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耐震等級3とは? 2つの熊本地震で“分かったこと”と“まだ分からないこと”

2026年7月28日、熊本県で最大震度7を観測する大きな地震(令和8年熊本地震)が起きました。倒れた家の映像を目にして、「自分たちがこれから建てる家は大丈夫だろうか」と不安になった方も多いのではないでしょうか。

 

家づくりを検討し始めると、「耐震等級3」という言葉が必ずと言っていいほど出てきます。ただ、「等級3が最高ランクらしい」ことは分かっても、等級1や2と何が違うのか、木造の家でどうやって取るのか、費用はどのくらい変わるのかまで説明できる方は少ないと思います。熊本では2016年(平成28年)にも震度7の地震が2回起きていて、そのとき耐震等級3の家がどうだったかは国の委員会が詳しく調べています。一方で、2026年(令和8年)の地震については、まだ調査が始まったばかりです。

 

この記事では、耐震等級3とは何かを制度の仕組みから整理し、2つの熊本地震で分かっていること・まだ分かっていないこと、木造で等級3を取る方法と費用、間取りへの影響、そして「本当に必要か」への工務店としての考えをまとめます。ぜひ最後までご覧ください。

 

◆こんな方のために書いています
⇒これから木造の注文住宅を建てる予定で、耐震等級の話が今ひとつピンとこない方
⇒熊本地震のニュースを見て、耐震等級3にすべきか迷い始めた方

 

◆この記事を読むとわかること
⇒耐震等級1・2・3の違いと、「1.5倍」という数字の本当の意味
⇒木造で耐震等級3を取る3つの計算方法と、費用・間取りへの影響

 

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耐震等級3とは? まずは「耐震等級」の仕組みから

耐震強度イメージ

耐震等級は品確法の「住宅性能表示制度」で決まる

耐震等級とは、住宅の地震に対する強さを3段階で表したものです。根拠は、2000年に施行された品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)にもとづく「住宅性能表示制度」で、国が定めた共通のものさしで住宅の性能を評価し、等級として表示する仕組みです。

 

評価をするのは住宅会社ではなく、国に登録された第三者機関(登録住宅性能評価機関)です。設計図書を見る「設計住宅性能評価」と、工事中に現場を確認する「建設住宅性能評価」の2段階があり、正式に「耐震等級3の家」と言えるのは、この評価を受けて評価書を受け取った家です。住宅会社が自社の計算で「等級3レベルです」と言うことと、第三者機関に等級3と認められることは、制度上は別のものになります。

 

耐震等級は品確法の住宅性能表示制度で定められた国のものさしで、第三者機関の評価を受けて初めて正式な等級になります。

 

等級1・2・3の違い 1.0倍・1.25倍・1.5倍の意味

耐震等級1は、建築基準法で求められる最低限の耐震性能と同じ水準です。「極めてまれに(数百年に一度程度)発生する地震」の力に対して倒壊・崩壊しないこと、「まれに(数十年に一度程度)発生する地震」の力に対して損傷しないこと、と定められています。数百年に一度の地震は、東京を想定した場合で震度6強から7程度に相当するとされています。

 

等級2はこの等級1の1.25倍、等級3は1.5倍の地震力に対して倒壊・崩壊しない水準です。

 

等級 想定する地震力 地震保険の割引
耐震等級1 建築基準法と同じ 10%
耐震等級2 等級1の1.25倍 30%
耐震等級3 等級1の1.5倍 50%

 

※地震保険の割引率は財務省の公表資料による(2026年9月時点)

 

え、1.5倍ということは震度7の1.5倍の揺れまで平気ということ?と思った方もいるかもしれませんが、実は少し違います。「1.5倍」は揺れの大きさではなく、設計のときに建物にかかると見込む地震の力を1.5倍にして、それに耐えるように壁や接合部を設計する、という意味です。

 

ここで押さえておきたいのは、等級1の目標が「倒壊・崩壊しない」であって、「住み続けられる」ではないことです。大きく壊れても中の人の命が守られれば等級1の目標は達成されたことになり、地震のあと同じ家に住み続けられることまでは約束していません。等級3は1.5倍の余裕を持たせることで、大きな地震のあとも損傷を小さく抑え、住み続けられる可能性を高める考え方と言えるでしょう。

 

等級の数字は「揺れの強さ」ではなく「設計で見込む地震の力の倍率」。等級1は命を守る水準、等級3はその後も住み続けることを見据えた水準です。

 

「耐震等級3相当」は正式な等級3ではない

住宅会社の説明でよく出てくる「耐震等級3相当」は、第三者機関の評価は受けていないが自社の計算では等級3と同じ水準にしている、という意味で使われることがほとんどです。「相当」が付くと、地震保険の割引や各種認定の場面では正式な等級3として扱われないことがあり、混同しないよう注意が必要です。相当と正式な等級3の違いについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

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熊本地震で耐震等級3の家はどうだったのか

耐震性図解

2016年(平成28年)熊本地震 益城町の調査で分かったこと

2016年4月の熊本地震では、4月14日にM6.5、4月16日にM7.3の地震が続けて起き、益城町では震度7を2回観測しました。震度7の揺れが28時間ほどの間に2回来るというのは、それまでの想定になかった事態です。

 

この地震のあと、国土交通省は「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」を設置し、益城町中心部の建物を1棟ずつ調べる悉皆調査(しっかいちょうさ。対象すべてを調べる調査)を行いました。木造住宅を建てられた時期ごとに分けた結果は次のとおりです。

 

建築時期 調査棟数 倒壊・崩壊 倒壊率
〜1981年5月(旧耐震) 759棟 214棟 28.2%
1981年6月〜2000年5月 877棟 76棟 8.7%
2000年6月以降 319棟 7棟 2.2%
うち耐震等級3 16棟 0棟 0%

 

※国土交通省「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」報告書(2016年9月30日公表)より

 

注目したいのは一番下の行です。住宅性能表示制度で耐震等級3を取っていた木造住宅は16棟あり、倒壊はゼロ。16棟のうち14棟は無被害、2棟が軽微な被害でした。震度7を2回受けても、大半が「そのまま住める」状態だったということです。16棟という数は多くはないので「等級3なら絶対に壊れない」とは言えませんが、震度7を2回受けた現場のデータとして、非常に重い材料だと感じています。

 

一方、2000年6月以降の現行基準(いわゆる2000年基準)の木造住宅も倒壊率2.2%と低いのですが、ゼロではありませんでした。倒壊した建物については、接合部の仕様が不十分だったケースなどが報告されています。「新しい家だから大丈夫」ではなく、「基準どおりにきちんと作られていたか」が結果を分けた面があります。

 

2016年の益城町では、耐震等級3の木造住宅16棟は倒壊ゼロ・14棟が無被害。建築時期が新しいほど倒壊率は下がりますが、2000年基準でもゼロではありませんでした。

 

2026年(令和8年)熊本地震 結論はまだ出ていない

そして2026年7月28日、熊本県でふたたびM7.1・最大震度7(宇城市・氷川町)の地震が起きました。消防庁のまとめ(2026年8月31日時点の速報)では、住宅の被害は全壊約1,800棟、半壊約3,500棟、一部破損約3万1,000棟に上っています。数字は今後も変わる可能性があります。

 

発災後の報道や現地に入った専門家の速報では、倒壊した住宅は1981年より前の旧耐震基準で建てられたとみられる古い木造が中心で、新耐震基準や2000年基準以降とみられる住宅では、調査した範囲で倒壊などの目立った被害は確認されなかったとされています。ただし、これはあくまで限られた範囲の速報です。

 

国土交通省は2026年8月18日に「令和8年熊本地震における建築物構造被害の原因分析を行う委員会」の設置を発表し、8月31日に第1回の会合が開かれました。建築研究所からも木造の被害調査報告(速報)が出ていますが、建築年代や耐震等級と被害の関係についての本格的な分析はこれからです。

 

今回の地震で耐震等級3の家がどうだったのかは、正直なところ、まだ分かりません。ネット上には早くもいろいろな意見が出ていますが、2026年の地震については「結論は出ていない」と受け止めておくのが誠実な見方だと思います。委員会の報告が出た時点で、この記事にも追記するつもりです。

 

2026年の熊本地震は、古い木造の倒壊が中心という速報はあるものの、国の委員会による分析は始まったばかり。等級3の効果を語れる段階ではありません。

 

木造で耐震等級3を取る方法 3つの計算の違い

 

壁量計算・性能表示計算・許容応力度計算

木造住宅の耐震性を確認する計算には、大きく3つの方法があります。専門的な話になりますので、興味のない方はこの節は飛ばしてください。

 

1つ目は壁量計算です。建築基準法で決められた簡易な方法で、床面積などから必要な壁の量を求め、それ以上の耐力壁(地震の力に抵抗する壁)があるかを確認します。壁の配置バランスや接合部の金物も確認しますが、最低限のチェックで、これだけでは耐震等級は出せません。

 

2つ目は性能表示計算です。住宅性能表示制度で耐震等級を出すための計算で、壁量計算の項目に加えて、床や屋根の強さ(床倍率)、接合部、基礎、横架材(梁など)のチェックが加わります。多くの木造住宅の耐震等級3は、この方法で取られています。

 

3つ目は許容応力度計算です。柱や梁など一本一本の部材にかかる力を計算して安全を確かめる、いわゆる本格的な構造計算です。もっとも手間がかかりますが、間取りが複雑な家や大きな吹き抜けがある家でも、根拠を持って安全性を確かめられます。

 

ここで誤解が多いのですが、性能表示計算でも許容応力度計算でも、第三者機関の評価を受ければ、どちらも制度上は正式な耐震等級3です。ただ、検討する項目の細かさには差があるため、「どの方法で計算していますか」と住宅会社に聞いてみることをおすすめします。

 

木造の耐震等級3は「性能表示計算」か「許容応力度計算」で確認します。壁量計算だけでは等級は出せません。どの計算をしているかは、遠慮なく聞いてよい質問です。

 

2025年4月の建築基準法改正で変わったこと

もう1つ、知っておきたい最近の動きがあります。2025年4月1日に施行された改正建築基準法で、木造住宅の必要壁量の基準が見直されました。断熱材が厚くなり、太陽光パネルを載せる家が増えたことで、昔の基準が想定していたよりも家が重くなり、その分だけ地震の力も大きくなるためです。これまでの「軽い屋根」「重い屋根」の2区分ではなく、建物の仕様の実態に応じて必要な壁量や柱の太さを算定する方法に変わり、あわせて2階建ての木造住宅も構造に関する審査を省略できなくなりました(いわゆる4号特例の縮小)。経過措置は2026年3月で終わっていますので、これから設計に入る家は新しい基準で計算されます(制度は今後も変わる可能性があります。2026年9月時点の情報です)。

 

2025年4月の法改正で、木造の必要壁量は「家の重さの実態」に合わせて計算する方式に変わりました。家が重くなれば、必要な壁も増えます。

 

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耐震等級3の費用の目安

「耐震等級3 費用」で検索される方が多いのですが、実は「いくら上がる」と一律に言える数字はありません。費用が次の3つに分かれていて、それぞれが会社や家の大きさ・形で大きく変わるからです。

 

1つ目は計算と申請の費用です。性能表示計算や許容応力度計算そのものの費用と、第三者機関に評価を申請する手数料で、会社によって標準に含まれている場合もオプション扱いの場合もあります。2つ目は建物そのものにかかる費用です。耐力壁を増やす、接合部の金物を強くする、基礎の鉄筋を増やす、梁を太くする、といった形で材料費と手間が増えます。もともと等級3が標準の会社なら差額はほとんど出ませんが、等級1が標準の会社で後から等級3にすると、差が大きく見えることがあります。

 

3つ目は、逆に戻ってくるお金です。正式な耐震等級3を取ると地震保険が50%割引になりますし、各種の優遇制度の条件になっていることもあります(詳しくは、前の章で紹介した「耐震等級3相当とは?」の記事で)。初期費用だけを見ると等級3は「高い」ように見えますが、保険料や万一の修繕費まで含めた10年後・20年後で比べると、見え方が変わる可能性があります。

 

耐震等級3の費用は「計算・申請」「建物の仕様」「戻ってくるお金」の3つに分けて、住宅会社に内訳で出してもらうことが大切です。

 

耐震等級3のデメリット 間取りへの影響

耐震等級3にすると、家の中に「動かせない壁」が増えます。これが間取りへの一番の影響です。

 

具体的には、南側に大きな窓を連続して並べにくくなる、吹き抜けや大空間を作るときに床の強さ(床倍率)の検討が必要になる、1階と2階で壁の位置をそろえる必要が出てくる、といった制約が生じます。「リビングの角を全部窓にしたい」「1階を柱のない広いワンルームにしたい」といった希望は、そのままでは通らないことがあります。

 

ただ、これは「等級3にすると窓の小さい家になる」という意味ではありません。設計の早い段階から構造を考えていれば、耐力壁を置く場所を工夫することで、大きな窓や吹き抜けと等級3を両立させることは十分可能です。問題が起きるのは、間取りを固めたあとで「やっぱり等級3にしたい」となったときです(この段階で図面を前に頭を抱えることも、、、)。

 

また、耐力壁は構造上の役割を持つため後から自由に撤去できず、将来のリフォームで壁を抜きにくくなるという側面もあります。20年後に間取りを変えたいと思ったとき、どの壁が動かせないかを知っておくことが大切です。

 

耐震等級3のデメリットは「動かせない壁」が増えること。ただし設計の早い段階で構造を考えれば、開放感との両立は十分可能です。

 

愛知で家を建てるなら 南海トラフ地震の想定震度

熊本の話を「遠い地域の出来事」と感じる方もいるかもしれませんが、愛知県はむしろ、次の大地震が現実的に想定されている地域です。

 

愛知県は2026年6月2日、12年ぶりに見直した南海トラフ地震の被害予測調査の結果を公表しました。県内では最大震度7が想定され、揺れによる建物の全壊は約5万棟、建物倒壊などによる死者は約2,400人と推計されています。名古屋市の公表資料でも、過去の地震を考慮した最大クラスで市内の最大震度は6強、あらゆる可能性を考慮した最大クラスでは中村区・中川区・港区・南区・緑区で震度7が想定されています(いずれも2026年9月時点)。

 

震度6強から7というのは、まさに耐震等級1が「倒壊・崩壊しない」ことを目標にしている揺れの強さです。言い換えると、等級1の家は南海トラフ地震で「命は守れるが、その後住み続けられるかは分からない」水準ということになります。名古屋・小牧エリアで家を建てる方は、愛知県防災学習システムの防災マップや各市のハザードマップで、建築予定地の想定震度と液状化の危険度をぜひ一度確認してみてください。

 

愛知県は最大震度7が想定される地域。等級1が守るのは「命」まで。その後の暮らしまで守るなら、等級3を検討する価値があります。

 

耐震等級3は必要か 工務店としての正直な答え

最後に、「耐震等級3は本当に必要ですか?」という質問への答えです。

 

法律上は、等級1でも家は建ちます。ですから「必要か」と聞かれれば、義務ではありません。ただ、これから愛知県で木造の家を建てるなら、耐震等級3を取っておくことを強くおすすめします。理由は、2016年の益城町のデータが示すとおり、震度7を2回受けても住み続けられた家が実際にあったこと、そして愛知県で想定されている揺れがまさにその震度6強から7だからです。

 

一方で、「等級3を取れば安心」とも思っていません。等級はあくまで設計上の性能です。地盤が弱ければ建物がいくら強くても不同沈下は防げませんし、図面どおりに金物が付いていなければ計算は意味を持ちません。シロアリや雨漏りで構造材が傷めば、10年後・20年後の耐震性は新築時のままではなくなります。

 

だからこそ、等級の数字だけで住宅会社を選ぶのではなく、「どの計算方法で確認しているか」「現場で誰がどう確認しているか」「引き渡し後の点検はどうなっているか」までセットで聞いてみてください。数字の裏側をきちんと説明できる会社かどうかが、等級そのものと同じくらい大切だと感じています。なお、建物の形や間取り、制震・免震といった耐震等級以外の考え方については、こちらの記事で詳しく解説しています。

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耐震等級3は義務ではありませんが、愛知で木造を建てるなら強くおすすめします。ただし「等級3=安心」ではなく、地盤・施工・維持管理まで含めて考えることが後悔しない家づくりにつながります。

 

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まとめ

耐震等級3とは、品確法の住宅性能表示制度で定められた耐震性能の最高等級で、建築基準法(等級1)の1.5倍の地震力に対して倒壊・崩壊しない水準の家です。等級1が「命を守る」水準だとすれば、等級3は「地震のあとも住み続ける」ことを見据えた水準と言えます。

 

2016年の熊本地震では、益城町で耐震等級3の木造住宅16棟が倒壊ゼロ・14棟無被害という結果が国の調査で示されました。2026年の熊本地震については、古い木造の倒壊が中心という速報はあるものの、国の委員会による分析はこれからで、結論はまだ出ていません。

 

南海トラフ地震で震度6強から7が想定される愛知県で家を建てるなら、耐震等級3は「あれば安心」ではなく「前提」に近い選択だと感じています。ただし、等級はあくまで設計上の数字。どの計算で確認し、現場でどう施工され、10年後・20年後にどう維持していくかまで含めて考えることが、後悔しない家づくりの第一歩です。

 

「等級3だから上位」では差が付かないランキングの読み方については、こちらの記事もご覧ください。

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なお、本記事の制度・法規・被害状況は2026年9月時点の情報です。特に2026年熊本地震の被害数や分析結果は今後更新されますので、最新の情報をご確認ください。

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