱抵抗値とR値は同じものですか?
A.同じものです。熱抵抗値を英語にしたときのResistance(抵抗)の頭文字を取って、R値と呼ばれています。住宅会社や資料によって呼び方が変わるだけで、意味も単位(㎡・K/W)も同じなので、そのまま比較して問題ありません。
Q.熱抵抗値は高いほど良いのですか?
A.断熱性能だけを見れば、熱抵抗値は高いほど熱を通しにくくなります。ただし、熱抵抗値を上げるには断熱材を厚くする必要があり、壁や屋根の厚みには限界がありますし、費用も上がります。建築費と10年後・20年後の光熱費のバランスを見ながら、無理のない範囲で高めていくのが現実的な考え方です。
Q.熱伝導率と熱抵抗値、どちらを見て断熱材を選べばいいですか?
A.最終的な判断は、厚みまで含めた熱抵抗値で行うことをおすすめします。熱伝導率は材料同士を比べる入口としては便利ですが、この記事の計算例のとおり、厚みしだいで結果は逆転します。「熱伝導率で当たりを付けて、熱抵抗値で決める」という順番で考えると失敗しにくくなります。
Q.カタログに熱抵抗値が書いていないときはどうすればいいですか?
A.熱伝導率と厚みが分かれば、自分で計算できます。計算式は「厚さ(m)÷熱伝導率」です。例えば、熱伝導率0.038W/m・Kの断熱材を105mm(=0.105m)使うなら、0.105÷0.038≒2.76㎡・K/Wという具合です。厚さの単位をmmからmに直すことだけ、忘れないでください。
まとめ:熱伝導率だけで選ばず、熱抵抗値で比較しよう
熱抵抗値についてのポイントを整理します。
・熱抵抗値とは、熱の通しにくさを表す数値(R値とも呼ばれる)で、大きいほど断熱性能が高い
・計算方法は「厚さ(m)÷熱伝導率」の割り算1回だけ(厚さはmmではなくmで)
・熱伝導率は「材料の性質」、熱抵抗値は「厚みまで含めた実力」
・熱伝導率で劣る断熱材でも、厚みしだいで熱抵抗値は逆転する
断熱材の「熱伝導率」だけを見て安心するのではなく、「厚み」を確認したうえで「熱抵抗値」で比較する。この記事で一番お伝えしたかったのは、この1点です。
熱抵抗値の計算は、慣れれば電卓1つで誰でもできます。カタログや見積書の断熱仕様を見ながらご自身で計算してみると、数字の意味が実感でき、住宅会社の説明もぐっと理解しやすくなるはずです。それが、後悔しない断熱材選びの第一歩につながります。
そして、熱抵抗値やUA値はあくまで入口の数字です。その先にあるのは、冬暖かく夏涼しく、光熱費に悩まされずに暮らせる毎日です。数字と体感の両方を確かめながら、10年後・20年後も快適な住まいづくりを目指しましょう。
断熱の数値が実際の暮らしでどう感じられるのかは、モデルハウスで体感してみるのが一番の近道です。
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