「セルロースファイバーにして後悔しないかな」「デメリットが気になって決めきれない」と、断熱材選びで立ち止まっている方も多いのではないでしょうか。
セルロースファイバーは「自然素材だから安心」という声がある一方で、「湿気を吸って性能が落ちるのでは」という声もあり、何かと賛否の分かれる断熱材です。インターネット上には様々な情報があふれていて、「実際のところ、断熱材として使ってもいいの?」と迷ってしまうのも無理はありません。
結論からお伝えすると、セルロースファイバーはデメリットを理解し、対策をしたうえで選べば優れた断熱材だと考えています。アメリカでは広く普及している断熱材といわれ、環境基準に厳しいヨーロッパでも評価されている素材です。
ただし、費用の高さや沈下(壁の中で断熱材が沈んで隙間ができる現象)など、事前に知らないと後悔につながりやすいポイントがあるのも事実です。
この記事では、セルロースファイバーで後悔しがちなデメリット5つとその対策、あらためて見直したいメリット、グラスウールとの違いを工務店の目線で分かりやすく解説します。断熱材選びで失敗しないために、ぜひ最後までご覧ください。
※この記事は2026年9月に内容を加筆・更新しました。
セルロースファイバーとは?原材料と仕組み
セルロースファイバーは、新聞紙などの古紙を細かくほぐして作られる木質繊維系の断熱材です。原料のほとんどがリサイクル素材のため、環境にやさしいエコな断熱材といえます。
製造の過程では、ホウ酸・ホウ砂といったホウ素系薬剤が添加されます。この薬剤が、後ほど紹介する防虫効果や燃え広がりにくさのもとになっています。
もう一つの大きな特徴が施工方法です。グラスウールのように大工さんが手で詰めるのではなく、専門業者が専用の機械を使って、壁や天井の中に繊維を吹き込んで充填します。この「吹込み工法」が、セルロースファイバーのメリットとデメリットの両方につながっていきます。

セルロースファイバーで後悔しがちなデメリット5つ
まずは、検索している方が一番気になっているであろう「後悔につながりやすいデメリット」から正直にお話しします。
①費用が高い(グラスウールの約2倍が目安)
セルロースファイバーのデメリットとして最初に挙がるのが費用です。材料費に加えて、専門業者による吹込み施工の費用がかかるため、どうしても割高になります。
目安として、大工さんが造作工事の中で行うグラスウール充填が坪あたり約1万円だとすると、セルロースファイバーの吹込み工事は坪あたり約2万円と、約2倍のコストがかかるといわれています。
※あくまで一般的な目安です(2026年9月時点)。断熱材の厚み・密度・地域・時期によって変動しますので、必ず見積もりで確認してください。
家全体で考えると数十万円単位の差になることもあり、この金額だけを見て諦めてしまう方も少なくありません。この差額をどう考えるかは、後ほどの対策の章で整理します。
②沈下(自沈)して断熱欠損になる可能性がある
デメリットの中で最も知っておいてほしいのが、この沈下(自沈)です。セルロースファイバーは細かな繊維を吹き込む断熱材のため、施工時の密度が不足していると、年数の経過とともに壁の中で繊維が沈み、壁の上のほうに隙間ができてしまう可能性が指摘されています。
隙間ができた部分は断熱材のない状態、いわゆる断熱欠損(断熱材が欠けて熱が出入りしやすくなる部分)です。外からは見えない壁の中で起こるため気づきにくく、せっかく費用をかけたのに10年後・20年後に性能が落ちていた、という後悔につながりかねません。
対策は、適正な密度でしっかり充填することです。日本セルローズファイバー工業会の資料では、壁への施工密度は1立方メートルあたり40〜60kg程度とされています(2026年9月時点)。沈下は“材料そのものの欠陥”というより“施工密度の問題”なので、施工者選びがそのまま沈下対策になります。
③施工できる業者が限られ、品質が施工に左右される
セルロースファイバーの施工には専用の機械と専門の技術が必要なため、どこの会社でも扱えるわけではありません。地域によっては対応できる業者さんが限られ、工期や費用の調整が必要になる場合があります。

また、②の沈下の話と同じで、仕上がりの性能は施工品質に大きく左右されます。「セルロースファイバーだから高性能」ではなく、「きちんと施工されたセルロースファイバーだから高性能」という点は、ぜひ覚えておいてください。
④重量があり、施工への配慮が必要
セルロースファイバーは断熱材の中では重い部類です。壁への吹込み密度が1立方メートルあたり40〜60kg程度なのに対し、一般的なグラスウールの「10K」「16K」という品種は1立方メートルあたり10kg・16kgですから、同じ体積で比べると数倍の重さになる計算です。
そのぶん、壁の石こうボードの留め方など、重さを見込んだ施工上の配慮が必要になるといわれています。慣れた業者さんなら織り込み済みの話ですが、こうした点からも施工実績のある会社を選ぶことが大切です。
⑤DIYや後付けがしにくい
袋入りのグラスウールやボード状の断熱材と違い、セルロースファイバーは専用機械による吹込み工事が前提です。そのため、DIYで施工したり、住みながら手軽に断熱材を足したりすることが難しい断熱材です。
採用するなら、新築や大規模リフォームのタイミングで計画的に検討する必要があります。「後からやっぱりセルロースファイバーに変えたい」は難易度が高い、と考えておくと良いでしょう。
後悔しないための対策3つ
ここまでのデメリットを踏まえて、後悔しないための対策を3つに整理します。
対策①施工実績と吹込み密度を確認する(沈下対策)
最重要の沈下対策は、施工者選びに尽きます。検討している会社に「セルロースファイバーの施工実績はどれくらいありますか」「壁の吹込み密度はどれくらいで施工していますか」と聞いてみてください。
実績のある会社なら、密度の管理方法や施工後のチェック体制まで具体的に答えてくれるはずです。答えが曖昧な会社に任せるのは、慎重になったほうが良いかもしれません。
対策②費用は防音などの付加価値とセットで比較する
坪あたりの単価だけを見ると、セルロースファイバーは確かに高い断熱材です。しかし後述するとおり、防音効果や調湿性、防虫効果といった断熱以外の付加価値も持っています。
初期費用の差額だけで判断せず、「断熱+防音+防虫」のセットとして価格に見合うかという視点で比較すると判断しやすくなります。完成した瞬間の価格ではなく、10年後・20年後の暮らしまで含めて考えることが、後悔しない断熱材選びの第一歩です。
対策③他の断熱材とも比較して、自分たちの優先順位で選ぶ
断熱材はセルロースファイバーだけではありません。グラスウールなどの繊維系、スタイロフォームに代表される発泡プラスチック系など、それぞれに得意・不得意があり、万人共通の正解はありません。
「価格・断熱性能・防音・自然素材のどれを優先したいのか」を家族で整理したうえで選ぶと、後悔しにくくなります。床下でよく使われる発泡プラスチック系の断熱材については、こちらの記事で詳しく解説しています。
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セルロースファイバーのメリット5つ
デメリットの話が続きましたが、セルロースファイバーには費用をかける価値のあるメリットもしっかりあります。
①断熱性能が高く、隙間なく充填できる
断熱材の性能は「熱伝導率」という数値で表されます。数値が小さいほど熱を伝えにくい、つまり断熱性能が高いという意味です。セルロースファイバーの熱伝導率は0.040W/(m・K)程度と公表されています(日本セルローズファイバー工業会・メーカー公表値、2026年9月時点)。
一方のグラスウールは品種によって幅があり、おおよそ0.036〜0.050W/(m・K)程度です(メーカー公表値、2026年9月時点)。つまり、高性能グラスウールと比べると数値そのものは僅差で、品種によってはグラスウールのほうが小さい場合もあります。
・・・と数値を並べられても、実感がわきませんよね。あいかわらず単位の読み方は意味不明です(笑)
例えるなら、沸騰したお湯に入れた「銀のスプーンと割りばし」の違いです。スプーンはすぐに熱くて持てなくなりますが、割りばしはジワジワとしか熱くなりません。これが熱伝導率の差で、断熱材はこの「熱の伝わりにくさ」が金属とは桁違いに優れた材料、というイメージです。
では、数値が僅差なら安いグラスウールで良いかというと、そう単純でもありません。大事なのは施工です。手作業で断熱材を詰めると、どうしても隙間(断熱欠損)が生じやすいのに対し、セルロースファイバーは機械で隅々まで吹き込むため、断熱欠損が起こりにくいとされています。配線まわりなどの複雑な部分にも入り込んでくれるのは、吹込み工法ならではの強みです。

②防音・吸音効果が期待できる
セルロースファイバーの繊維の中には小さな空気の粒がたくさん含まれており、音を吸収してくれます。布団をかぶって声を出すと外に聞こえにくくなるのと同じ理屈です。
家の中の生活音を外に漏らしたくない方や、車・電車の音が気になる立地の方には、断熱と防音を1つの材料で兼ねられるセルロースファイバーは相性の良い断熱材といえるでしょう。
③調湿効果が期待できる(ただし、あくまで補助的)
原料が木質繊維のため湿気を吸ったり吐いたりする吸放湿性があり、壁の中の結露を抑える効果が期待できるといわれています。「紙だから湿気で性能が落ちるのでは」と心配される方もいますが、吸った湿気を放出できるのがこの素材の特徴です。名古屋近郊のように夏の蒸し暑さが厳しい地域では、うれしい性質といえます。
とはいえ、断熱材に調湿性能まで求めるのは少し欲張りかなと。。。個人的には思いますが、、、湿度対策の基本はあくまで換気や冷暖房の計画です。調湿は“おまけ”くらいに考えておくのがちょうど良い距離感だと感じています。
④ホウ酸による防虫・防カビ効果
添加されているホウ素系薬剤には、防虫・防カビの効果が期待できます。日本はシロアリの多い国で、被害額は年間1,000億円を超えるともいわれていますから、断熱材そのものが虫に強いのは心強いポイントです。
ただし、セルロースファイバーを使えばシロアリ対策が不要になるわけではありません。土台まわりの防蟻処理(シロアリを防ぐ薬剤処理)など、通常のシロアリ対策は別途必要です。
⑤燃え広がりにくい(難燃性)
「紙なのに火は大丈夫なの?」と思いますよね。ここでもホウ素系薬剤が難燃剤として働きます。日本セルローズファイバー工業会の資料では、約1,000度の炎でも表面が炭化するだけで燃え広がらないとされています(2026年9月時点)。
万が一の火災のときに燃え広がりを遅らせる効果が期待できるのは、家族の安全を考えるうえで見逃せないメリットです。
セルロースファイバーとグラスウールの違い(比較表)
ここまでの内容を、最も広く使われている断熱材のグラスウールと比較して整理します。
| 項目 | セルロースファイバー | グラスウール |
|---|---|---|
| 原料 | 新聞紙など古紙 | リサイクルガラス |
| 熱伝導率 | 0.040程度 | 0.036〜0.050程度 |
| 防音 | 期待できる | 製品による |
| 調湿 | 補助的にあり | ほぼ期待できない |
| 防虫 | ホウ酸で期待 | 特になし |
| 価格目安 | 坪約2万円 | 坪約1万円 |
| 施工 | 専門業者が吹込み | 大工さんが充填 |
※熱伝導率の単位はW/(m・K)・公表値の目安です(2026年9月時点)。価格は一般的な目安で、品種・厚み・地域により変動します。
どちらが優れているというより、「価格のグラスウール、付加価値のセルロースファイバー」という関係です。高性能グラスウールを丁寧に施工すれば十分な断熱性能を確保できますし、防音や自然素材へのこだわりまで求めるならセルロースファイバーに軍配が上がります。
セルロースファイバーに関するよくある質問
最後に、セルロースファイバーを検討中の方からよくいただく質問にお答えします。
Q.セルロースファイバーは“やめたほうがいい”と言われるのはなぜですか?
A.主な理由は「費用が高い」「沈下が心配」「施工できる業者が限られる」の3つです。いずれも事実ですが、この記事で解説したとおり、施工実績のある業者を選び、費用を付加価値とセットで考えることで対策できます。デメリットを理解したうえで選ぶ分には、やめたほうがいい断熱材とは考えていません。
Q.沈下するとどうなりますか?何年くらいで沈みますか?
A.沈下すると壁の上部に隙間ができ、その部分の断熱性能が落ちてしまいます(断熱欠損)。「何年で沈むか」は施工密度や建物の条件によって異なるため、一概には言えません。適正な密度(壁で1立方メートルあたり40〜60kg程度)で施工されていれば沈下しにくいとされていますので、施工前に密度と実績を確認しておくことが一番の予防策です。
Q.ゴキブリやシロアリに効果があるって本当ですか?
A.添加されているホウ酸による防虫効果が期待できます。ホウ酸は昔から害虫対策に使われてきた成分で、断熱材自体が虫に強いのはセルロースファイバーの特長です。ただし、建物全体のシロアリ対策(土台まわりの防蟻処理など)の代わりになるものではありません。「断熱材で虫対策もできて心強い」くらいの位置づけで考えておきましょう。
Q.グラスウールとどっちがいいですか?
A.優先順位次第で、どちらが正解とは言い切れません。コスト重視ならグラスウール、防音・調湿・自然素材といった付加価値まで求めるならセルロースファイバーが有力候補になります。そして、どちらを選んでも最終的な性能を左右するのは施工品質です。上の比較表を参考に、自分たちの優先順位に合うほうを選んでください。
まとめ
セルロースファイバーで後悔しがちなデメリットは、
・費用が高い(グラスウールの約2倍が目安)
・沈下(自沈)による断熱欠損の可能性
・施工できる業者が限られる
・重量があり施工に配慮が必要
・DIYや後付けがしにくい
の5つでした。
裏を返せば、信頼できる施工者を選び、費用に見合う価値を感じられるなら、断熱・防音・防虫を兼ね備えた優れた断熱材だといえます。デメリットを知らないまま選んでしまうことこそが、後悔の一番の原因です。
断熱材は、あとから簡単に取り替えられない“家の一生モノ”の部分です。どんな断熱材が、どんな施工で壁の中に入るのかを知っておくだけでも、家づくりの後悔はぐっと減らせます。
また、壁の断熱を考え始めたら、あわせて見直してほしいのが窓です。窓は住宅の中でも熱の出入りが大きい場所なので、断熱材と窓をセットで考えることが、冬暖かく夏涼しい住まいへの近道になります。
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