新築の打ち合わせでキッチンの話になると、必ずと言っていいほど出てくるのが「コンロはIHとガス、どっちがいいの?」という質問です。「料理はやっぱりガスの炎でしょ」という声もあれば、「掃除がラクなIH一択」という声もあり、ご家庭によって意見が分かれやすいテーマではないでしょうか。
コンロは毎日使う設備であり、一度設置すると10年以上付き合うことになります。しかし、イメージや周りの評判だけで決めてしまうと、暮らし始めてから「こんなはずでは」と感じる原因になりかねません。
この記事では、ガスコンロとIHクッキングヒーターを火力・光熱費・掃除・安全性・停電時・初期費用の6つのポイントで比較し、どんな人がどちらに向いているのかを分かりやすく解説します。ぜひ最後までご覧ください。
⇒新築のキッチンで、ガスコンロとIHのどちらにするか迷っている方
⇒光熱費や安全性など、具体的な違いを知ってから決めたい方
⇒ガスとIHの6つの違い(火力・光熱費・掃除・安全性・停電時・初期費用)
⇒自分たちの暮らしにはどちらが向いているかの判断基準
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IHとガスは何が違う? まずは仕組みから
ガスコンロは「炎」で鍋を加熱する
ガスコンロは、ガスを燃やした炎で鍋を外側から温める、昔ながらの加熱方法です。熱源が炎なので鍋の素材をほとんど選ばず、土鍋も中華鍋もそのまま使えます。
また、鍋を持ち上げて振る「あおり調理」や、海苔をさっと炙るような直火の使い方ができるのもガスならではです。「炎で調理する自由度の高さ」がガスコンロの最大の特徴と言えるでしょう。
IHは「磁力」で鍋そのものを発熱させる
IHクッキングヒーター(IH=電磁誘導加熱)は、天板の下のコイルに電気を流して磁力線を発生させ、鍋底そのものを発熱させる仕組みです。天板は炎を出さず、鍋自体が熱くなるイメージです。
このため熱が逃げにくく、大手電力会社の解説では熱効率は約90%とされています(ガスコンロは約50%)。一方で、磁力で加熱する仕組み上、「IH対応」の鍋しか使えず、鍋を天板から離すと加熱が止まります。仕組みの違いを知っておくと、この後の比較がぐっと理解しやすくなります。
ガスコンロとIHを6つのポイントで比較
①火力・調理のしやすさ
「IHは火力が弱い」と思われがちですが、家庭用IHの高出力モードは炒め物にも十分対応でき、火力そのものはガスに劣らないと言われています。むしろ揚げ物の温度管理やタイマー機能は、IHの得意分野です。
ただし、鍋を振る調理や直火の炙りはガスに軍配が上がります。IHは鍋を天板に密着させて使うのが前提だからです。「火力の強弱」より「調理スタイルに合うかどうか」で比べることが大切です。
②光熱費
大手電力会社の試算(2026年6月時点の単価)によると、1リットルの水を沸かす光熱費はIHが約3.3円、都市ガスのコンロが約3.1円とほぼ互角です。一方、LPガス(プロパンガス)のコンロは約6.0円と差が開きます。
つまり、都市ガスエリアなら光熱費はほぼ引き分け、LPガスエリアならIHが有利になりやすい、というのが実際のところです。また、給湯や暖房をガスでまかなうご家庭では「ガスコンロの方が年間の光熱費はお得」というガス会社の試算もあり、コンロ単体では結論が出ません。電気とガスの基本料金を含めた「家全体の光熱費」で比較することが、後悔しない選び方の第一歩です。
③掃除のしやすさ
IHの天板はフラットなガラス製なので、調理後にさっと拭くだけで掃除が終わります。五徳(ごとく=鍋を載せる金属の脚)がないため、油汚れが焼き付く場所が少ないのです。
ガスコンロは五徳やバーナー周りの掃除が必要ですが、最近の機種は天板のガラストップ化や五徳の小型化が進み、以前よりずいぶん手入れしやすくなっています。掃除のしやすさはIHが一歩リード、ただし最新のガスコンロとの差は縮まりつつあります。
④安全性
総務省消防庁の「令和6年版 消防白書」によると、令和5年中のこんろ火災は2,838件で、出火原因の上位に入っています。このうちガスこんろによるものが2,396件と大半を占めており、炎を扱う以上、消し忘れや着衣着火への注意は欠かせません。
では「火を使わないIHなら絶対安全」かというと、え、IHでも火事になるの??と思われるかもしれませんが、そうとも言い切れません。製品評価技術基盤機構(NITE)は、取扱説明書より少ない油で揚げ物をすると温度センサーが正しく働かず発火する恐れがあるとして、IHコンロの事故に注意を呼びかけています。また、業界団体(日本電機工業会)は、医療用ペースメーカーを使用している方は念のため医師に相談するよう案内しています。火災統計の上ではIHに分がありますが、どちらを選んでも「安全機能を過信しない」ことが大前提です。
⑤停電・災害時
意外と知られていませんが、家庭用ガスコンロの多くは乾電池で点火する仕組みのため、停電中でもガスが来ていれば使えます。ガス会社の公式案内でも、停電時は換気扇が回らないので窓を開けて換気しながら使うよう説明されています。
一方、IHは停電すると使えません。ただし、災害の種類によって電気とガスのどちらが先に止まるか・復旧するかは変わるため、「災害に強いのはどっち」と一概に決めつけない方がよいでしょう。停電時に調理手段を残したいならガス、いずれを選ぶ場合もカセットコンロなどの備えがあると安心です。
⑥初期費用
大手ガス会社の公式サイト(2025年9月時点)では、ビルトインガスコンロの交換費用は工事費込みでおよそ7万〜24万円(グレードにより幅あり)、10万円以内に収まるケースが約半数とされています。一方、ビルトインIHは本体+工事費で10万〜30万円程度が目安という電力会社系の解説があります。
価格帯は重なっていますが、同じグレード感で比べるとIHの方がやや高くつく傾向があります。また、IHには「IH対応の鍋への買い替え費用」がかかる場合もあります。本体価格だけでなく、鍋の買い替えや毎月の光熱費まで含めたトータルで比較しましょう。(価格は変動します。最新の情報をご確認ください)
こんな人はガス向き、こんな人はIH向き
ガスコンロが向いている人
料理が好きで、中華鍋を振ったり直火で炙ったりと炎ならではの調理を楽しみたい方にはガスが向いています。土鍋や使い慣れた鍋をそのまま使い続けたい方にも安心です。
また、給湯や床暖房をガスにする予定のご家庭では、ガスの基本料金をどのみち払うことになるため、コンロもガスでそろえた方が合理的な場合があります。「調理の自由度」と「ガス併用の光熱費バランス」を重視するならガス向きと言えるでしょう。
IHが向いている人
掃除の手間を減らしたい方、夏場のキッチンの暑さを抑えたい方、タイマーや温度管理などの機能を活用したい方にはIHが向いています。天板がフラットなので、調理後の片付けが本当にあっという間です。
また、小さなお子さまや高齢のご家族がいて炎に不安がある方、オール電化(給湯や調理をすべて電気でまかなう住宅)を検討している方にも相性の良い選択です。「手入れのラクさ」と「炎を出さない安心感」を重視するならIH向きです。
新築ならではの「迷ったときの備え」
実は、新築の打ち合わせでこの相談を受けたとき、よくお伝えしているのは「将来の変更に備えた準備をしておく」という考え方です。IHにはガスコンロにない200Vの専用配線が必要なため、入居後にガスからIHへ替えようとすると、電気工事が追加で発生します。
そこで、新築時にIH用の配線やガス配管をあらかじめ用意しておけば、10年後、20年後にコンロを交換するタイミングで、そのときのライフスタイルに合わせて選び直しやすくなります。(ちなみにこの話をすると、ご夫婦で意見が分かれる場面もしばしばですね。。。)新築は「どちらも選べる家」にしておける唯一のチャンスです。迷ったら設計段階で相談してみましょう。
Q&A|IHとガスコンロでよくある質問
IHのデメリットは何ですか?
主なデメリットは、使える鍋が「IH対応」に限られること、鍋を振る調理に向かないこと、停電時に使えないこと、初期費用がやや高めなことの4点です。また、火を使わない安心感から油断しがちですが、少ない油での揚げ物など誤った使い方では発火の恐れもあります。デメリットを知ったうえで選べば、IHは掃除も温度管理もしやすい頼れる設備です。
IHとガスでは光熱費はどちらが安いですか?
大手電力会社の試算(2026年6月時点)では、お湯1リットルを沸かす費用はIH約3.3円・都市ガス約3.1円とほぼ同等で、LPガスは約6.0円と高めです。ただし実際の光熱費は、契約プランや給湯を何でまかなうかで大きく変わります。コンロ単体ではなく、基本料金を含めた家全体で試算してもらうことをおすすめします。
停電のとき、ガスコンロは使えますか?
乾電池で点火するタイプのガスコンロなら、ガスの供給が続いていれば停電中も使えます。ただし停電中は換気扇が動かないため、窓を開けるなど換気を十分に行ってから使うことが大切です。停電時の調理手段として、カセットコンロを備えておくとどちらの家庭でも安心です。
入居後にガスからIHへ変更できますか?
変更は可能ですが、IHには200Vの専用配線が必要なため、電気工事の費用が追加でかかる場合があります。逆にIHからガスへ替える場合も、ガス配管の状況によって工事が必要です。新築時に配線・配管を準備しておくと、将来の選択肢を残せます。
まとめ
ガスコンロとIHクッキングヒーターは、どちらかが一方的に優れているわけではありません。炎の調理を楽しみたい方や停電時の備えを重視する方にはガス、掃除のラクさや炎を出さない安心感を求める方にはIHと、向き不向きは暮らし方によって変わります。
光熱費についても、都市ガスエリアではほぼ互角、LPガスエリアではIH有利という試算がある一方、給湯まで含めるとガスがお得になるケースもあり、「わが家の条件」で比較しないと本当の答えは出ません。※本記事の光熱費・価格は2026年7月確認時点の情報です。料金は変動するため、最新の情報をご確認ください。
コンロは10年以上使い続ける設備です。ショールームで実際に操作してみたり、住宅会社に配線・配管の準備を相談したりしながら、家族全員が「このキッチンにしてよかった」と感じられる住まいづくりを目指しましょう。
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