今年の夏は、水害のニュースが続きました。8月13日からの大雨は、気象庁が「令和8年8月千葉豪雨」と名前を付けるほどの災害となり、亡くなった方や浸水した住宅が多数出ています。8月27日には石川県・富山県に大雨特別警報が出され、9月8日には名古屋でも1時間に100ミリを超える観測史上最大の雨が降り、中心部の道路が冠水しました。
こうしたニュースを見て、「ハザードマップの見方がよく分からない」「色が付いている土地は買わない方がいいの?」と感じている方も多いのではないでしょうか。ハザードマップは開いてみると色も種類も多く、最初はどこを見ればよいのか戸惑うものです。
この記事では、ハザードマップの種類と調べる手順、色の意味、そして「色が付いた土地は買ってはいけないのか」という疑問への考え方を、名古屋・愛知の地形に絡めて分かりやすく解説します。ぜひ最後までご覧ください。
⇒名古屋・愛知で土地を探していて、ハザードマップの見方に自信がない方
⇒候補地に色が付いていて、買ってよいのか迷っている方
⇒ハザードマップの種類、国のサイトで調べる手順、色(浸水深)が家の何階に相当するか
⇒「色が付いた土地」を判断する4つの基準と、現地での確認リスト
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ハザードマップの見方 まずは種類を知ることから
ハザードマップは1枚ではない
「ハザードマップ」と一言で言っても、実は災害の種類ごとに別々の地図が作られています。例えば名古屋市では、洪水・内水氾濫・高潮・地震(液状化を含む)・津波・ため池と、それぞれ別のマップが公表されています(2026年9月時点)。
え、こんなにあるの?と思われるかもしれません。でも「何が起きたときの地図か」が違うだけなので、整理してしまえば難しくありません。
| 種類 | 何が起きたとき | 主な確認先 |
|---|---|---|
| 洪水 | 川があふれる | 市町村・国 |
| 内水 | 下水があふれる | 市町村 |
| 高潮 | 台風で海面上昇 | 市町村・県 |
| 津波 | 地震の津波 | 市町村・県 |
| 土砂災害 | がけ崩れなど | 県 |
| 地震 | 揺れ・液状化 | 市町村・県 |
特に見落としやすいのが「洪水」と「内水」の違いです。洪水は川の水があふれること、内水は下水道や排水路が雨を流しきれずに街の中に水があふれること。洪水のマップに色が付いていなくても、内水のマップでは色が付いている、ということが普通にあります。
ハザードマップは災害の種類ごとに別の地図。特に「洪水」と「内水」は必ず両方を見ることが大切です。
愛知ならではの「亜炭鉱」も忘れずに
愛知県では、もう1つ確認しておきたいものがあります。小牧市や春日井市など尾張北部を中心に残る、亜炭(石炭の一種)の採掘跡です。地下に空洞が残っていると、将来の地盤沈下や不同沈下(建物の一部だけが沈む現象)につながる可能性があります。
これは水害のハザードマップには載っていないため、市役所の窓口などで個別に確認する必要があります。詳しくは以前の記事にまとめています。
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国のポータルサイトで調べる手順
「重ねるハザードマップ」で全体をつかむ
一番手軽なのは、国土交通省と国土地理院が運営する「ハザードマップポータルサイト」です。無料で誰でも使えて、2つの機能があります。
1つ目が「重ねるハザードマップ」。住所を入力するか地図をタッチすると、その地点の洪水・内水、土砂災害、高潮、津波のリスク情報を1枚の地図に重ねて表示してくれます。標高も一緒に出るので、候補地が周囲より低いかどうかの当たりも付けられます。
もう1つ便利なのが「土地の特徴・成り立ち」の表示です。「昔は田んぼや池だった」という土地の履歴は見た目では分からないため、ぜひ使ってみてください。ただし国のサイト自身が「個別の場所のリスクを示すものではない」と注記しているとおり、あくまで全体像をつかむ入口です。
まずは「重ねるハザードマップ」に住所を入れて、水害・土砂・標高・地形の全体像をつかみましょう。
「わがまちハザードマップ」で市町村の正式版を見る
2つ目が「わがまちハザードマップ」です。市町村が法令に基づいて作成・公開している正式なハザードマップへのリンク集で、地方→都道府県→市町村の順に選ぶと、洪水・内水・ため池・高潮・津波・土砂災害・地震防災危険度マップなどにたどり着けます。
市町村のマップには、避難所の場所、浸水が続く時間、過去の浸水実績など、国のサイトにはない情報が載っています。名古屋市は2026年4月に中小河川14河川を反映した新しい洪水ハザードマップを公表しています(名古屋市発表)。全体像は国のサイト、詳しい確認は市町村の正式版。この2段構えが基本です。
市町村版には避難所や浸水実績など、判断に効く情報が載っています。必ず両方を見ましょう。
色の意味 その浸水深は家の何階まで来るのか
浸水深の色分けを「家の高さ」に置き換える
洪水ハザードマップの色は「浸水深」、つまり地面からどのくらいの高さまで水が来るかを表しています。区切りの数字には、それぞれ意味があります。
| 浸水深 | 家のどこまで | 体の高さの目安 |
|---|---|---|
| 0.5m未満 | 床下 | 大人の膝 |
| 0.5〜3m | 1階が水につかる | 腰〜1階天井 |
| 3〜5m | 2階の床〜軒下 | 2階も危険 |
| 5m以上 | 2階が水没 | 屋根まで |
国土地理院の説明では、0.5mは一般的な1階の床の高さ、3mは2階の床下、5mは2階が水没する水準に相当します。国土交通省の資料でも、浸水深が膝程度(0.5m前後)あると大人でも歩くのが難しくなるとされています。
つまり、「0.5〜3m」の色が付いている土地は、1階が水につかる可能性があるという意味です。この区分は幅が広いので、市町村版でより細かい区分(0.5〜1m、1〜2mなど)を見ると、対策の考え方も変わってきます。
色は「家の何階まで水が来るか」に置き換えて読む。0.5mを超えると1階が水につかります。
「想定最大規模」と「計画規模」の違い
ハザードマップには「想定最大規模」「計画規模」という2つの言葉が出てきます(名前がややこしいですね。。。)。
想定最大規模とは、1年間にその規模を超える雨が降る確率が概ね1000分の1という、その地域で想定し得る最大の雨を前提にした想定です。「1000年に1度」と言われるのはこのためです。一方の計画規模は、川の整備の目標となる雨の規模で、川の重要度に応じて概ね10分の1〜200分の1で設定されます。
現在、市町村が配っている洪水ハザードマップの多くは「想定最大規模」が基本なので、色の付く範囲はかなり広くなります。ただし「1000年に1度」は「1000年に1回しか起きない」という意味ではなく、来年起きる可能性もある、という確率の話です(国のポータルサイトのFAQでも同じ趣旨の説明があります)。
今のハザードマップは「想定最大規模(概ね1000年に1度級)」が基本。範囲が広い理由と、確率の意味を知っておきましょう。
「家屋倒壊等氾濫想定区域」とは
浸水深とは別に示される「家屋倒壊等氾濫想定区域」という区域があります。国土交通省の定義では、家屋の倒壊・流失をもたらすような、堤防決壊に伴う激しい氾濫流や河岸侵食が発生することが想定される区域で、氾濫流によるものと河岸侵食によるものの2種類があります。
分かりやすく言えば、「水につかる」だけでなく「家そのものが流されたり、足元の地面が削られたりするおそれがある場所」です。行政の説明でも、この区域では2階に上がる垂直避難ではなく、避難所などへの立ち退き避難の必要性を判断することが求められています。建物側の対策だけでは対応しきれない性質の区域なので、浸水深の色とは分けて確認したい項目です。愛知県内では、庄内川などで想定最大規模の図と一緒に公表されています。
家屋倒壊等氾濫想定区域は「水につかる」より一段重いリスク。浸水深の色とは別に必ず確認を。
2020年8月から不動産取引での説明が義務に
なお、2020年8月28日から、不動産会社は売買契約前の重要事項説明で、水害ハザードマップ上の物件の位置を説明することが義務付けられています(国土交通省。2026年9月時点でも継続)。黙っていても契約前には教えてもらえるわけです。
ただし、それは“契約直前”のこと。気に入った土地を目の前にしてから初めてリスクを聞くと、冷静に判断しにくくなるものです。国のガイドラインには「浸水想定区域に該当しないことをもって水害リスクがないと誤認させないよう配慮すること」という注意まで書かれています。色が付いていない=安全ではないことを、国自身が念押ししているのです。
契約前の説明は義務。でも土地探しの段階で自分で見ておくのが、後悔しない家づくりの第一歩です。
名古屋・愛知の地形とハザードマップ
海抜ゼロメートル地帯と高潮
愛知県西部、木曽三川(木曽川・長良川・揖斐川)の下流に広がる海部地域は、ほぼ全域が「海抜ゼロメートル地帯」です。地面が海の水面より低く、場所によっては3mも低いため、約120か所のポンプで常に水を川へ排出しています(愛知県)。
このエリアで特に重要なのが「高潮」のハザードマップです。1959年の伊勢湾台風では、高潮によって短時間で大規模な浸水が起き、愛知県内で3,200人以上の死者・行方不明者が出ました(愛知県)。名古屋市も、想定し得る最大規模の高潮を前提にした高潮ハザードマップを区ごとに公表しています。海沿い・川の下流域で土地を探すなら、洪水と高潮のマップは必ずセットで見ることが大切です。
愛知西部の低地は海抜ゼロメートル地帯。洪水と高潮はセットで確認しましょう。
庄内川・新川と東海豪雨の記憶
名古屋の水害を語るうえで欠かせないのが、2000年9月の東海豪雨です。名古屋で1時間に97mm、総雨量567mmという記録的な雨が降り、新川の堤防が決壊、庄内川でも越水が起きました。愛知県内で床上浸水が約2万2千世帯、床下浸水が約4万世帯にのぼり、氾濫面積は19平方キロに達したとされています(愛知県・国土交通省庄内川河川事務所)。
このときの浸水範囲は、小牧市の内水ハザードマップなどに「浸水実績」として今も載っています。過去に実際に水が来た場所は、想定ではなく事実。候補地がその範囲に入っていないかは、ぜひ見ておいてください。
そして今年9月8日、名古屋では1時間に104.5mmという、東海豪雨を上回る観測史上最大の雨が降りました(日本気象協会の報道より)。26年前の記録が、あっさり更新されてしまったわけです。
東海豪雨の浸水実績は「想定」ではなく「事実」。今年その記録が更新されたことも頭に入れておきましょう。
小牧など内陸部は「内水」が主役
一方で、小牧市や春日井市などの内陸部では、大きな川の洪水よりも内水氾濫のリスクが主役になることが少なくありません。9月8日の大雨でも、栄周辺など名古屋の中心部で道路や地下街の一部が冠水したと報じられています。こうした市街地の冠水は、川があふれる洪水とは別の、内水の典型と考えられます。
千葉豪雨でも、民間気象会社の分析(2026年8月)によれば、浸水被害の報告のうち半数以上が浸水想定区域や低地の外だったとされています。洪水ハザードマップで色が付いていない場所でも、内水では浸水し得るということが、今年の災害ではっきり見えたと言えるでしょう。小牧市は内水ハザードマップを西部版・東部版に分けて公開していますので、内陸で土地を探す方は、洪水よりもまずこの内水版を開いてみてください。
内陸部は内水氾濫が主役。「洪水で色が無い=安全」ではありません。
色が付いた土地は買ってはいけないのか?
ここまで読んで「じゃあ、色が付いた土地は避けるべき?」と思われたかもしれません。結論から言うと、一律に「買ってはいけない」とは言えません。愛知県の平野部では想定最大規模のマップで何らかの色が付く土地はとても多く、すべてを避けていては土地が見つからないというのが実情だからです。
大切なのは、次の4つを分けて考えることだと思います。1つ目は浸水深。0.5m未満(床下)と3m超(2階まで)では意味がまったく違います。2つ目は敷地の高さ。同じ色でも、道路より高い土地と低い土地では水の来方が違います。3つ目は避難のしやすさ。家屋倒壊等氾濫想定区域に入っていないか、避難所までの道が先に浸水しないかです。
そして4つ目が建物側の対策の余地です。敷地を盛る、基礎を高くする、床の高さを上げるといった設計で、浸水深が浅い場所なら「水害に強い家」として十分に備えられる場合があります。対策工事の選択肢と費用は、高基礎の記事で詳しく解説しています。また、色が付いた低地は地盤が軟らかいことも多く、地盤調査の結果と合わせて判断する必要がありますが、地盤調査の費用と結果の見方は、地盤調査の記事で解説しています。
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逆に、家屋倒壊等氾濫想定区域に入っている、浸水深が3mを超える、避難路が先に水没する、といった条件が重なる土地は、建物側の工夫だけでは限界があります。価格が安くても慎重に考えた方がよいでしょう。
色の有無ではなく「浸水深・敷地の高さ・避難のしやすさ・対策の余地」の4つで判断する。それが後悔しない土地選びにつながります。
土地選びで現地を見に行くときの確認リスト
最後に、ハザードマップを見たうえで現地で確認しておきたいことをまとめます。
1. 周囲より低くないか。道路と敷地の高低差、隣地との段差を見ます。雨の日に見に行けると、水の流れる向きまで分かります。
2. 近くに川・用水路・ため池がないか。地図では見落としがちな小さな用水路や、農業用のため池も確認します。
3. 電柱や壁の表示を探す。自治体によっては電柱などに「想定浸水深」の表示板があります(国の「まるごとまちごとハザードマップ」という取組)。壁に過去の浸水の跡が残っていることもあります。
4. 過去の浸水履歴を聞く。不動産会社には「この土地や周辺で、過去に床上・床下浸水はありましたか」と具体的に聞きます。近所の方に東海豪雨のときの様子を尋ねてみるのも有効です。
5. 土地の成り立ちを調べる。重ねるハザードマップの「土地の特徴・成り立ち」や古い地図・航空写真で、昔は田・池・川だった場所でないかを見ます。
6. 避難所までの道を歩く。避難所の場所と、そこまでの道が低い所を通らないかを実際に歩いて確かめます。
少し面倒に感じるかもしれませんが、数千万円の買い物の前の数時間です。ここで確認したことは、将来売却するときにも「安心材料」として説明できる資料になります。
地図で見て、現地で確かめる。この2つをセットにすることが、ハザードマップを土地選びに生かすコツです。
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まとめ
ハザードマップは災害の種類ごとに別々の地図があり、特に洪水と内水は必ず両方を見る必要があります。調べる手順は、国の「重ねるハザードマップ」で全体像をつかみ、「わがまちハザードマップ」から市町村の正式版で詳細を確認する、という2段構えが基本です。
色は「家の何階まで水が来るか」に置き換えて読みます。0.5mを超えると1階が水につかり、3mを超えると2階にも及びます。あわせて「想定最大規模」という前提の意味と、浸水深とは別の「家屋倒壊等氾濫想定区域」を確認しておくことが大切です。
名古屋・愛知は、海抜ゼロメートル地帯と高潮、庄内川・新川と東海豪雨、内陸部の内水氾濫と、地域ごとにリスクの種類が異なります。色が付いた土地を一律に避ける必要はありませんが、浸水深・敷地の高さ・避難のしやすさ・対策の余地を分けて考え、納得したうえで選ぶこと。それが水害に強い家、そして10年後・20年後も安心して暮らせる住まいにつながると思います。後悔しない土地選びの参考にしていただければ幸いです。
なお、本記事のハザードマップの内容・制度は2026年9月時点の情報です。区域の指定やマップは随時更新されますので、検討の際は必ず最新の情報をご確認ください。







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